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AI の価値は「技術」にあらず?トークセッション「AIファースト時代の広告代理店のマネタイズ戦略を考える」#Web3BB

2024年4月25日、26日に国立新美術館で開催された Web3 AIマーケティングBB(Beyond Borders)は、東京と米国シリコンバレーに法人をもつ Pivot Tokyo が主催・運営する、最先端テクノロジーとマーケティングの融合を探求するイベントです。

Day1 のレポートこちら。

Day2 に開催されたNVIDIA基調講演はこちら。


この記事では、Day2 の 11:00 ごろから行われたセッション、
「AIファースト時代の広告代理店のマネタイズ戦略を考える」
にて、AIファースト時代の広告代理店が実際にどのような試行錯誤をしているか、興味深い議論が交わされた様子をレポートしていきます。

写真右から
[モデレーター]  小山 隼司 (社長執行役員CEO, アドイノベーション株式会社)
山田 翔(代表取締役, 株式会社アドウェイズ)
柴山 大(Hakuhodo DY ONE / 博報堂テクノロジーズ執行役員)
山内 大輔(代表取締役, 株式会社 ID Cruise)


トークセッションは、以下のトピックに沿って進みました。

トピック1: 正直、AI 活用フルで出来てますか?

小山(アドイノベーション) - では、「正直、AI 活用フルで出来てますか?」のテーマから始めましょうか。
私の会社ではまだまだ通常業務での AI フル活用はできていないと感じるのですが、お三方はいかがでしょうか?

柴山(博報堂) - 博報堂では業務にかなり AI を組み込んでいます。
検索連動型広告ってすごく量が多いじゃないですか。ビッグワードやミドルワードに対してそれぞれ広告を入れる。AI なしには運用できないですね。
やっぱり人間が書いた方が情緒に溢れてるんですけど、クリック数が多いキャッチコピーはAIの方が良く知っているんです。
カスタマージャーニーやペルソナも AI が企画しています。社内では年間 2000 ~ 3000 ペルソナが生み出されています。欠かせない存在ですね。

小山 - では、業務効率もかなり上がっているんですね?

柴山 - そうですね。暇になるわけではありませんが、ペルソナを作る際に、資料をみながら考える時間がかなり減りました。

小山 - ありがとうございます。山田さん(アドウェイズ)はメディア事業も行われていますが、その点いかがですか?

山田(アドウェイズ)- まだ横断した組織を作れておらず、AI のフル活用はできていないですね。
それぞれの部署で AI は使用していて、ぺルソナ作りやブランディングには使用しています。業務の効率化、標準化は進みましたが、AI によって新たな価値が生まれるところまでには至っていません。現在は各部門の AI が得意な人を集めて、中央集権的に仕組みを作ろうとしています。

小山 - ありがとうございます。山内さん(ID Cruise)は AI 開発を行っているので、やはり業務でも AI を活用されているんですか?

山内(ID Cruise)- そうですね、コードを書く作業は ChatGPT を活用しています。エンジニアの業務削減にはなっていますが、活用できるかどうかはアイデア次第ですね。


トピック2 : AI 時代の広告代理店の価値

小山 - これから AI に強い代理店が必要になっていったり、効率化により1人で代理店が経営できる世界になるかもしれません。またデータの質も重視されるようになると思います。数年後まで見た時、代理店は何を求められるのでしょうか?

山田 - 運用型広告はAIにとってかわられ、販売代理店などはしんどくなるのではないかと感じています。
顧客のマーケットをどれだけ広げられるかが伸びるかどうかの分岐点なので、そこにどれだけ AI を活用できるかが勝負です。従来の広告代理店の、人数に頼った運営をできるだけ早く脱却しなくてはいけません。

小山 - なるほど。柴山さんはどうですか?

