少し、ねむたい。
それとも、そんな気がするだけかな。
自分でも、よくわからない。
足が地に着いていない、ふわふわした感覚だけがある。
夜中に、一度も目を覚まさなかった。
とてもとても、珍しい。ぼくにとっては。
いいことだけど、なんだか、不思議な気持ちだ。
アルネは、ぼくの顔を覗き込んで、小さく笑った。
ぼくにしか見えない、ぼくだけの女の子。
色んなことが、まだ片付かない中でも、コーヒーを淹れたり、豆を焙煎したりする道具は、すぐに使えるようにしていた。
親しみのない環境に、いち早く親しみのあるものを。
それはまだ、ぐらぐら揺れている土台に乗るぼくを、安心させてくれた。
アルネは、同意するように、また微笑んだ。
ぼくも、きっと笑っていた。
静かで、平穏な朝の中。
少し肌寒くて、清浄な空気の中。
ぼくらは、幸せを思っていた。