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自分を責める悪魔にさようなら


1日の間に何度も鼻の頭を触る

とんとんと
つるつると

優しく叩いて
すべすべと撫でる

人前で鼻を触れない時は、手の甲をとんとんと
すべすべと
叩いて、撫でる

それはもう
いつかは、鼻先がぺったんこになってしまうかもと心配するほどに

これは、自分の中の悪魔が自分に噛み付くのを止める魔法だ



悪魔が心に住み着いたのはきっと子供の頃

悪魔は言う
どうして普通になれないのかと
どうして、お前はそんなにもダメなヤツなのかと

どうして、皆と同じように生きられないのかと

マイペースで
自分世界の中でぼわぼわ生きていて
側から見たら自分の世界に浸っている社交性のカケラもない風変わりだった幼少期に
私はそんな言葉をかけられ育ち
悪魔が今では身代わりに
私を見張ってくれている

物心ついた頃から、ひとりでいるのが当たり前で
私には自分を引率し導き従うべき存在がいなかった
だから、誰かと生きる時間より、自分と生きる時間の方が早く完成してしまい

そのおかげで、人と共に生きるのはとても苦手

それがいけない事だと思い込んでから
間違った社会性を詰め込んで来てしまった


それから、悪魔には随分と色々なレパートリーで悪口を長年言われて来たものだ

それでもこの悪魔の叱咤
今なら分かるのは
おそらく、私を責めてきた当人と、更には責められ続けた私自身にも向けられた
皮肉の皮を被った曲がった愛なのだと

それでも四六時中、自分の分身に成り果てた悪魔が私を常に見張っているのは
とうとう生きた心地がしなくなって来た

そろそろ、いいんじゃないか?
悪魔に別れを告げ、幸せを信じてみても

そんな風に思い
過去に受けたタッピング療法を思い出し
こんな事を始めたのだ





悪魔はいつでもやってきて
耳元で私を責めて来て
いつもの様に
さも当たり前の様に自分にダメ出しをし始める

ー悪魔が来たぞ!と司令を聞いたら

鼻の頭に指を当て
とんとんとしばらく叩くのだ

とんとんと鼻の頭を優しく叩いていると悪魔はだんだん静かになってくる

スゥーッと消えて行った悪魔の姿を見届けたら
今度は鼻を指で撫で

つるつると撫でながら

言い訳をしたり
それでも、頑張って来たんだから
誰が認めなくてもさ
よくやっているよとか

大丈夫、大丈夫

と、これから新しく悪魔の代わりになる物を注ぎ込んで行く

新しい母を自分の中に持つ様に
精一杯、自分に愛を注ぎ込み
教わらなかった自分の愛し方を教えて行くのだ


ーまだまだだね
他の人がとうに出来ている事を遅ればせながら今頃になって学んでいてさ
なんて悪魔は言うけど

ーでもさ
そうやって自分の足で下手くそでも失敗ばかりでも0から作って来たんだよ

大人だって、誰もが同じ速さで育つ訳ではないさ
可能性に満ちているよ

今度は
少しあっけらかんとした天使が呟く


自分の中から真新しい愛のある言葉が湧き上がってくる度に
こんな、特別な言葉を隠し持っていたのか...
と驚きながら


愛の木になりたいな
愛の実を与えられる人間になりたい

小さな私の分身の心に愛の種を植えられるように

とんとん、すべすべ
何度でも

言い訳、いいこいいこ
何度でも



akaiki×shiroimi

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