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Entyに見る、パトロン系サービス定期見直しの必要性

Entyそろそろヤバそう(n度目)。
ファンからの応援をドブに捨てないためにも、パトロン系サービスは適宜見直しましょうね、という話です。

Entyとは

☑︎ ファンがクリエイターに支援できる月額制投げ銭サービス
☑︎ 所謂、パトロンサービス

海外のクリエイター支援サイトとして有名なPatreonを参考にした、月額制投げ銭サービスです。

クラウドファンディングやパトロンサービス黎明期に出来たサイトで、数多くのクリエイターが登録していました。

2020年11月現在、未払いで騒動になっている

☑︎ 過去にも未払い騒動があった
☑︎ クリエイターが他サービスへ誘導中

発端はこのツイート。

資金繰りが調整できなくてクリエイターに支払いできないってどういう事?とめっちゃ騒ぎに。

それに気づいて自身の振り込みを確認した作家さんの間で次々と未払いが発覚。
自身のファンへ、支援停止のお願いと合わせて、他パトロン系サービスへ移行を誘導しているようです。

騒ぎになっているにも関わらず、運営にお知らせにはありません(2020/11/13時点)。

そもそも、Entyは手数料で運営している訳だから、手数料以外のクリエイターに渡すお金が払い出せないっておかしいですよね。

しかも、そもそも公式サイトにも気になる点が続々と出てきています。
複数回運営会社が変わった為か、リンクを押したものの繋がらない企業ページとか…。

公式Twitterのつぶやきは8月で止まっています。

2020年11月13日〜14日にかけて説明会が行われ、メディア取材も入ったようなので、詳細情報が待たれます。

2020年11月16日、公式からお知らせが出ました。

いつもEntyをご利用いただき誠にありがとうございます。
Entyサポートデスクからのお知らせです。

現在、出金のご申請頂いていたクリエイター様への報酬支払い遅延が発生しております。

この度は、ご迷惑をおかけしております。大変申し訳ございません。

現在、対象クリエイターの皆様にはお支払いに関して案内を送付し対応中でございます。

ご支援頂頂きました支援者及びファンの皆様からお預かりしている支援金に関しましては責任もってクリエイターの方へお届けいたします。

またこれからもEntyはサービスを継続し、クリエイターの皆様方の創作活動を支援させて頂きます。

どうやら、今後も頑張って運営していくようですが…。

以前からサービス改悪・未払いなどで問題になっていた

☑︎ 独特な仕様が多い
☑︎ 退会が難しい
☑︎ 決済方法を変更する際にバグが頻出
☑︎ 過去にも未払い騒動多数

Entyの独特な謎仕様

「支援者が1人でもいると、サポートデスクに連絡しなければ退会できない」
支援者が1人でもいると、画面からは退会できないってなんですかね…クリエイターが持ち逃げするのを防止するため…?

しかも「クリエイターが退会してもページが残ってしまうことがある」って、バグなのでは…?

2017年5月、振り込みが遅い問題

振り込みが遅い、問い合わせも返事がなかったりする、と言った運営の不透明さに炎上騒ぎが起きたようです。

2017年6月、児童に見えるイラストを非公開措置

Entyに投稿した作品が非公開になったり、投稿しようとしても下書き状態のままになったりしたようです。
児童に見える絵柄だと、成人向け問わず処理されたようで、かなりクリエイター側からに不信感が高まったようです。
まあ、クレジットカード決済はサービスにとってライフラインなので圧力に屈するのもわかりますが、とはいえ規約に載っていないにも関わらず、忖度して勝手に処理する(しかも基準は曖昧)なんて反発されてもしょうがないと思います。
2019年に一応、投稿ガイドラインができたようですが。

2018年1月、投稿数が不足すると出金できない問題

2018年1月に放置していたEntyに振込申請を出そうとしたが「支援期間に対して投稿数が不足している」と言ったメッセージが表示され、そもそも振込申請が行えない状態になったそうです。
上のような制約は規約になかったが、一方で規約には「1年以上申請がなかった場合には申請権利を放棄したとみなす」とあり、繁忙期も重なった作者の方は結局なにも受け取ることができなかったそうです。

