日記0450あるいはアナタ無線機
電波になってしまった知人は地下鉄では話すことができないし、たまに、プツリと黙ったまま、いるか、いないかさえ判然としなくなる。
「幽霊みたいだ」
「電波だよ、幽霊じゃない。ちゃんといるし、どこへだって飛んでいける。オレ以上のフッ軽はいないよ」
にへりと笑う。けれども、それ以降、情報は更新されない。私は彼をスクリーンショットし、持ち運ぶ。職場にも、トイレにも、浴槽へも。
「何か話せよ、なあ」
髪の毛を乾かしながら、彼を思う。電波の入るところにいかなければ。
「あ」
高い所から街を見下ろした。街は燃えていた。
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