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黒木さんがモテる理由

出版社で働いていた頃のはなし。

各ファッションブランドが、
次のシーズンに発表するアイテムのお披露目会で「展示会」というのが、年に2回あった。

どのブランドも同じようなタイミングで開催されるので、一日にいくつも回るのだが、
その日も仲良しの先輩と二人で、
朝から展示会周りをしていたときのことだ。

お昼を過ぎたころ、2件目と3件目までに
時間があったので、駅前にあったスタバで
時間を潰すことにした。

見晴らしのいい1階のカウンター席に陣取り、
ぼんやり外を眺めながら、温かいカフェモカで
体と頭に糖分をチャージしていると、

左側から会社の名物女性編集者・黒木さんが、
てくてくと歩いてくるのが見えた。

「あ!黒木さんじゃないですか?」と
隣にいる先輩に伝えた。

「ホントだ!あれ?笑ってるよね!
うちらに気づいたのかな」

「確かにニヤニヤしてますね。あ、きたきた」

黒木さんはそのままスタバに入店してきた。

入口付近の席だったので、入店するのと同時に
「黒木さん!」と声をかけた。

すると「ワッ!びっくりした!」と驚かれた。

続けて「ねぇ、今もしかして私のこと見てた?」と、なんだか気まずそうに聞いてきたので
「いや、、、」と、言葉をにごした。

黒木さん「実は、この間、ロト買ったの」

私「はぁ」

黒木さん「それで、もしそのロトが当たったらどうしようかなって想像してたらさ、
もうニヤケが止まらなくって」と、
一生懸命説明してきた。

“やだ、何この可愛い人”!

黒木さんは人をひきつけてやまない編集者。
正直、決して絶世の美女ではないが、
噂では、連載や取材を担当した有名俳優たちからも声をかけられるほどだったのだとか。

わかると思った。

このナチュラルすぎる“隙”はずるい。

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