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未経験者にAgileを教えた話 第1話 出だしが肝心

前回(プロローグ)はこちら
ある日突然、アジャイルについてのレクチャーをすることになった私。しかし「ユーザーストーリーやエピックについて」というお題をもらったにもかかわらず、教える相手はアジャイル未経験者達。私はお題を無視してレクチャーの準備を進めるのであった。

いきなりアジャイルって言わない

アジャイルレクチャーその1は、アジャイルという言葉を極力排除しようと設計した。

多くの講演や書籍でアジャイルに関して語られるとき、冒頭でなされる説明は大きく2種類だと思う。

1. 従来の開発手法との対比。ウォーターフォールが悪者になるアレ。
2. アジャイルの成り立ちから、Agile Manifestoを通じてアジャイルとは何ぞやを説くもの。

しかし、前職での苦々しい思い出は、私に全く異なるアプローチの必要性を示唆していた。

・ウォーターフォールの否定をしてはいけない。(少なくとも、初回は。)
・マニフェストはマインドセット的にまだAgileになっていない人には響かない。

だから私は第3のアプローチをとった。非合理的なやり方で実際にモヤモヤしてもらい、「じゃあ何が合理的なのか」を考えてもらうきっかけをつくろうと思った。

もちろんウォーターフォールとの対比やマニフェストの話は追い追いするべきだと思う。しかし、残念ながら今回のターゲット層が最初に学ぶべきはそこではない。

私が初回レクチャーの題材として選んだのは、かの有名な、「顧客が本当にほしかったもの」の絵である。

グループワーク

まずはあの絵の最初の4枚、つまり顧客・プロジェクトリーダー・アナリスト・プログラマーの間でどのような解釈の齟齬が起こるのかを体験してもらった。(私自身もどこかの研修で体験したものなので、知っている人がいるかもしれない。)

時間を区切って、参加者が各ロールに分かれる。顧客に何かひとつ欲しいものを思い浮かべてもらい、伝言ゲームの要領で、顧客からプロジェクトリーダーへ、プロジェクトリーダーからアナリストへ…と、顧客が欲しいものを説明していく。

ただし、これだけでは単純な伝言ゲームになってしまうので、顧客には文章で説明してもらった。そして、文章で説明を受け取ったプロジェクトリーダーはそれをイラストにして次の人へ、イラストで説明を受け取ったアナリストはそれを文章にしてプログラマーへ渡す。

最終的にプログラマーが描いたイラストがそのプロジェクトの最終的なアウトプットである。

結果とディスカッション

顧客の要求したとおりのものができたプロジェクトもあれば、全く違うものができたプロジェクトもある。

結果を踏まえて、参加者達に問いかけた。

・今回要求どおりのものがアウトプットされるのに役立った部分はどこか
・要求したとおりのものができる可能性を更に高めるためにはこのプロセスの何をどう変えればよいか

私に与えられた時間はほぼワークショップで使い切ってしまったため、これは宿題として参加者に後から提出してもらうことにした。この宿題についても少し工夫をしたので、追ってそれもノートにするつもり。

そして次の一言とともに次回予告。

ところで皆さん、顧客が本当に欲しかったものにまだたどり着いていないのですが…

というわけで、次回は今回の宿題からアジャイルがどういう課題を解決してくれるかに触れつつ、もう少しどっぷりアジャイルの世界に入ったレクチャーをする予定。

ありがとうございます。いただいたサポートは、脳の栄養補給のため甘いお菓子となり、次の創作に役立つ予定です。