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MENA(中東・北アフリカ)専門家によるイラン解説 XXII

 以下のような報道に触れると、『イランは政府や宗教的な権威を批判しただけで刑事罰に処するのは酷い』とか、『鞭打ち刑は野蛮だ』と誤解する人が多いでしょう。

 そこで、今回の記事では、世界中のほとんどの国で、 #安全保障 に対する罪、 #国家反逆罪 #内乱罪 #スパイ 罪などの最高刑が死刑や無期懲役であること、そして現在でも多くの国が #不敬罪 を持っていることや、鞭打ち刑とは何かについて解説します。

 不敬罪とは、国の統治者や王室の尊厳に対する侮辱や攻撃を罪とする法律です。具体的には、君主や王族、場合によっては国家の象徴とされる人物に対する冒涜行為を禁止し、これを犯した場合に刑事罰が科されます。このような法律は、国家の安定や尊厳を保つために設けられることが多いです。

 現代でも多くの国が不敬罪を法律として保持しています。これらの国々では、王室や国家の象徴に対する敬意を法的に保護し、不敬行為を厳しく取り締まっています。私の活動範囲内の国々、例えば、タイやカンボジア、ブルネイ、ヨルダン、サウジアラビア、モロッコ、スペイン、デンマーク、ベルギーなどがこの種の法律を持っており、侮辱行為には重い刑罰が科されます。ノルウェーとオランダは近年になって漸く廃止されたようです。

 日本においても、1945年の大東亜戦争敗戦までは不敬罪が存在しました。この法律は、天皇をはじめとする皇族や、神宮、皇陵に対する侮辱を禁じるもので、違反者には死刑や懲役刑が科されることがありました。しかし、戦後、新たに施行された日本国憲法により、表現の自由が保障されたため、不敬罪は廃止されました。つまり、現在は2024年であり、わずか80年前までは、日本には #言論の自由 が存在していなかったのです。

鞭打ち刑と石打刑の違いについて

#イスラム 社会における #鞭打ち刑 は、死刑のようなものではありません。実際には、死刑を避けるための刑罰や体罰として用いられます。鞭打ち刑は、特定の犯罪や道徳違反に対して課されることが多く、 #シャリーア #イスラム法 )に基づいています。この刑罰は、主に懲戒や更生を目的としており、一般的には死に至るようなものではありません。飲酒で鞭打ち80回の刑などもありますが、ここで良く考えていただきたいのが、80回打っても死なない程度の鞭打ち刑だという事実です。 #イラン の鞭打ち刑の映像は見つかりませんでしたが、インドネシアの鞭打ち刑は以下のような感じです。

 この程度の鞭打ち刑なら、 #刃牙 で有名になった #鞭打 の刑の方が何倍も痛いです。

 一方で、 #石打刑 は、イスラム法において重大な罪、特に姦通に対する刑罰として用いられることがあります。被告が石で打たれることにより、死に至ることがほぼ確実なため、非常に厳しい刑罰とされています。しかし、今回のイランの #モハマド・ラスロフ 監督に対する鞭打ち刑は、残酷なものではありません。また、当たり所や処刑後の手当てが悪いと死に至るような刑罰でもなく、見せしめの刑であり、一罰百戒的な意味合いを持ちます。国際的な人権団体からは、これらの刑罰が人権侵害であるとの批判も受けています。しかし、投獄するのではなく、禁固刑としての処分であり、報道から受けるような残酷な処罰というわけではありません。

#武智倫太郎

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