柴山 - AI はマーケターというよりオペレーターですよね。代理店の価値はマーケターを増やすことだと考えています。
マーケターの教育は人間がやらなければいけないことで、大きなコストがかかる。その質を担保するのが代理店の役割になると思います。
また、新しいメディアを横断的に運用、情報収集することは代理店の仕事ですね。
これからの AI は集合知が加速するだろうことに注目が必要です。

小山 - 難しいところですよね。データが少ない代理店はゲームや EC など専門分野に特化するしかなくなるとは思いつつ、クライアントの要望を見極めることも重要ですね。
山内さんは開発者として問い合わせが多く来ると思いますが、どういった要望が多いのですか?

山内 - そうですね、広告運用だけでなく、会社やクライアントを巻き込み売り上げを上げるための商流などをふまえて、売り上げ向上の手伝いを求められるようになりましたね。

トピック3 : 広告主側のメリット、ニーズ

小山 - 最近は「生成 AI で楽ができるのは代理店だけ」という意見を聞くことがあり、クライアントにが生成 AI でどのような利益を得られるのか説明が必要なシーンがあります。皆さんは業務に AI を使用することを顧客にどう説明していますか。

山田 - 私は、AI がどこでどう使われているかは説明する必要がないと思っています。商品自体の価値が大切かと。
ただ、「このデータは AI が分析しました」のように説得力をアピールすれば、気難しいお客さんの説得材料として有用ですね。

トピック4 : AI 活性化による脅威

小山 - Google が生成 AI を活用、制作しているなど、生成 AI によって代理店の仕事が脅かされる懸念があるのではないかと思います。皆さんは AI 活性化による脅威をどう捉えていますか?

柴山 - ほとんどないんじゃないですかね。Google は広告のことを良く知っていますが、OpenAI は「いい広告」のデータを入手できない。
僕は彼らのことをパートナーとして考えています。技術や自社の情報を組み合わせて新たな機会をつくれそうです。

小山 - ありがとうございます。山田さんいかがですか?

山田 - 広告プラットフォームはセルサイドなので、どう売るかという視点で AI を作ってきます。でも代理店はバイサイドなので、プラットフォームを横断してどう買うかという目線でものをつくります。なので全く違うものであることは生成 AI が活性化してもかわらないと思います。
しかし少し前まで AI は使わなくても良かったのですが、今はもう「やらなくてはいけないもの」になりました。波に乗らないことが大きな脅威ですね。


トピック5 : AI でのマネタイズ

小山 - 自分は AI 単体でのマネタイズは難しいと思っていて、価値提供の仕方が大切だと思っています。皆様事例や考え方はありますか?

柴山 - おっしゃる通り、 AI ツール単体で売るのは超劣等種なんですよね。OpenAI のおかげで安く全員キャッチアップできるので、ツール紹介は代理店としてはありえないです。
しかし、ツールを使ったうえでどのような判断をするか、何を選択するか、AB テストのようなものはマネタイズできると思います。

小山 - ありがとうございます。山内さんは開発したものを売っている立場からみていかがですか?

山内 - AIツールの需要はありますね。また、依頼時に手数料の一部でバナーを制作するといった悪い慣習をなくしたいです。まだ課題が残りますね。

小山 - ありがとうございます。アドウェイズさんは今後のマネタイズ戦略などありますか?

山田 - 先ほども触れましたが、現在代理店用の内部システムを開発中で、プラットフォームの提供などを進めたいです。中身の一部が AI になるという形で価値を提供したいですね。

小山 - ありがとうございました。まだまだお話したいところではありますが、時間が来てしまったので、今回のセッションは終了させていただきます。ありがとうございました。

(拍手)


取材後の AICU media の感想

皆さんの意見が、「AI 技術自体ではなく、それをどう活用するかが価値で、マネタイズすべき箇所」というところで一致していたことが印象深かったです。すごい AI 技術を「すごい」で終わりにせず、セルサイド、バイサイドでみて、何に使用すると価値が生じるかを考え、売ることが AI 時代のマネタイズだと感じました。


引き続き2日目の講演のレポートを行っていきます!

Day2 最初の講演はこちら。


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