6. ファンクラブ開設者の開設したファンクラブについて最初のファンクラブ会費が発生した時点から1年間以上当該ファンクラブ開設者より支払申請が行われなかった場合(第4項の規定により支払申請を行えない場合を含みます。以下本項において同じ。)、又は当社からファンクラブ開設者に対する直前の支払対象金額の振込時点から1年間以上支払申請をが行われなかった場合、当社はファンクラブ開設者が当社に対する支払対象金額の請求権を放棄したとみなすことができるものとします。

1年を過ぎると権利放棄〜はココですね。

まあ、金銭を払っているユーザーからしてみれば、放置する事で詐欺なのではないか?という疑念を抱かせたりトラブルになりやすくなるので、運営側が規制したくなる気持ちもわかりますが…。

また、支援は毎月発生するので、最低でも基本的に支援期間分(月数分)の投稿作成が必要となります。支援者とクリエイターのサービス相違によるトラブルを未然に防ぐためにこのようになっております。ご理解いただけますと幸いです。

本業が忙しいなら忙しいで、近況報告ぐらいは作っておくのも、対顧客戦略としては必要な気がします。

2018年2月、支援中の決済カードが変更できない問題

うーん、どう考えても不便ですし…月額課金制コンテンツなら、登録されたカード情報で決済するだけなので、どこで変更してもいい筈なんですけど…困惑しかありません。

2018年6月、決済履歴が更新されない問題

8,000円がどこに消えたか分からないって…?怖すぎます。

2018年8月に決済方式を変更

旧決済方式は「クレジットカード、銀行振込、PayPal、楽天Edy」があったようですが、新決済方式は「クレジットカードを登録してEntyポイントなるモノをチャージして、ポイントで支援する」らしいです。
まあ、(漫画アプリ等で)なくはないモデルだと思いますが、突然の通達なのに移行期間が2週間という短さや、旧決済方式の手数料の高さに戸惑う人が続出。
しかも、「移行ボタンが出てこない」とか「ポイントは買えたが支援停止なってしまった」とか「移行したら二重課金状態になった」「移行したら退会扱いになった」って、めちゃくちゃバグの宝庫じゃないですか。

2018年8月時点の運営がガバガバだった説

498×200で99,600円ですし、それが20,000万円って全然合ってないですよね?説明を求めるのも当然ですし、運営会社側で金額が勝手に変えられるなんて信用出来ませんから、運営会社が変わってしまうのも仕方ないでしょう…。

2018年8月、クレジットカード手数料上乗せで協会規約違反疑惑

「クレジットカード決済時に手数料が上乗せされると規約違反」っていうのはこれですね。

クレジットカードの手数料は店舗側が負担しています。
 基本的に、クレジットカードの利用で消費者が支払う手数料はありません。
クレジットカード決済を導入している店舗は、売り上げの一部を手数料としてカード会社に支払っています。加盟店から受け取る手数料がカード会社の利益です。
加盟店の手数料上乗せは、カード会社によって禁止されているケースがほとんどです。多くの場合、カード会社の加盟店規約に違反します。

仮に分割払いなどで手数料があったとしても、それはカード会社から消費者に請求されるもので、決済時に加盟店から要求するものではありません。

なお、旧決済方式(クレジットカード決済)でのお支払いを継続されている場合、毎月の支援金額に対するシステム利用料3.6%に加え、旧決済方式への対応手数料として100円が加算されます。お早めに決済方式の新方式(Entyポイント方式)に切り替えていただけますようお勧めいたします。

旧決済方法ではクレジットカードの場合、3.6%の手数料上乗せがあり、結構怪しいです。
今は旧決済方法を選択出来ないはずなので、解決した…はず?

