期待してなかったシャボン玉から、1つ見つけた
ソファでゴロンと寝転んでいると、8歳の息子から「シャボン玉」のお誘いを受けた。
「いまから庭でするから、一緒にきて!」
テンション高めに話す息子とは裏腹に、僕はイマイチ乗り気でもなかった。
「シャボン玉…ねぇ」
渋々連れ出されて外に出た。昼過ぎだったが、少し曇り気味で日差しが強いわけでもなく、気温はちょうど良い感じ。外に出た息子を見ると、手に持っていたのは一眼レフのようなカメラだった。
「ちょっと待っててよ」
息子はカメラでいうところのレンズキャップの部分を外し、シャボン玉液を入れる。そこにカメラ本体のレンズの部分を突っ込む形で液に浸した。
「それ、どうやって使うの?」
僕の疑問は聞いていないくらいの勢いで、息子はシャボン玉の準備を進めていく。
よく見ると、カメラの本体には「Shabon」と書いてある。これはきっと「Canon」を文字っているのだろう。なかなか面白い。
「よし、それじゃいくよ!」
息子がシャッターボタンにあたる場所を押す。
すると、レンズ部分に風が送り込まれてカメラから吹き出すような形でシャボン玉が勢いよく空に舞った。
「お〜!」
小さめなシャボン玉が何十個も一気に飛び出していく様子は、思った以上に綺麗だった。シャボン玉達は、風に流されて空高く舞い上がっていく。
「ね、これすごいでしょ?!」
キャッキャッと喜ぶ息子の姿を見られるのも良い。弾けるような笑顔とはこのことだと思った。よく考えたら、こんな息子の表情を見たのは久しぶりだ。最近は一緒にどこかに行ったり、遊んだりすることができていなかった。
あー幸せって、きっとこういうことだ。
決して特別なことではなくて、ありふれた日常に潜んでいる。それを1つ見つけられた気がした。
この4ヶ月、長かったな。
ようやく戻ってきた日常を噛みしめるように、大きく息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出した。
「なぁそれ、もう一回やってよ」
息子に言うと、屈託ない笑顔で「いいよ!」と返してくれた。
「3・2・1!いけ〜!」
息子の作った無数のシャボン玉が風に舞っていく。
シャボン玉、やるじゃん。
大小さまざまな泡のかたまりは、これまで溜まっていた邪気を一緒に連れていってくれるような気がした。
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