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一回しか

ーインドに何回行ったの?


ー1回だよ…


ー1回しか行ってないの?
その割には沢木耕太郎マブダチ、みたいなテンションで語ったじゃない?

ーい、い、いや、そんなつもりは。嘘はついてない。何十年と、何十回何百回反芻して思い出して語るから、書くから、通算積算総熱量はインド十回分に相当するかも。周ちゃんは?

ー4ヶ月。2016年に。帰りの日にちも決めて、チケットも取って、奥さんにお願いして行った。それ以上いたらもう帰ってこれないと思ったからさ。(遠い目)

インド一回分はヨーロッパ五回分位の衝撃があるんかな?だから、みんなドヤ顔でインド行きを語るのかな。1回しか行ってないくせに。そういうイキリ散らす奴、散々見てきたよ。

ー(結構最近やんか。生活に旅を諦めないってことや。それに、周ちゃんも1回やんか!)ヴヴ。私はインドを語ったんじゃなくて、インド行きの経緯を語っただけで。シドロ&モドロ。インドを語ったつもりはない。

はて、やや撃ち込まれながら汗、人は何回行けば、それを語る資格を得るのだろうと思った。

南インド1回、シェムリアップ1回、バンコク2回、コピピ1回

香港、台湾、マカオ各1回

パリとロンドンは各3回

イタリアは南北縦断1か月

ウイーン2回、プラハ1回、アテネ1回、ブリュッセル1回。

スペインは2週間。

大学受験は指定校推薦で裏口の1回笑

転職は2回

結婚は1回 

離婚は1回

出産は2回

アジカンのワンマンは1回

RADWIMPSは2回

キスは何回?セックスは何回?

何回恋に落ちれば

仕方ないんだと何回言葉を飲みこめば

それを語るに足りるのだろう

確かに1回で全てを見たかのように語るのは眉唾、白髪三千丈だろう。

でもたった1回の出会いが大きく景色を変えることもあるし、一生忘れられない強烈な印象を残すこともある。

人生は短く全てを経験値で語ることはできない。だから私たちは本を読み、歴史を学び、音楽を聞き、自分以外の人の人生を疑似体験。想像力の翼を広げて世界を知るのだと思う。

マスターと呼ばれるには、確かにそれなりの反復練習が必要だろう。ルークスカイウォーカー、ブルースリー、ジャッキー・チェンにも、良き師が途を拓いて見せてくれた。フォースをつかえ。

一昔前のバックパッカーのバイブルは地球の歩き方で(ぺっラペらの紙の地図を頼りにスマホなし!)、バンコクカオサンで一発キメてから(そのまま沈没笑)、満を持してバラナシのクミコハウスを目指したんだと思うけど笑令和の旅は選択肢に溢れてもっとスマートなんだろうな。

アレッピーでお腹がピーピーと言ったら周ちゃんは、あ、それいいね、今度使わして貰うわとヤクのような優しい目で遠くを見ながら笑ってくれたけど、負けず嫌いだから、だな笑、もう1回くらいはインドに行ってみたいと虎視眈々願っている。狙うんじゃなくて、願っている。

旅の神様が、生活を必死に回している赤毛のチコオバさんのソバカスだらけの頬を、重い身体を地べたから引き剥がすべく、揚力と浮力でそっと撫でてくれる時を待っている。

それまでは、持ち場でがんばりまっしょい。

あ、右脳が勝手にクルクル回る。自問に答が降ってくる。てゆうか、この日々の暮らしそのものが、バックパック背負わなくても、インドを目指さなくても、私の旅なんだよね。だから、このディメンションから頭を逃がさないこと。生ききること。









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