「M-1グランプリ2023」の季節が今年もやってきた。

去る12月7日、「M-1グランプリ2023」の準決勝が行われ、決勝戦に進出する9組が発表されました。

今年のエントリー数は8540組。
昨年のエントリー数:7261組より、さらに1200組以上も増えました。
エントリー数は年々増加傾向ですが、2017年頃からの優勝者の流れが挑戦者の意欲をかき立てていることが理由のひとつかなと、個人的には思っています。

2017:とろサーモン→ラストイヤーで優勝
2018:霜降り明星→史上最年少で優勝
2019:ミルクボーイ→全国区では無名からの歴代最高得点で優勝
2020:マヂカルラヴリー→最下位を経験からの優勝
2021:錦鯉→史上最年長で優勝
2022:ウエストランド→世相に逆らい自分たちのスタイルを貫き通して優勝

キャッチコピーは、「爆笑が、爆発する。」
昨年のチャンピオン・ウエストランドの所属事務所・タイタンの先輩である爆笑問題にも掛けているようで、リスペクトを感じます。

自分も、今年は3回戦のネタ動画配信から観始めて、準決勝も配信で観ました。
爆笑をとっていたのに敗退、新しい着眼点のネタだと感心したけど敗退、といった人たちが多く、例年にひけをとらない激戦だと感じました。

今回は、12月24日の決勝戦に向けて以下の章構成で
ここまでの「M-1グランプリ2023」を振り返りたいと思います。


①大会ルールの変更

まず、今年の大会は例年に比べて、ルールや運営面での変更がいくつもあったように感じました。
『M-1』のルールは、他の賞レースと比較しても一段高い完成度だと感じていたので、今回さらに変更が加わるあたり、運営陣の熱量が非常に高いのだと感じました。

(1)YouTubeチャンネルでのネタ動画公開時期

これまで:「1回戦TOP3」「3回戦」動画は年明けまで公開
今年:上記の動画は準々決勝が始まる前に削除

こちらは準々決勝以降に進出する芸人さんへの配慮だと思います。
『M-1』は、予選の中で同じネタを何度披露しても良いルールになっているため、1回戦で披露したネタをブラッシュアップして準々決勝、ひいては決勝の舞台で披露する芸人さんもいます。
そうなったときに、1回戦のネタがYouTube上で何度も観られる状態になっていると、審査員や観客の方々が新鮮な気持ちで観られなくなることが考えられます。芸人さんたちの手の内をなるべく明かさないようにしようという配慮を感じました。
個人的には、1回戦~準々決勝の間で同じネタをしている芸人さんがいたら、どこがどう変わったかの見比べを楽しんでいたので少し寂しかったですが、上記の背景も大いに納得できるので、良い取り組みだと思いました。

(2)ワイルドカード枠の選出ルール

これまで:GyaO!やYouTubeにアップロードされた動画の再生数で競う
今年:視聴者1人につき一票投票し、その獲得票数で競う

準々決勝敗退組から1組だけ、準決勝に復活できる「ワイルドカード」制度。こちらは投票に公平性を期すための変更だと思います。
従来通り、再生回数の投票だと以下のようなデメリットもあったと思うので、今回1人一票のみの投票としたのは良い改善だったと思います。

  • 誰か特定の芸人に集中して投票できてしまう

  • 人気票も入ってきてしまう

  • 再生リストで目につきやすい動画が再生されやすく公平性に欠ける

ただ、複数の組に投票したいときに、それぞれ同じ回数だけ再生して投票することができなかったため、誰に一票を投じようか非常に難儀しました。

(3)敗者復活戦のルール

これまで:視聴者投票
今年:現地の観客+芸人審査員による投票

こちら、かなり大胆な変更だと思いました。
『M-1』の敗者復活戦のルールですが、下記のような変遷を辿っています。
※2001年は敗者復活戦無し

2002年~2010年:
 審査方法:現地の審査員による投票
 特記事項:地上波放送無し
2015年~2016年:
 審査方法:視聴者投票
 特記事項:それに伴い、敗者復活戦の地上波放送スタート
2017年~2022年:
 審査方法:視聴者投票
 特記事項:「笑神籤」導入で、敗者復活組の出番がトリ確定ではなくなる

こうして見ると、以下のような目的で
徐々にルールが改善されてきたと感じられます。

  • 審査の公平性を担保

  • 敗者復活組が有利な状況の回避(出順がトリ確定であるため)

そして、今年のルール変更は『審査の公平性』をさらに改善することが目的だと思います。従来行われてきた視聴者投票はその特性上、ネタの面白さだけでなく、人気票がどうしても入ってしまうことが課題だったと思います。
今回は、敗者復活戦を現地に観に来ようと思うほどコア(であろう)観客の方々と、芸人審査員に投票を委ねることで課題解決を図ろうとしているように感じました。
敗者復活戦の会場がテレ朝前の六本木ヒルズアリーナから変更されるため、敗者復活組の移動とか時間に間に合うのかなと懸念はしていますが、このルールで選ばれた敗者復活組は本当に強力なはずなので、上手くいってほしいと思います。

