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「BAZZ市長」石丸伸二 電撃都知事選出馬を考察


新しくなかった出馬理由


 
安芸高田市の石丸伸二市長が10日の記者会見で、任期満了に伴う7月の市長選に出馬しない意向を表明しました。7月の東京都知事選への立候補を問われると「前向きに検討する」と語りつつ、「国政選挙に出馬する可能性は低いが、この先の選挙全てが選択肢だ」と説明。16日には次期、都知事選に出馬すると報じられたのです。


 
XやYouTubeでバズった市長として、彼は次のステップに進むという訳です。不出馬の理由は「他にやらなければならないことがある。別の道を優先させる」とした。小中学校の給食費無償化など「市長としてやらないといけないことはかなりできた」と強調しました。

しかし一方で安芸高田市を「踏み台にされた」と感じる人もいるでしょう。

 
功罪半ばというまま任期を終えて、新たなステージにチャンレンジする石丸氏。 石丸氏の一期で退任報道を見て、多くの記者は東国原氏のことを思い出したと思います。東国原氏も、宮崎県知事を一期だけ勤めて都知事選に立候補したかたでした。

石丸氏は都知事選出馬の理由を「一極集中から多極化しか発展の道はない」といい、つまり地方分権のためだと語りました。東国原氏も当時、「都知事選に出ることを決めた。東京から地方分権を進めたい」と語っていました。二人の出馬理由は驚くほど似ているのです。

首長を一期だけやってステップアップを目指すという思考も石丸氏と東国原氏に共通する言葉です。石丸氏は前述のように都知事出馬の前に「国政選挙に出馬する可能性は低いが、この先の選挙全てが選択肢だ」と語りましたが、面白いことに東国原氏もほぼ同じことを言っています。東国原氏は「国政や大都市圏の知事を視野に入れているが、あらゆる可能性を排除せず検討している」と述べているのです。国政に関するスタンスこそ違えど、次のステップに進むと言う意味では、ほぼ同じ思考だと思われます。

東国原という政治家の軌跡


 
「どげんとせんといかん」をかけ言葉に宮崎県知事に就任、東国原ブームを巻き起こし芸人時代の知名度を超える人気を博しました。てっきり宮崎のために尽くすのかと思いきや、知事を一期で退任しネクストステージを目指したのです。

メディアに持て囃された東国原氏はテングになります。


彼の増長を示した事件が09年に起きたのです。県知事一期での退任を表明していた東国原氏に対して、自民党が次期衆院選への立候補に打診したのです。森喜朗元首相(71)や古賀誠選対委員長(68)ら党幹部と都内で会談した際に、東国原氏は「次期党総裁候補」待遇を出馬条件として提示したという報道が出たのです。東国原氏自身も「目標は一番権限がある首相になることだ」と公言したのです。

 
首長というのは大統領にも似た権力を持つ立場です。国会にはヒエラルキーがあり一代議士で出来ることは少ない。ですから国会議員から地方の首長に転じる例が多いのも、その絶大な権力が魅力だからです。一方でメディアから持て囃された首長がどうなるか? 増長し勘違いをする。その見事な一例を示したのが東国原氏だったといえるでしょう。
 
その後の東国原氏の政治キャリアは「迷走」と言っても差し支えないでしょう。

まず、都知事選に出馬しますが落選します。次に日本維新の会から出馬し衆院議員となりますが、「党が変質した」とか言って離党、議員辞職しました。いまはコメンテーターとなっており、東国原氏が何をしたかったのかは不明、という政治キャリアを送ったのです。


石丸氏の危険性


石丸氏はその発信力を活かしてメディアに出まくる一方で、いろんな禍根も残していきました。例えば公になっている禍根があります。

 

■トラブル1 ポスター未払い事件

2020年8月の安芸高田市長選で初当選した石丸伸二市長から請け負った選挙ポスターやビラの製作の報酬が一部しか支払われていないとして、広島市中区の印刷業者が石丸市長に残りの約72万935円を求めた訴訟がったことは前回の動画でもお伝えしました。この裁判では広島高裁でも市長側の控訴を棄却する、という結果になっています。。
 
 西井裁判長は、石丸市長と業者側のメールのやりとりを基に、業者側が「(選挙運動費用の)公費負担の上限額を請負代金額とする意思を示していたとは認めがたい」と判断。「双方が請負代金が公費負担額の上限に収まると認識していたのは明らかだ」などとする市長側の主張が全面的に退けられた。
 
