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231.カレーに「もうレシピは要らない」のか? 問題 “カルチャー”編

 カレーにおけるカルチャーとは、「受け継がれてきたもの」と捉えている。インド料理はインドで受け継がれ、タイ料理はタイで受け継がれている。その中に我々が「カレーだな、これは」と思う料理がある。それがカルチャー的インドカレーであり、カルチャー的タイカレーだ。 
 受け継がれるカレーは、国内にもある。わかりやすいのは、カレー専門店のカレーだ。各店で定番メニュー化しているカレーは、その作り方が長年受け継がれている。
 だから、カレーのカルチャー的側面から目が離せない。それを受け告げる立場にあるかどうかは別として、自分が作るカレーに大きなヒントを与えてくれる存在だ。カルチャーをインプットし、そこから学び、自分のスキルアップにつなげたい。

 そこで『システムカレー学』では、カルチャーの章をもうけ、8人のシェフから8種類の定番カレーを教えていただいた。

・  北インド……マシャール/フセインシェフ
・  南インド……ヴェヌス/ヴェヌゴパールシェフ
・  スリランカ……ホッパーズ/ラサンタシェフ
・  ネパール……サンサール/ウルミラシェフ
・  タイ……ティッチャイ/長澤シェフ
・  欧風……ルー・ド・メール/鈴木シェフ
・  中華……珉珉/清水シェフ
・  日本……デリー/田中シェフ

 どのシェフも公開を惜しまず、プロセスのすべてを見せてくれた。僕がかつてから細々と取り組んでいる「カレーのオープンソース化」に賛同してくれるお店が増えることが嬉しい。カルチャーのカレーにはレシピが紐づく。言い伝えられたり背中を見て学ぶこともあるかもしれないが、受け継いでいくために有効なのがレシピという存在だからだ。
 なかでも、“あの『デリー』”が“あのカシミールカレー”の作り方を完全公開してくれたことは特筆すべきだと思う。包み隠さず、すべての材料をグラム単位で。初公開なんじゃないかな。
 読者の皆さん、“あのカシミールカレー”は、ご自宅で再現できます! 再現してみて、『デリー』に行って答え合わせをしてみてほしい。

 カルチャーによるレシピをインプットするときには、常に傍らにサイエンス視点を持つといいと思う。受け継がれてきた作り方は、意味があろうとなかろうと、「こうやるもんだ」と伝えられてきた。レシピは、一度はその通りに作る必要がある。そうすることによって学びの量が増えるからだ。
 二度目から同じように作り続ける選択をするなら、自分も受け継ぎ手の1人として名乗りをあげることになる。もし別の道を歩むなら、カルチャーのレシピに対して「なぜ?」とか「なんのために?」を問う。答えはサイエンス視点に立つと見えてくる。様々な狙いが理解できたあと、何を採用してどれを放棄するのかを自分で決められる。
 それもカルチャー視点があったうえでたどり着くおいしいカレーであり、得られる喜びだと思う。


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