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エベレスト街道ひとり旅 ‐ サービスを越える瞬間

およそ130kmほどの距離を14日間かけてトレッキングする。
登った高さは、トータルで8,000m。
最高地点で5,550mだったが、空気が地上の半分しかなく
体内に取り込まれる酸素は、さらに1/3と少なくなる。
こんなに少ないのでは、まったく動けないのでは?と
理論上思うけれど、そんなことはなかった。

そして、私の酸素濃度は危険と言われる数値まで下がっていたが
高山病は、我慢できる程度の頭痛、若干の食欲不振程度で
症状は軽かった。

トレッキングは、いつものスピードの半分以下で歩き
呼吸は、大きく吸って吐くことで、継続して歩くことができたし。
さほど休憩しなくても歩ける体力はあった。
このようにして、長い距離を少しずつ先へ先へを歩みを進めていく。
まるでカメのように先に進まない。
しかし一方で、巨大すぎるその大自然を自分の足で踏みしめる
ことができていす自分を誇らしく思った。

毎日、異なるロッジに泊まるのだけれど
今日はどんな雰囲気なのだろうか?と楽しみ。
どのロッジもベットルームは、贅沢なことに
シングルベッドがふたつある部屋をひとりで使える。

一番好きな空間は、ゲストやガイド、ポーターが集うダイニング。
夕方になると、暖炉を点けてくれて、とても温かくなる。
グループのゲストたちは、会話のほかに、トランプゲームで
楽しんでいる人たちが多かった。

様々な国の人とお話しする機会があった。
ゲストとは、トレッキングの話が主だったが
ネパール人のガイドたちとは、更に深い話ができた。
家族のこと、ガイドになる前までの道のり、
この先にやりたいことなど、人生に関わる会話ができた。

その会話を通して、彼らの家族や友達への思いやりが見えてきた。
自分の利益を考えず、特に弱い立場の人を助けるのは普通のことなのだ。

そして、その性質をもったガイドとポータは、
役割を越えて、私を支えてくれた。

ガイドは、トレッキングの計画に入っていない場所に
ぜひ私を案内したいと言い、連れて行ってくれた。
それも、半日かかる工程で、かなりハードなコースだったのにも関わらず。

トレッキング中に、私が滑って転びそうになると
実に素早いスピードで支えてくれる。

YAKという牛の仲間たちが通り過ぎるとき
彼らの角が当たらないように、私が背後になるように常に安全にしてくれた。

下界から重たいというのにリンゴなどのフルーツをたくさん持ち歩き
毎日、夕食後にカットして綺麗に盛り付けてくれる。
とても手間のかかるサービスなのに、快く届けてくれる。

ポーターも同じようにとても大切にしてくれた。

落石が始まったとき、ずっと先を歩いていたポーターが
荷物を置いて、走って戻って来てくれて、安全を確保してくれた。
標高が高くて、走るのはキツいはずなのに。
若いのだから、私よりも自分の命を大切にしてほしいと思ったが
彼はそんなことよりも、私を最優先に考えてくれた。

エベレスト街道から8000mを越えるほどの
あまりにも神秘で美しく壮大な山々に囲まれて
五感でいっぱいで感じた感動だけでなく
こうして人から届いたギフトは、一生心の中に残っていくだろう。

そしてそのことが、これからの私の行いに
大きく影響していくだろうと感じている。

「リッツ・カールトン」が大切にするサービスを超える瞬間を感じた。

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