 判決などによると、石丸市長と業者は20年7月下旬に請負契約を結び、業者は翌8月3日までに納品などを終えた。石丸市長は公費負担額の上限に当たる34万8154円を支払っていた。見積額と新聞折り込み費用の計107万7549円が相当と結論付けたといいます。
 
石丸市長は判決を受け、「業者の勘違いに対する司法の評価が興味深いことになった」とのコメントを出しました。

このコメントが彼の資質をよく現わしていると思います。

彼の独善的な部分は、よい政策を行う時には突破力にもなりますが、反面間違った価値観を持ったときには暴走するという危険性を孕んだものなのです。

支払い命令を嘲笑するというコメントは、ひろゆき氏(石丸氏を支持)にも似た行動ですよね。2ch訴訟で似たような行動をとり、自分は違法だと思っていないという理由を強弁していたのがひろゆき氏でした。

謝罪や修正が出来ないという性格が、独善的、独裁的な振る舞いに発展しかねないと懸念させるのです。
 
 
■トラブル2 SNS虚偽投稿疑惑

安芸高田市議に「どう喝」されたとする石丸伸二市長の発言や交流サイト(SNS)での発信を巡る訴訟で広島地裁判決は、市議の名誉を傷つけたなどとして市に33万円の支払いを命じました。また石丸氏敗訴です
 
原告の山根温子市議は判決後、広島市内で記者会見し「どう喝発言が虚偽、虚構とはっきりした」と語りました。。
 
問題の経緯は、石丸市長が就任直後の2020年10月1日、ツイッター(現X)に投稿。別市議の居眠り問題に絡む市長と議会側の前日のやりとりとして「敵に回すなら政策に反対するぞ、と説得?恫喝(どうかつ)?あり」などと発信した。同20日の全員協議会では「どう喝」に当たる発言をしたのは山根市議だと名指ししたのです。このことが裁判で争われました。

判決後、石丸市長は「『議会を敵に回すと政策が通らなくなりますよ』の言葉通りの動きになっている。その事実を公に示すことができた。よって、当初の目的は完遂したと評価している」とのコメントを出しました。否は認めず、は相変わらずという感じのコメントです。


敵味方という政治手法


 
もちろん有権者が石丸氏を支持することは自由です。しかしメディアは常に批判的な目を持って政治家と対峙すべきだと個人的には思います。しかし、えてして大手メディアはネットでバズったと好意的に報じる。

ましてや地元メディアである、広島ホームテレビは5月25日公開の「つぶやき市長と議会のオキテ」という映画まで作りました。僕は映画を見てませんが、結果だけ見れば、7月の都知事選に出る石丸さんの大宣伝の片棒を担ぐという利用のされかたになってしまったのです。
 
ただ、石丸市長はトリックスターとしては、価値がある人物だとも言えます。

中国新聞記者をボコボコにするという動画がバズりましたが、今までは政治家とメディアはある部分でナアナアな関係でやってきました。記者クラブしかり、番記者しかりです。

しかし、低成長時代になり、そんなナアナアな関係ではメディアは生き残ることが出来ない。政治家とガチでやることを怖れてはいけないし、権力のチェック機関としての役割を果たさないといけない。そして、記者会見でも負けないスキルを、記者も身につける必要があるということなのだと思います。

議会もそうです。地方議会も、じつは立派だという議員も多いのですが、議論がナアナアになっていた部分はあったでしょう。とことん議論をし、そしていろんな意見を調整するという本来の役割を議会も再認識することは必要でしょう。

ただ、一方で石丸氏の独善的なやり方は承服できないところも多くあります。批判されても真正面から答えない。例えば記者から多くの改革は滞ったと聞かれて、「どこが滞ったか言ってください」みたいにムキに反論する。副市長問題や無印問題など実際に滞った問題があるにも関わらず、「それ以外に何がありますか」みたいな畳みかけ方をする。

「勝つか負けるか」、というスタイルの議論から生み出されるものは少ないというのが、記者としてこれまでキャリアを積み重ねてきたなかでの実感です。元長野県知事田中康夫氏や元大阪市長の橋下徹氏もそのようなスタイルでしたが、おそらくそのスタイルは疲弊していくことのほうが多いのだと思います。現に田中氏も橋下氏もいま現役の政治家ではないことが何かを示唆しているように思います。

民主主義政治は仲間をつくることが大事であるとするならば、トップダウンだけの政治手法ではいずれ限界がくる。

 石丸氏は決して新しい政治家ではなく、多くの前例がある政治家です。ただ、SNS時代に有名になったという一点だけが新しい。


多くの政治家が辿った末路と同じ道を歩むのか、一皮むけた姿を見せるのか。石丸氏のこれからに注目したいと思います。
 
 (了)

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