2018年12月、未払い問題

支援金額が4分の1ってかなりひどいですよね。
似たような報告が多数ありました。

正確な支援者数や支援金額が分からず、振り込み金額も少ないなんて、一体なにを信じたらいいのでしょう。

2019年1月、引き続き支援金額と支援者数が一致しない問題

未払い問題もそうですが、長期にわたって支援者と支援額が一致しない問題を解決できず、他サービスに移行する作家さんも。

ちなみに該当のバグは2019年2月に修正されたようです。

2018年12月より段階的に実施いたしました支援金表示に関する不具合の修正は、2019年2月15日をもちまして、運営にて確認できているすべての改修を完了いたしました。


いや、正直、不祥事起こしすぎて、2020年になってもまだここを利用していたクリエイターさんに対して生ぬるい目を向けてしまう人が多そうです。

それにしても運営会社変わりすぎ…

2015年5月 株式会社onetap Entyサービス開始

2015年に設立され、コーポレートサイトもない会社だったようです。

運営会社が不透明
Entyの運営会社である株式会社onetapは2015年に設立された新しい会社です。
事業所の住所はEast Venturesというベンチャーキャピタルが貸し出しているレンタルオフィスの一角であり、 East Venturesの支援を受けて創立者の大学在学中または卒業後に新興した会社だと思われます。資本金もかなり安いです。
株式会社onetapとしてのコーポレートサイトはないようで、Entyの特商法に関する表記の問い合わせ先がGmail 運営の人が見たのか修正されました というのも使う側としては不安がよぎります。
私が最もonetapに不信感を抱くのが、一度プロジェクトに出資すると出資額の変更や取り止めを行うために運営にメールを送る必要がある点です。
それぐらいサービス上でできるようにしろよ!と思うのですが、これだと意図的に休眠会員を狙っているようにしか見えません。
以上が個人的にEntyがマズいと思う理由です。 私もクリエイターの方々の収入源が増えることには大賛成なのですが、 今のEntyはリスクが放置されていると思っています。 作家さんの中は「みんなが使ってるから大丈夫そう」という認識で利用されている方もいらっしゃるかと思いますが、改めて考えてみるのも良いと思います。

加えて、資金移動業者に登録されておらず、資金決済法に違反するのではないか、と言った危惧もあったようです。

知らぬ間に資金決済法(資金決済に関する法律)違反の片棒を担いでいるかもしれない
クラウドファンディングのプロジェクトは出資者が受け取れる対価によって3つの種類に分類されます。
出資者が一切の対価を受け取らない寄付型、
出資者が何らかの物品やサービスを受け取ることができる購入型、
出資者が株式などを購入し出資額に応じて事業の利益が出資者へ分配される投資型です。
Entyにおいては寄付型または購入型のどちらかだと思います。
問題なのは寄付型のプロジェクトで、日本では資金決済法によって非商用での個人間送金が禁止されています。
Entyにおいては「支援していただけるとお返しはできませんが、作者の電気代が払えます。」のような対価のないものです。
例外として仲介業者が資金移動業者として金融庁に登録されているならば、100万円以下の少額送金については個人間送金が認められています。
身近な個人間送金としてLINE Payがありますが、あれはLINEが資金移動業者として登録されているから実現しているものです。
私が調べた限りではEntyの運営会社である株式会社onetapは資金移動業者として登録されていないようです。
根拠: 金融庁 資金移動業者の一覧
ド素人の法解釈なので本当に違反しているかどうかは分かりませんし、 直ちに株式会社onetapやEntyに出店している作家さんが逮捕!なんてことはないかと思いますが、 知らぬ間に資金決済法に違反している、または新興ベンチャーの株式会社onetapがこの事実を把握せず対策をしていない可能性があります。

ちなみに現在はコーポレートサイトがあります。

今はセキュリティ対策サービスをやっているらしい…?

私たち株式会社onetapは、「Locked」という不正ログイン検知のSaasを開発しています。
「すべての企業が手頃で簡単に不正ログインを防げる」ことをミッションに掲げ、2019年5月に開発がスタートしました。

とはいえ、Entyの決済周りで不具合バンバン残したまま売り払ったこと(※後述)を考えると、これもどうなんですかね…信用…できるのか…?

