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R5年 第4回杉並区議会定例会一般質問③

最後の項目の、HPVワクチンの男性接種への助成についてです。
 
日本では年間約1万人が子宮頸がんを患い、約2,900人もの女性が子宮頸がんで命を落としています。国立がん研究センターの発表では、日本の子宮頸がん年齢調整罹患率・死亡率の推移を見ると、1990年代には諸外国より低かったが、現在は諸外国に比べ高くなっています。この背景の一つにあるのは、HPVワクチン接種の低さと言われています。男女ともにHPVワクチンの接種率が約80%と高いオーストラリアやイギリスでは、子宮頸がん、年齢調整罹患率・死亡率が大幅に減少しています。WHOは、患者が10万人当たり4人未満となることを撲滅の定義としており、オーストラリアでは、早ければ2028年には子宮頸がんが撲滅されるとの試算も出ています。15日のBBCの記事には、イギリスの国民保健サービスが、イングランドは2040年までに子宮頸がんを撲滅するとする目標を発表したと掲載されていました。
①現在の区民の男女の1回目の接種者数と、従来の定期接種の実施率について伺います。
 
子宮頸がんは、HPVの感染を防ぐことで予防できるがんです。すなわち、ワクチンで予防ができるがんです。そして、HPVワクチンは女性だけが接種すればいいものではありません。男性も一緒に接種することで女性のHPV感染がさらに減少すること、また、男性自身の病気、尖圭コンジローマ、肛門がんなどが減少すること、さらに集団免疫の獲得も期待されています。副反応の問題で、2013年から積極的な勧奨を控えていたHPVワクチンの接種ですが、国内外で有効性や安全性のデータが報告され、安全性について特段の懸念が認められないことから、厚生労働省は昨年から女性に対しての接種の積極的な勧奨を再開しました。また、本年4月からは高い感染予防効果があるとされる9価のワクチンも追加されました。一方、男性に対しては、国内では9歳以降の4価のHPVワクチンが承認されているものの、自費の接種となり、価格が1回当たり2万円弱、全3回で合計約5万円から6万円と高額であること、その必要性が十分に認識されていないこともあり、男性の接種が進んでいない現状があります。
東京都では、来年度からHPVワクチンの男性接種も都がワクチン費用の2分の1の金額を助成することが決まりました。男性への助成制度は、都が直接対象者に助成をするのではなく、区を通しての助成となります。すなわち、区が制度の活用をしない場合、杉並区の男性は費用の助成が受けられないことになります。隣の中野区では、本年8月から男性のがん予防や、男女ともに接種することによる集団免疫の効果が期待できるとして、都に先駆けて全額補助が始まっており、9月までに70件の接種があったようです。
②区は、これまでどのように男性へのHPVワクチン接種について取り組み、説明をしてきたのか。また、男性のHPVワクチン接種の必要性をどのように認識するのか、助成制度を活用するのか伺います。
 
子宮頸がんは若い女性に多く発症するのが特徴で、25歳から34歳では、女性が一番多くかかると言われている乳がんより患者数が多く、その年代で最多の患者数です。がんが進行すると命に関わるのはもちろんですが、子宮を失い、妊娠ができなくなってしまうため、若い女性にとっては深刻な病気であり、少子化問題にも関係してくる大きな問題と認識しています。ワクチンに関して賛否の声があるのは存じておりますが、世界各国で接種が始まってから10年以上がたち、ワクチンが子宮頸がんの発症を予防する効果についてのデータが出始め、前がん病変でのデータが日本でも出始めています。先日、婦人科、内科を専門とする医師に話を聞きましたが、HPVワクチンについて男女の接種が必要との認識は、医学界では常識とのことでした。男性についてはまだまだ情報の提供が不足しているのが現状で、効果や必要性について知らず、女性のためのワクチンと認識している人が多くいます。行政として、まずワクチンが正しく認識され、接種するかしないか考えられる環境を整えることが必要だと考えます。特に男性については、今まで取組がされてきていないこともあり、そもそもHPVワクチンを男性が打てること、男性自身の病気にも効果があることを知らない人が多くいます。区として積極的に正しい情報を発信していただくよう要望いたします。
 以上、各分野にて他区との比較をお伝えしてまいりましたが、他区がやっているからやるべきだというわけではなく、他区でできていることは杉並区でも実施が可能なのではないか、実施すべき理由があるのではないかとの観点から伺ってまいりました。他区を参考にしながら杉並区での必要性を考え、導入検討していただきたいことをお伝えし、一般質問を終わります。


◎杉並保健所長(播磨あかね) 
①まず、区民の男女の接種者数などについてですが、男性への接種は定期接種として行っていないため、接種者数は把握しておりません。女性の1回目の接種者数は、従来の定期接種対象者である小学校6年生から高校1年生相当の方については、令和4年度は717人で実施率は37%、令和5年度は9月までで1,136人で実施率は58%となっています。キャッチアップ接種の接種者数については、令和4年度は1,347人、令和5年度は9月までで1,076人となっています。

②次に、男性へのHPVワクチン接種についての取組についてですが、男性への接種は定期接種ではなく任意接種として行われているため、区としての取組や説明はしていないのが現状です。国は、HPVワクチンを男性に対しても定期予防接種として位置づけることの是非について今後検討することとしており、その前段階として、科学的知見の収集を国立感染症研究所に依頼しています。区では、この国による科学的知見の収集状況や議論の状況を把握するとともに、今後、都が予定している助成事業に関する情報や他区の情報を注視し、慎重に検討してまいります。私からは以上です。

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