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エピソード#24 満開の桜に迎えられ、「自宅に帰りたい」という思いを叶えられた退院搬送

病状が進行し、自宅までの移動もリスクがある方で、ご本人様の「自宅に帰りたい」という思いを叶える搬送を対応させていただきました。
雨も降っている日で、点滴もしながらの看護師添乗有りのストレッチャー搬送。
 
車中では、ご家族と共に、時折、「海沿いを走ってますよ〜、もうすぐお家ですよ〜」と声を掛けながら、苦痛がないか表情なども観察し、念の為、酸素飽和度を測定する機器を指に装着し、見守りながらのケア。
 
あと数分で自宅に到着という所で、今まで動きがなかった両手を上に伸ばした後に、大きく呼吸をされ、動きが止まりました。私はご本人様の両頬をさすり、「もうすぐお家ですよ。帰りたかったお家に着きますよ。まだ寝ないでください!起きてて!」と声を掛け続けました。
 
その直後、顔を歪められ、再び、小さく呼吸をされ始めました。
声を掛け続け、自宅近くに車を停車し、リフトを降ろして、ご家族とも、心ひとつになり、ストレッチャーのまま自宅に入り、無事にベッドへ移乗。
 
「お家に着きましたよ。お帰りなさい」と声を掛けると、目を開けて部屋の中を見て、ホッとした表情をされました。
ベッドの位置からは桜が綺麗に見え、桜も『お帰りなさい』と言ってくれてるような気がしました。
 
帰宅した日に訪問診療の医師や訪問看護ステーションの看護師、ケアマネージャーさんが来られるとは聞いていたので、ご家族には、呼吸状態が今よりも、かなりゆっくりになるようなら、早めに医師に連絡してくださいとお伝えしました。
 
雨の中で、車から自宅までの50m位の距離をストレッチャー搬送した時は、伊豆山の土石流災害の時の避難誘導した時を思い出しました。それくらいに必死でした。
帰りの車中、運転をしていた社長と、助手席に座っていたスタッフさんも、私が声を掛け続け始めた時に、状況を察し、自宅まで、あと数分の距離がかなり長く感じた、、と言っていました。
夕方に、ケアマネージャーさんと電話で話しましたが、皆で会議している時もとても穏やかな表情をされていたと聞き、「自宅に帰るお手伝いができて良かった」とホッとしました。
病院のソーシャルワーカーさんも心配されて、電話をくださりました。
最近は、病状がギリギリの方の搬送依頼も増えてきました。
安全な搬送方法を検討し、ご本人様の「自宅に帰りたい」という思いに寄り添い、お手伝いしていきたいと思います。

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