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176.ビリヤニの香りを生むチャンスはいくつか? 問題

ビリヤニを考える。

ビリヤニの本質が「米をおいしく炊く」以前に「香りを組み立てる」ことにあるとするならば、香りを生むチャンス(タイミング)はいくつあるのだろうか? 作り始めてできあがるまでのプロセスを改めて検証し、洗い出してみることにした。

まずは実際に試作したときのレシピから。

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●ビリヤニの学校 第3期 チキンビリヤニ
【材料】
はじめの香り……A
・マスタード油 300g 
・香菜の根(みじん切り) 23g 
GGペースト……B
 ・にんにく(すりおろし) 40g
 ・しょうが(すりおろし) 50g
 ・水 200ml
トマト(ざく切り)318g
トマトピューレ 150g
中心の香り……C
ビリヤニマサラ(ミルで挽く) 34g使用
 ・グリーンカルダモン 10.5g
 ・クミンシード 10g
 ・コリアンダーシード 10g
 ・キャラウェイシード 6.2g
 ・レッドチリ 5.2g
・パプリカ 5g
・クローブ 4.2g
・ブラックペッパー 4.1g
・ビッグカルダモン 3.7g
 ・シナモン 2.8g
塩 20g
鶏肉(むね肉とササミ以外のすべての部位) 1,500g
鶏ガラスープ(白濁タイプ) 1,600g(1,000g使用でOK)
キウラウォーター 少々……D
マリネ……E
 ・鶏むね肉とササミ(ひと口大に切る) 500g
 ・プレーンヨーグルト 200g
 ・ビリヤニマサラ 10g
 ・塩 3g
フライドオニオン(1,040gを揚げて166gに) 126g
仕上げの香り……F
 ・グリーンチリ(斜めスライス) 26g
 ・カスリメティ(4gを焙煎して手で揉む) 3.5g
 ・タイム 2g
 ・香菜の茎と葉(ざく切り) 16g
バスマティ米(ラルキラ) 1,200g
熱湯 5,000ml
ボイル用スパイス……G
 ・クローブ 5g
 ・グリーンカルダモン 3g
 ・メース 2g
レモン汁 2個分
米油 少々
塩(ボイル用) 60g
アスパラガス(なければ省略) 適量
カルパシ 3g……H
トッピング用(米の上)……I
 ・フライドオニオン 40g
 ・しょうが(千切り) 50g
 ・サフラン(100mlの湯で溶く) 0.1g
 ・ロースペタル 1g
 ・ギー 40g
トッピング用(盛りつけ後)……J
 ・ミント(手でちぎる) 適量

【下準備】
マリネ用の材料をすべてボウルに入れてよく混ぜ合わせておく。
フライドオニオンを作っておく。
ビリヤニマサラを挽いておく。
米をさっと洗い、たっぷりの水(分量外)で30分~40分ほど浸水する。

【グレービーを作る】
鍋にマスタード油を入れて煙が出るまで熱する。香菜の根を加えてさっと炒め、GGペーストを加えて水分が飛ぶまで炒める。トマトを加えてつぶしながら炒め、トマトピューレを混ぜ合わせる。火を弱めてビリヤニマサラと塩を加えて炒める。鶏肉を加えて強火にし、表面全体が色づくまで炒める。スープを注いで煮立て、30分ほどグツグツ煮込む。煮込みの後半にキウラウォーターを加える。火を止めてマリネとフライドオニオンを混ぜ合わせ、仕上げの香りを散らす。

【米を炊く】
熱湯にボイル用スパイスとレモン汁、米油、塩を加えて煮立て、米を加えてふたをし、5分ほど茹でる。茹で上がった米をざるですくい、カルパシをを混ぜながらビリヤニ鍋に加える。

【ビリヤニを炊く】
米の上にトッピング用の材料を散らし、30分ほど炊く。10分蒸らす。器に盛ってミントを散らす。
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さて、香りてんこ盛りのおいしいビリヤニができあがった。

香りを加えるチャンスは全部で10回。以下の通りである。

A. スターター(香り油とパクチーの根)
B. ベースの風味(GG)
C. 中心の香り(ビリヤニマサラ)
D. 鶏肉煮込みの後半(キウラウォーター)
E. マリネの混ぜ合わせ(マリネとフライドオニオン)
F. 仕上げの香り(ハーブ類)
G. 米のボイル時(ドライホールスパイス)
H. 米ボイル直後(カルパシ)
I. 米を炊く前トッピング(しょうが、サフランなど)
J. 盛りつけ後トッピング(ミント)

スパイスでカレーを作るときのゴールデンルールで僕が設定しているのは、「はじめの香り」と「中心の香り」と「仕上げの香り」の3回。今回のアルファベットで言えば、AとCとFになる。ただ、ゴールデンルールはわかりやすくするために3回に集約しているのであって、基本的にはカレーを作り始めてからできあがるまでの間、どのタイミングでどんな香りを加えてもいい。そこに狙いがあるのなら。

そして、いわゆるスパイスに限らず、新しい何かを追加するたびに鍋中の香りは変化する。フセインさんがマトンキーマを作ったとき、途中でフライドオニオンを加えるプロセスがあった。加えながら「これを入れると香りが変わる」と彼は何度か繰り返した。その言葉が印象的だった。フライドオニオンは主にうま味を強めるために使うイメージが強いが、「これでおいしくなります」ではなく「これで香りが変わります」という認識なのだ。何を加えても鍋中の香りは変化する。

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さらに、香りを加える以外に鍋中の香りが変化する可能性はある。香りを生む行為だ。

・香りを加える……材料を追加
・香りを生む……加熱コントロール

何を加えるかだけでなく、どう加熱するかによっても生まれる香りが変わる。そんなふうに考えていくと、ビリヤニ調理における香りを生むチャンスは、10カ所どころか、数えきれないほどあるということなのだ。

今回の試作では、香りを加えるタイミングをひとまず洗い出し、それぞれのタイミングで加えるアイテムについては、バランスを考えながらチョイスした。タイミングがまだまだある上にそこで加えるアイテムも数えきれないほどあるわけだから、できあがるビリヤニの味も香りも無限に可能性があることになる。果てしない。このビリヤニですら十分てんこ盛りだというのに。

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可能性を洗い出した上で引き算を始める。とことんまで引き算したら、今度は別の視点で足し算を始める。そうやって終わりなき足し引きの旅に没入するのが楽しい。僕はがビリヤニの人だったら旅に出たまま戻ってこないのかもしれないなぁ。でも、一応、僕はカレーの人なので、このあたりでビリヤニの記事はお休みにして、メインステージのカレーに戻りたいと思う。


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