2018年9月1日 株式会社onetap → 株式会社ユービジョン

2018年9月1日より、クリエイターが誰でも簡単に支援者を募集できるサービス「Enty」の運営会社が、株式会社ユービジョンに変更となりましたのでお知らせ致します。

この会社代表取締役の福田さんって、2018/8/2に発行された本の著者ですよね。

そんなユービジョンのサービス内容はこちら。

WEBシステム開発
顧客管理システムの開発、ポータルサイト、会員制サイトの開発

一応、開発なども行なっているようで、株式会社onetap時代からあった不具合の調査・改修は行ったようです。

前運営である株式会社onetap(代表:武田 義基)からの運営移管後、前運営にて実施した「Entyポイント」の実装時点で不具合を内包したままの状態であったことが、システムログやお客様対応履歴等を根拠として、事象発生を認識していながら修正を実施していなかったことを確認しております。

不具合の発生および内容について申し送りがない状態で現運営企業である株式会社ユービジョンへ運営移管が行われたため、現運営にて2018年9月下旬より事象調査・改修作業を実施し、2019年2月15日の改修をもちまして改修を完了いたしました。

2019年1月30日 株式会社ユービジョン → 株式会社Enty

クリエイターの活動を支援するポータル・コミュニティサイト「Enty(エンティ)」は、2019年1月30日より、株式会社ユービジョン(代表取締役:福田拓哉)から、サイト運営のために立ち上げたEnty株式会社(代表取締役:倉橋孝則)へと運営会社の移管準備を開始、6月1日よりEnty株式会社単独で運営を開始いたしました。
2019年秋を目処にサイトの全面リニューアルを実施し、よりユーザー/クリエイター双方が使いやすいサービスへと移行いたします。

一年立たず運営会社が変わっているのもすごい。
バグが酷く割に合わなかったんでしょうか。

2019年11月 Enty株式会社代表者 倉橋さんが新生Enty(joy‘n)を発表

かねており告知しておりました新生Entyについてですが、この度Enty株式会社(本社:東京都渋谷区、代表:倉橋孝則)およびjoy’n株式会社(本社:東京都渋谷区、代表:同上)の2つの別会社となり、2つの別サービスとなります。

Enty株式会社の旧代表者だった倉橋さんが新会社を設立して、Entyの姉妹サービスを発表しました。

Entyと姉妹サービス「joy‘n」の違いはなんでしょうか。

Entyは幅広い表現が認められたサービスとして
今夜のおかずから、翌朝の希望まで、表現の自由に挑戦しつづけます。

一方でjoy'nは個人インフルエンサー・企業とつながりながら
可能性を追求したい個性あるクリエイターたちを、すべて迎え入れます。
盛大に沸く、新たなクリエイティブ体験に挑戦しつづけます。

やや抽象的でよくわかりませんが、どちらかと言えばクリエイターと企業のマッチングサービスを主軸としたサービスを展開する予定…と言った感じでしょうか。

しかし、2020年11月現在もサービスはcoming soonのまま…。

なんだか頓挫しそうな気配を感じます。

2020年2月9日 Enty株式会社 代表取締役変更

Enty株式会社は、2月9日付で杉山 周重 が代表取締役社長CEOに就任しましたことを発表いたします

ところでお知らせの日付が2019年なのはミス…?

■就任日
2019年2月9日

Entyの具体的な問題点は何か

☑︎ 「資金移動業者」ではないので、保証がなく、「預り金」を回収できない
☑︎ 「預り金」の最長滞留期間1年という長さは「資金決済法」に抵触してるかも
☑︎ 「資金決済法」を逃れるために、「ポイント制」を導入しているかも知れない

そもそもパトロン系サービスを行うにあたって、どのような形態が一般的なんでしょうか。
とりあえず、パトロン系サービスは概ねクラウドファンディング事業の一形態だと思うので、事業形態ごとに抑える法律やポイントを調べてみました。
(Entyはクラウドファンディングじゃないって言ってるけど…)

クラウドファンディングの形態は主に3つ

☑︎ 投資型…プロジェクトで得た収益の一部を出資者に分配する
☑︎ 寄付型…見返りはない
☑︎ 購入型…商品・サービスを購入する

「投資型」は利益の分配があり、集めた資金でコンテンツを制作して販売した利益を分配する場合は特に気にするべき法律はありません。
しかし、集めた資金を使って、株式投資などの「有価証券投資」を行う場合には、金融商品取引法という法律に基づき「投資運用業の登録」が必要になります。
なので、プラットフォームも株式投資系を扱う場合は「金融商品取引法」を押さえておく必要があります。

「寄付型」の場合、金銭的な見返りはなく(金銭的価値があまり高くない返礼品や、お礼状ぐらいはあるかもしれませんが)、プラットフォームとして気にするべき法律はありません。
(資金がプラットフォームを経由する場合は、購入型と同じく「資金決済法」を押さえていないといけないかも)