②決勝進出9組

今年決勝に進出した9組は下記の通りです(発表順)。

ダンビラムーチョ(吉本興業・東京)【初】
カベポスター(吉本興業・大阪)【2年連続2回目】
くらげ(吉本興業・東京)【初】
マユリカ(吉本興業・東京)【初】
モグライダー(マセキ芸能社)【2年ぶり2回目】
令和ロマン(吉本興業・東京)【初】
さや香(吉本興業・大阪)【2年連続3回目】
真空ジェシカ(プロダクション人力舎)【3年連続3回目】
ヤーレンズ(ケイダッシュステージ)【初】

初出場が5組、前年度から連続での出場が3組、返り咲きが1組。
初出場組が過半数を占めますが、全組過去に準決勝進出を経験していることからも、決勝経験組と実力は拮抗しているように感じます。
初出場組で自分が特に注目しているのは、令和ロマンヤーレンズ。令和ロマンは縦横無尽にボケるくるまさんに対し、クラスの面白い子を傍から見ているようにツッコむケムリさんの対比がクセになります。ヤーレンズは『分かりやすいけど読めなかった』と感じるボケが多く、往年のパンクブーブーのネタを彷彿とさせます。
一方で、それを迎え撃つ決勝経験組の動向も非常に気になります。個人的には、返り咲きを見せたモグライダーがどんな感じで以前からの変化をみせてくれるかが楽しみです。バラエティ番組への出演も増えたことで、ともしげさんや芝さんの『キャラクター』が以前よりも知れ渡った状態で観るネタは、きっとまた違う面白さに仕上がっていることでしょう。

そして、そんな9組を選出した準決勝もまた熾烈でした。
個人的に、上記の9組以外で特に良かったと思ったのは、20世紀エバースシシガシラの3組。敗者復活戦なんとか上がってきてほしいな…。期待しています。

③準々決勝(ワイルドカード)

先述の通り、投票のルールが変更された準々決勝の「ワイルドカード」制度。
準々決勝自体もかなりレベルが高く、昨年のファイナリストで順位もいいところまでつけたヨネダ2000や男性ブランコが敗退しているのには驚きました。
そんなわけで、ワイルドカード枠への投票もおおいに悩みました。結果、自分はカラタチに投票。アイドルオタクvsアニメオタクという対立から繰り広げられるしゃべくり漫才で、例年この型は変わっていないものの、喋りやフレーズの面白さで毎回爆笑をとっているのが凄いなと思いました。3回戦のネタのインパクトもあり、今回投票させてもらいました。

現在、準々決勝のネタは全組YouTubeやTVerにアップロードされています。
他にも投票を迷った組が数組いるので、ネタ動画と併せて紹介させてください。

(1)ダブルヒガシ

今回のワイルドカードで勝ち上がった組ですね。
面白さに加えて『楽しさ』を感じられるのが特徴的で、会場のウケも一際だったと思います。奇数階と偶数階を交互に行き来することでボケ/ツッコミの役割を違和感なく入れ替えていく構成も流石です。

(2)シンクロニシティ

昨年はフリーながらも準決勝まで進出。
綺麗な言葉遊びが品を感じさせるコンビです。ネタの巧さに加えて、今年は喋りのほうもパワーアップしている印象を受けました。

(3)ハイツ友の会

SNSを題材にしたネタが個人的には刺さりました。
お互いに淡々としている喋りの中で、時折差し込まれる毒舌が良いアクセントになっています。テンションの起伏が緩やかなぶん、いつまでも聞いていられる面白さがあります。

(4)ジョックロック

今年初めて知ったコンビです。
福本さんの熱のこもったツッコミがクセになります。ボケのゆうじろーさんも複数の役を演じ分けていますが区別しやすく、演技力やネタ構成がしっかりしているからだろうなと思いました。
昨年結成されたコンビとのことなので、これから先が楽しみです。

(5)シカゴ実業

個人的にすごくハマってしまったネタです。
「中川久之」という、ツッコミの方の本名を延々ともじるだけでここまで面白くなるのが凄いなと。後半のカオスっぷりが面白く、千鳥の「100択クイズ」に似た面白さを感じました。
確か、3回戦も結構毒舌が効いたネタで面白かった記憶なので、他にももっと面白いネタがありそう…。2人の人柄から来る面白さも感じたので、これから注目していきたいです。

○おわりに

そんなこんなで振り返ってきた、これまでの「M-1グランプリ2023」。
毎年、この時期が来ると『今年も終わるんだな…』という、一抹の切なさを感じます。
『お笑い芸人好き』としては見逃せない、今年のお笑いの総決算。12月24日を楽しみに待ちたいと思います。

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