メンバーシップ型雇用の崩壊は、リストラ(解雇・人員削減)OKの社会になる?
本人の希望を聞かずに配置転換や勤務地を異動させる辞令を一方的に出すことは、徐々に否定的に扱われるような世情になりつつある。これは、「ジョブ型雇用」と「女性の社会進出」が関係している。
ジョブ型雇用においては、社員一人一人の専門性を磨き上げることが重要だ。しかし、配置転換が何度も繰り返されると、社員は専門性を磨くことができない。
また、女性の総合職が増えたことで、子育てをしているのに、突然遠隔地への勤務が決まると、小学校や塾、中学受験などの計画が狂ってしまう事情がある。昭和や平成の頃は、みんな我慢していたが、それが許容されにくくなっているのだ。
ただし、労働者側は、これを手放しで喜んでいいことにはならない。メンバーシップ型雇用における総合職は、「何でも屋」として雇われている。そのため、不況や競合に敗北したなどの理由で、一つの事業領域や職種が丸ごと無くなった場合でも、企業としては配置転換で雇用を維持する義務があった。これは、判例も積み重ねられており、否定しがたい。
だが、ジョブ型雇用においては、「何でも屋」ではなく「専門家」としての採用であるため、その職務が無くなってしまった場合は解雇が許容されやすくなるのではないか、と言われているのだ。以下の記事を読んでみてほしい。
建前では、「社員に選択肢を提供する」と書いてあるが、実態はただの「追い出し」「人員削減」であろう。その証拠に、「45歳以上かつ勤続20年以上」という条件がついている。20年も働けば、その社員が「使える」人材か「使えない」人材か、人事部は十分に判断することができる。「使えない」人材に、おそらくは積極的にこの早期退職プランに応募するよう、面談をするのであろう。
もちろん、労働法が変わったわけではないし、今までの判例の積み重ねもあるため、あまりに露骨な追い出し、例えば「残っても君に居場所はない」などの脅しのような発言があれば、民事訴訟で勝てるだろう。そのため、企業としても円満に退職してもらうために、あの手この手の心理戦をしかけてくるだろう。
私個人の考えでは、人員削減は仕方がないと思う。企業は決して慈善事業ではない。企業は利益を出す、それによって経済成長するのが資本主義社会だ。だが、「人を人とも扱わず、バッサリ切り捨てる」指名解雇などはさすがに反対だ。1日8時間まったく仕事をしないような駄目社員は切っていいが、努力して改善の見込みがある社員には、ある程度は猶予を与えるべきだろう。また、取引先への転籍など、多少は企業側も社員の次の就職先を探すサポートをするべきだと考える。これは、何もサービス精神ではなく、一度に大量の失業者が発生すると、需要が激減し、マクロ経済が落ち込む(恐慌になる)リスクがあるからだ。
いずれにせよ、政府として、令和の時代にふさわしい雇用のあり方を検討してもらいたい。企業側に寄りすぎても、労働者側に寄りすぎてもよくない。中庸を目指すため、企業と労組両方の意見を聞いてほしい。
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