「購入型」の場合、集まった資金で「開発した商品・サービス」を購入者にリターンします。
「出資者→プラットフォーム→実施者(開発者・クリエイター)」という金銭の流れが発生するため、仕組みによっては「資金決済法」という法律に基づき、プラットフォーム運営会社は「資金移動業の登録」が必要となる可能性があります。
ただし、「資金移動業の登録」はハードルが高く、決済代行サービスを立てるなどして資金移動業とみなされない運用をとる事で回避できる事もあります。

プラットフォーマーが資金移動業とみなされないための回避ポイント

☑︎ 決済代行サービスを利用する
☑︎ サービスの利用規約に「プラットフォームが買主から代金を受け取った時点で、売主・買主間の決済が完了する」ことを明示する
☑︎ 各種「送金」については、あくまでも取引に付随して行う
☑︎ 預り金については、短期間で決済が行われるような期間設定をする
☑︎ 買主からの預り金をプラットフォームに長く滞留させないこと
☑︎ エスクローサービス専用の銀行口座を設けること

特に「預り金を長く滞留させない」という点が重要みたいですね。

上記のポイントがEntyではどうだったのか見てみましょう

まず、Entyの利用規約ではファンクラブで「商品・またはサービスを販売できる」とあるので、「寄付型」「購入型」を前提としていると見て良さそうです。

第9条(ファンクラブ)
1. 登録ユーザーは、当社の定める方法で申込をすることにより、本サービスにおいてファンクラブを開設することができるものとします。本サービスにおいてファンクラブを開設した登録ユーザーを、以下「ファンクラブ開設者」といいます。
2. ファンクラブ開設者は、当社の定める方法により、ファンクラブに入会した登録ユーザーが支払うファンクラブの会費(以下「ファンクラブ会費」といいます。)の金額、ファンクラブに入会した登録ユーザーに対して提供されるファンクラブの特典(以下「会員特典」といいます。)の内容、契約の有効期間、有効期間が満了した場合の自動更新の有無、その他のファンクラブの内容を定めるものとします。
3. 登録ユーザーが当社の定める方法によりファンクラブ開設者の開設したファンクラブに入会することにより、当該登録ユーザーと当該ファンクラブ開設者との間に、前項の規定に基づきファンクラブ開設者により定められたファンクラブ会費、会員特典、有効期間、自動更新の有無その他の事項を内容とする契約(以下「ファンクラブ会員契約」といいます。)が成立するものとします。本項の規定によりファンクラブに入会した登録ユーザーを以下「ファンクラブ会員」といいます。
第10条(商品の販売)
1. ファンクラブ開設者は、本サービスにおいて、当社の定める方法により、ファンクラブ開設者の商品又はサービス(以下「本商品」といいます。)を、ファンクラブ会員その他当社の認める登録ユーザーに対して販売することができるものとします。
第11条(製造及び配送の委託)
1. ファンクラブ開設者は、前条の規定に基づき本商品を販売するにあたり、当社が別途定める本商品につき、当社が定める方法により申請をすることで、当社に対して本商品の製造及び配送の委託をすることができるものとします。
2. ファンクラブ開設者は、当社に対し、前項の規定に基づく本商品の製造及び配送の委託の対価として、ファンクラブ開設者が販売者に対して販売した本商品の代金(消費税相当額を含む。)に、当社ウェブサイトにおいて当社が別途定める割合を乗じた金額(以下「委託代金」といいます。)を支払うものとします。当社は、第12条第3項の規定に基づき購入者から代理受領した購入代金から、委託代金を差し引くことにより、委託代金の受領に代えることができるものとします。

(製造代行があるので、なんかpixivファクトリーみたいな事もしようとしてたのかな…実施に作った人はいるんだろうか…)

次に決済代行サービスを使用しているか。

☑︎ クレジットカード・楽天Edy・paypayについては決済代行
☑︎ 銀行振込については自社システムを使用

ヘルプセンターの記事では銀行振込のみ自社システムを使用しているらしいです。

また、銀行振込決済に関しては弊社システムを使用しておりますが、ご支援登録の際に発行される振込名義以外の情報は保管しておりません。

そして、利用規約に「代理受領者が購入者から購入代金を受領することにより、購入者による購入代金の支払債務は消滅する」とあるので、決済代行サービスが「資金移動業」を行いますよ〜と明示しています。

