ダイキン工業、実は超優良企業!

ダイキン工業といえば、「エアコン」だろう。三菱重工や三菱電機、日立製作所や東芝などと比較して、「エアコンだけの地味な会社」と思われるかもしれない。ところが、業績は超絶好調だ。売上高は4兆3000億円、営業利益は3900億円。なんと、主力事業がエアコンなのに、エアコン以外にもFAなど色々と手がけている三菱電機にもう少しで届きそうな勢いだ(三菱電機は売上高5兆2500億円だが、ダイキンは年10%の勢いで成長しているので、このペースが続けば追いつくかもしれない)。

ダイキン工業は空調(要するにエアコン)で世界一だが、実は化学製品や防衛関連製品も製造している(売上高に占める比率は低い)。

私があえて言うまでもないと思うが、地球温暖化が問題になっている。そのため、欧州でも熱波が問題となり、ダイキンの空調機が売れる原動力になっていそうだ。さらに言えば、これから「グローバルサウス」と言われる、インドやアフリカなど暑い気候の地域も高度経済成長が始まるため、成長余地はまだまだある。

そして、ダイキンの隠れた秘密兵器は、「インバーター」だ。インバーターによって、空調機のモーターの回転数を精密に調整し、省エネ性能を高めている。

ダイキンは、2008年に中国企業「格力」と提携した。

空調専業メーカーであるダイキンは、かねてからインバーターエアコンの技術開発に取り組み、設備機器の普及を通じて環境問題の解決に積極的に取り組んできた。その象徴とも言うべきなのが、08年の中国・大手空調機器メーカー・珠海格力電器有限公司(格力)との提携だ。
当時は、インバーターのようなエアコンの省エネ性能を高める最重要技術が、中国に流出するという懸念から、ダイキン社内には格力への技術開示に激しい反発があったという。だが、格力と提携することによって、大量生産を得意とする格力が持っているノウハウを利用しコストダウンが可能となるため、価格競争力のあるインバーターエアコンを生産できるメリットも大きい。
技術を囲い込んでも、いずれ中国企業が独自開発するかもしれず、ほかの日本企業と提携する可能性もある。しかも、世界150カ国以上で空調を販売しているダイキンだからこそ、市場が大きい中国でインバーターエアコンを普及させたいという思いもあった。
さまざまな思惑が交錯する中で、踏み切った格力との提携。結果として、世界的にもインパクトの大きい中国市場において、メインプレーヤーである格力と提携したことで、ダイキンはインバーターエアコンの普及率を向上させることに成功した。中国における住宅用エアコンのうち、インバーター機が占める比率は、09年7%だったものが、18年には76%にも拡大したのである。

東洋経済オンライン

ダイキンにとっては、「賭け」だったと思う。中国企業と提携すれば、虎の子のインバーター技術が漏洩して、半導体で韓国企業に敗北したのと同じようなことになっていたかもしれない。だが、それは杞憂に終わった。むしろ、提携によって中国で低コストでインバーター内蔵のエアコンを普及させることに成功した。

アフリカでは、東大発のベンチャー企業と提携し、サブスクリプション型ビジネスにも進出している。アフリカでは、貧しい人が多く、エアコンを買いたくても買えない人が多い。そのため、少しずつ支払うことで空調機を利用できるサブスクリプション型ビジネスに乗り出したのだ。

エアコンを運転する時間に応じて使用料を支払うサブスクリプションであればエアコン本体の代金はかからず、初期費用は購入に比べて10分の1ほどで済む。しかも省エネ性の高いダイキンのインバーターエアコンなら電気代を約半分にでき、故障した際の修理にも対応できるため、利用者のメリットは大きい。
20年6月にはWASSHAと新会社「Baridi Baridi株式会社(バリディバリディ)」を設立。まずはタンザニアでエアコンのサブスクリプション事業を展開し、将来的にはアフリカだけでなく、ほかの空調未成熟市場への展開を目指すという。

東洋経済オンライン

インバーターという基幹技術の強さだけではなく、他社との提携やサブスクリプション型ビジネスなど先進的なビジネスモデルも光るダイキン工業。日本企業の競争力が問題視されているが、ダイキン工業には無縁の話かもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?