YouはAshiok! じゃなくてジェイス!!


そんなふうに『サンダー・ジャンクションの無法者』に登場しているアショクはジェイスの変装だったのですが、わかってからストーリーを読み返すと「確かに」と思える記述が存在するのでした。以下、私が伏線っぽいと感じた箇所を挙げます。

第3話 プロスペリティ行き列車にて
https://mtg-jp.com/reading/ur/OTJ/0037693/

まずこの回でケランがオーコ一味に合流します。ケランは故郷のエルドレイン次元でアショクと戦っており(『エルドレインの森』第5話)、このプレインズウォーカーが邪な人物だと知っています。そのためアショクの姿を見て息巻くのですが、一方のアショクがケランに反応するような描写は全くありません。エルドレインではケランとウィルの連携によって敗北し、エリエットやローアンを放って逃走する羽目になったというのに。表面上は礼儀正しいアショクのことです、「おや、お久しぶりですね。あの時はやられてしまいましたよ」くらいは言ってもおかしくはないんじゃないかなあ。

更にその後、列車を襲撃する作戦において、アショクが一味の連絡役として集団的精神感応――言うなれば遠隔ボイスチャットを主催します。多人数の精神を繋ぎ、距離が離れていようとも意思疎通を可能にする。確かにアショクは精神系の能力を扱うプレインズウォーカーですが、悪夢とは関係なくこんな技も使えたのか……と思ったかもしれません。ですが私たちは過去にこの技を何度もストーリーで見てきました。そう、これはジェイスの得意技です。戦闘こそ苦手なジェイスですが、ゲートウォッチ時代はしばしばこの能力を用いて仲間同士の意志疎通を行っていました。
オーコ一味は恐らく以前にもこのボイスチャットを経験していたのでしょう、ケラン以外は特に驚いた様子を見せてはいませんでした。ですがここ。

「子供みたいな口喧嘩はやめな。アショクはそのために繋いだわけじゃないんだ」ヴラスカが叱りつけた。「任務が終わってからにしな。今は作戦通りにやるんだよ」

このヴラスカの台詞はいかにも「知っている」と感じさせません? もしかしたら、ギサとゲラルフの口喧嘩に辟易したアショク(ジェイス)から個人チャンネルで「すみません、あのふたりを黙らせてくれませんか」なんて頼まれたのかもしれませんね。

第4話 ターネイション発見
https://mtg-jp.com/reading/ur/OTJ/0037702/


列車の襲撃は完全に作戦通りとはいかなかったものの、目的である荒野無頼団のノーランを列車から拉致することに成功しました。この回の冒頭で、アショクはノーランの記憶を探って必要な情報を引き出します。これもまたシンプルにジェイスの得意技。なまじアショクはストーリーでの出番が多いわけではないので、「へー、そんな技も使えるんだ」と思わされてしまいます。キャラクターとしての存在感はすごくあるんですけどね。
そしてその後、オーコたちは用済みとなったノーランを砂漠に放置して進もうとしますが、ケランは苦言を呈します。その際にアショクは「私もその者の死を望むわけではありませんので」とケランを支持しました。スポンサーにそう言われたらオーコも強固に反対するわけにはいかず、アニーとケランが最寄りのオアシスへと送っていくことで決着しました。アショク(ジェイス)がそうさせたのは、「利用するだけ利用して捨てる」のはジェイスとしては良心が咎めたのだろうなと思います。