【台詞集】小説『明鏡の惑い』第十章「星めぐり」より
皆さんいい顔ですよ。人間は空を見上げると喉が突っ張ります。口を閉じておこうとしても顎の筋肉が疲れますから、どうしてもおのずと口が開いてきます。そうしていつしか馬鹿のようにぽかんと口を開けています。それが今の皆さんです
でもこの六里ヶ原の星空は、馬鹿のようにぽかんと口を開けてでも見上げるべきものです。
もし皆さんのうちの誰かが将来詩人や小説家になったら、名もなき花が咲いていたなどと間違っても書いてはいけませんよ。名前のない花はないんです。せめて名も知らぬ花と書いてく