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織田信長になったので裏切り者をクラスメートから探す物語

『本能寺の変な俺』

松本は、教室の窓から外を見た。
今日は歴史の授業だった。
内容は本能寺の変のところだった。
松本は歴史が好きではなかった。
歴史は、古い話や人物の名前や年号を覚えるだけのつまらないものだと思っていた。
だから、授業中は、先生の話を聞くふりをしながら、ぼんやりと窓の外を眺めていた。

窓の外は、どこかのクラスが体育でグランドを走り回っていた。
何の競技をやっているのだろうか?
よくわからない。あれ?と思った。

運動着じゃない。

何着ているんだ?目を凝らしてじっくり見た。
甲冑だ。
兜も被っている。
競技じゃなくて合戦をしている。
甲冑を着た生徒たちが、槍や刀で戦っていた。
血しぶきが飛び散り、金属がぶつかる音が耳に響いた。
松本は驚いて、隣の席の吉尾に声をかけようとした。
すると、吉尾も甲冑を着ていた。
何で?
吉尾は、松本に気づいて、笑った。

「どうした、松本。今日は本能寺の変の日だぞ。お前も早く甲冑を着て、織田信長になってみろよ。」

松本は呆然とした。何が起こっているのだろうか?
松本は、教壇の方を見た。
先生も甲冑を着ていた。
先生は、松本に向かって、怒った。
「松本、何をぼんやりしているんだ。今日は本能寺の変の日だぞ。お前は織田信長になって、本能寺に向かうんだ。さあ、早く甲冑を着て、出発しろ。」
松本は困惑した。
何が起こっているのだろうか?
松本は、自分の机の上を見た。
そこには、甲冑と兜と刀が置いてあった。
これ本物の刀?
松本は刀を持った。
重さからして本物っぽい。
刀を抜いてみた。
外の光と相まって刀は光っている。
確信した。絶対本物じゃん。
松本は恐怖した。何が起こっているのだろうか?

どういうことだ?俺が織田信長?
え?
ちょっと待って。じゃあヤバイじゃん。
本能寺の変って、確か織田信長死ぬんじゃなかったっけ?
じゃあ俺死ぬじゃん。
え?確か、仲間の誰かに裏切られて…。

松本はクラスを見渡した。
みんな笑顔でこっちを見ている。
「おい、早く織田信長になれよ」
「松本君、時間ないよ」
「本能寺の変は待ってくれないよ」
みんなは俺に楽し気に声をかけている。
しかし、その目は怖かった。
この中の誰かに殺される。
松本は見渡したが全員怪しい。
誰なんだ?

松本は思った。
裏切り者はもしかしたら俺に恨みを持っている人物?
松本は自分の過去を振り返った。

山本の宝物のサッカー選手の直筆サイン入りユニフォームを、洗ってサインを消して、松本というサインを書いたな。
もしかしたら山本はまだ恨んでいて…。
山本が裏切り者では?
松本は山本に謝罪した。
山本は笑った。「いつの話をしてんだよ。俺が忘れてたよ、そんなこと」
あれ?山本ではないのか?

松本はまた過去を思い出した。
佐々木の趣味のギターを、全部、弦を切って、毛糸にしたことあったな。ふわふわだったな。
あれ、佐々木かなり怒ったからなー。
松本は佐々木に謝罪した。
しかし、佐々木ではなかった。

山崎は、名言が好きで名言集の本を持ってて、その名言の中でも山崎が特に気にいっている名言のページに折り目を付けていた。
俺はその全ての折り目をアイロンを使って折り目をなくして、折り目のないページを全て折り目を付けたなー。
松本は山崎に謝罪した。
山崎は気付いてなかった。
山崎ではなかった。

もう松本はわからなくなった。
誰なんだ?

松本は諦めた。
どうでもいいと思った。
死ぬなら死ぬでいいと。
それだったら、今、好きな人に気持ちを伝えようと。
そう、それでいいじゃないか。
いざ、告白。

松本はその子を理科室に呼び出した。
「明智さん、ずっと好きでした。もしよかったら…あれ?…確か…明智光秀だっけ?」
明智さんはたくさんのアルコールランプに火を付けた。
その炎は大きくなっていった。
松本は諦めたように一歩も動かなかった。
好きな人に殺されるなら仕方ない。
その時は松本は思った。

織田信長はどうだったのだろうか?
明智光秀に裏切られて死んだ時、どのような心情だったのだろうか?
明智光秀が好きだったら、俺と同じように仕方ないと思って死んでいっただろうなと思った。

織田信長はどうやって死んだんだろう?
「授業ちゃんと聞いてればよかったなー」


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僕は脚本・演出で、浦上力士君が演じます。
40~50分くらいのオムニバス一人芝居です。
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