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本当に落ちた? ニッポンのサービス

「ニッポンすごいぞ」言説

まず、私は基本、「”ニッポンやっぱりすごいぞ”言説」が、ちょっと苦手だ。
なぜなら、そういう言説は、勢いが落ちてきた、もしくは落ちてきていると当事者が感じていて、それがとても不安なので、「そんなことはないはず・・ほら、やっぱりすごかった」と、自分で再確認したくなる、そんな人間の、ちょっと悲しい本能的なものにも思えるからだ。

昨今やたらテレビやネットで「ニッポンやっぱりすごいぞ」的な番組が増え、「すごいぞ」を超えて「こんなに好かれてるぞ」が増えているのも、そういう人間の心理に訴える番組はウケるからだと感じている。

どこの国のものでも、素直に「すごい」と言える感性

私は、高度経済成長期に少年時代を過ごしたためか、「日本ってやっぱりすごいよね」なんて確認する必要もなかったのかもしれないし、そういう時代は、今と違って外向きで、外国の面白いもの、すごいものを少しでも見たい、吸収したいという純粋な思いが強かった。すごいものは、別に日本であろうが外国であろうが、その外国が欧米であろうがなかろうが、純粋に「すごいな」と感動することができた。それは時代のおかげなのかもしれないが、私は今までずっとそういう考えで来ることができたのは幸せだったと思う。

日本のウリ=サービスの質は、「世界標準」に落ちた!?

さて、そんなわかったようなことを言っている私でも、「ニッポンってやっぱりすごいね」と外国人に言われると、正直誇り高い気持ちになるのは確かだ。純粋に嬉しい。

これまでそうやって褒められるのは、日本のサービスについてであることが多かった。痒いところに手がとどく、きめ細やかなサービスは日本のウリだった。

しかし、私自身、あれっ、かなり質が低下していないかい?と思うことがやたら増えていて、ちょっと心配になっている。最近、知り合いの外国人にも、「なんか日本のサービス、世界の標準ぐらいになってきましたね(笑)」と冗談で言われるぐらい、なんかウリではなくなってきているのではと不安にさせられるのだ。

ある新幹線駅での体験

しかし、先日、ある新幹線の駅でちょっと驚く体験をした。

それは、東北新幹線の、ある各停しか停まらない小さな駅。用事があったため下車し、数時間後にはまた乗って東京に戻る予定だった。

帰りのチケットはまだ取っていない。でも、何時に駅に戻ってこられるかまだよくわからない。それに、この駅には各駅が一時間に一本の間隔で停まるだけらしい。

帰りのチケットも買っておこう。まあ自由席でいいか、と券売機に向かうものの、どうも今日もインバウンドなどでかなりの席が埋まっているようで、指定席を買ったほうがよさそうだ。1時間に1本だから、念の為かなり遅めにしておかないと危ないな。でも、もしそれより早く駅に戻ってこられたら、その時は、いったん買ったチケットをどういう風に、1本早い列車に替えることができるのだろう。

慣れない新幹線。券売機の前でよくわからず、その横のみどりの窓口に並んで聞いてみることにした。

その時だった、制服のようなスーツを着た男性が近寄ってきて、私に聞いてきた。「失礼ですが、何かお手伝いしましょうか?」

その方は駅員の方のようだが、最近よく東京の駅などに配置している、インバウンドの外国人のための案内員とかではなさそうだ。さっきみどりの窓口から出てきたが、社員みたい。そして、その方は、私に、ものすごく丁寧に、私の状況ではどのようにチケットを買うのがよいか、説明をし始めてくれた。

東京行き新幹線と言っても、どこの駅始発か、また何号車かでも全然混み方は違うこと、なども説明してくれた。私は話を聞き、やはり帰りは指定席を買うことに決めたのだった。

券売機で画面操作の"反復”練習までしてくれる駅員

向こうから近寄ってくれて、しかも、こんなに丁寧な対応。日本の鉄道のサービス、やっぱりすごいね、と思っていたら、まだ終わりではなかった。

お礼を言って駅を出ようとしたら、その駅員が聞いてきた。「お客様、2分ちょっとお時間ありますか?」と。

私はなんのことかわからないまま、「ええ、はい」と答えた。すると彼は、なんと、私が、予約した新幹線の発車時刻より早くに駅に戻って来られた場合に、速やかに券売機で列車の変更と席の指定をする方法を教えてくれるというのである。それには2分ちょっとかかるが、その時間があれば教える、というのだ。

「もし、発車の少し前にいらっしゃった場合、このみどりの窓口は間違いなく混んでると思うんですよ。そういう場合は、この券売機で予約変更をしていただくことになりますが、ちょっとその操作方法がわかりにくいところもあるので、お伝えしますね。はい、まず、あっ、お客様自身が画面操作しないと覚えないと思いますので、やってみてください。はい、まず、ここを押して、この画面が出てくるので、ここを押します。すると・・・・はい、そうです」と。

そして、驚きはさらに続く。「さあ、じゃあ次はお客様、ご自身でもう一回やってみましょう。そうしたら、絶対にお一人でもすぐにできると思うんです。さあ、最初は、どのボタンか覚えてらっしゃいますか。・・・そうです。それから?・・いや、そっちじゃなくて、右側ですね。・・・・そう。このように、まず、これ、そして、これ、そして、ここ、なんですね。こっちを押さないのが、ポイントですね。これだけ覚えていただいたら、バッチリです!」と。

説明が終わって時計をみたら、ちょうど2分ぐらい経っていた。

こうしたサービスを嫌がる人もいるかもしれない。しかし、私は少なくともどうしたらよいか迷っていて、向こうから声をかけてもらい、そして、わからない操作を、繰り返し練習で、ひとりでもできるようにしてもらった。ぴったり約束の時間で。

最後、「お気をつけて!」と笑顔で見送られて、駅を出た。
「日本すごいぞ」言説が苦手な私も、このすごさを世界に自慢したくなった笑。

今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
AJ  😃


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