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【小説】 振り向かないポニーテールの記憶

前に進むと決めたから

この街で生きていても、
こんなにも星が綺麗に見えるとは。

そう気付いたのは12月の23時。

かつての彼女には知る由もない風景だった。


いつもの道路を歩いていた時は、

蒼き一等星の下にいくつか星が見えることはなかった。

彼女が見ていたのは、刻印されたつつみ星。

強さと権力、地位を得る為なら

どんな手段を使ってでも、世界に変革を起こしていく。


それは正しいことのようで、実はどこか違うようで。





もう1人の主人公。

その「本名」でさえも、彼女は忘れていた。





向き合うべき現実と向き合いながらも

忘れつつあった、長い前髪のポニーテール。

彼も、悩みの多い人物だった。

絶対的権力に逆らいたくても従わざるを得ない

そんな人物だったと思うし

藁にもすがる思いを人一倍している

そんな人を推していた思い出が彼女にはあった。




そんな貴方は彼女の元に現れることはなく、

誰の横にも立つことはなく

多くの叶わない夢を追う少女達の妄想の餌食となり


人気投票で首位を狙うも

「俺、最強だから」と笑うイケメンと
同じ苗字のネタ枠に、毎回敗北を喰らう、

準グランプリの常連者。



そんな誰かを模したヘアメイクで挑んだ

画面越しの卒業ぷれぜんは、

「未来」の彼女を映し出していたのだろうか。





夢なんて、見なければ良かった。


そんな彼女は、現実に絶望して、

 夢と現実の幅間に立つ誰かの夢を

共に伴走したいと

叶わない夢を見てしまったのだろうか。



一生振り向かないポニーテールを追う彼女に

声をかけてくれた親友に

生きる意味を思い出させてくれた

沢山の仲間たちへ





 今日も振り向かないポニーテールは、

新しく見つけた夢を胸に、

夢とは反対側に向かう電車の中で

ひたすら心の内を描き続けている。

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