3. 当社は、ファンクラブ会費及び購入代金を代理受領する権限及びかかる受領業務を当社の指定する第三者(当社とあわせて、以下「代理受領者」といいます。)に再委託する権限を有するものとします。代理受領者がファンクラブ会員からファンクラブ会費を受領することにより、ファンクラブ会員によるファンクラブ会費の支払債務は消滅するものとします。また、代理受領者が購入者から購入代金を受領することにより、購入者による購入代金の支払債務は消滅するものとします。

サービスは月額課金なので、支払い申請があったらまとめて支払います、という感じ。

4. 当社は、ファンクラブ開設者から当社の定める方法による支払の申請(以下「支払申請」といいます。)があった場合には、毎月の1日から末日までの期間に前項の規定に基づき代理受領者が受領したファンクラブ会費及び購入代金の合計額(ファンクラブ開設者が第11条の規定に基づき本商品の製造及び配送の委託をしている場合には、同条第2項に基づき委託代金を差し引いた金額を意味します。以下「支払対象金額」といいます。)から次条に定める手数料を差し引いた金額を、ファンクラブ開設者から支払申請があり次第、銀行口座に対する振り込み、PayPalその他当社の指定する方法によりファンクラブ開設者に対して支払うものとします。当社は、ファンクラブ開設者から毎月15日までに支払申請があった場合には翌月末日までに、それ以降に支払申請があった場合には翌々月末日までに支払対象金額の振り込みを行います。

実際に商品・サービスを売ってるのはクリエイターだから、Entyはプラットフォームなので、返金義務はないよ〜と明示。

5. 会員登録の解除その他の理由により、当社とファンクラブ開設者との間の利用契約が終了した場合には、当社は、未払の支払対象金額をファンクラブ開設者に対して支払う義務を負わないものとします。

そして、預り金を長く滞留させないために、支払い申請を1年経つと失効させるから早めに申請して受け取ってねという旨の規約。


6. ファンクラブ開設者の開設したファンクラブについて最初のファンクラブ会費が発生した時点から1年間以上当該ファンクラブ開設者より支払申請が行われなかった場合(第4項の規定により支払申請を行えない場合を含みます。以下本項において同じ。)、又は当社からファンクラブ開設者に対する直前の支払対象金額の振込時点から1年間以上支払申請をが行われなかった場合、当社はファンクラブ開設者が当社に対する支払対象金額の請求権を放棄したとみなすことができるものとします。

ここだけ見るとまあ、よくありそうな規約の数々です。

しかし、「預り金の最大滞留期間が1年」というのは、以前メルカリでも騒がれていた通り、「資金移動業者」に該当する可能性が高いかもしれません。

「資金移動業者」であれば、会社の破産や経営不振に備え、滞留している資金の100%以上の金額をなんらかの手段で保全したうえで、自社資産と切り分けて管理するのが適切なはずです。
無登録事業者の場合は、このような資産保全義務がなく、なんの担保もないため、万が一の場合、預り金を引き出せなくなることが問題です。
(メルカリはこの対策のために、預かり期間を90日間に短縮して、90日後には自動的に振り込むようにし、売上金から直接商品を購入することを出来なくしました)

Entyも「資金移動業の登録」がありません。
メルカリでは出品者が売上金を使って別の出品者の商品を購入することが出来たため、売上金を一時滞留する事にメリットありましたが、Entyの場合そういった仕組みもなくメリットはありません。
通常であればメルカリ同様、一定期間後に振り込んで仕舞えばいいはずです。

一方で「資金決済法」に触れるのを恐れてか、出資者側から直接資金をプールするにではなく、一旦出資者にポイントを購入させ、そのポイントでクリエイターを支援する仕組みに変更しています。
(こうなってくると、サービスリリース当初は寄付型クラウドファンディング、そして購入型クラウドファンディングを経て、単なるコンテンツ提供サービスに事業モデルを鞍替えしている気がします)
Entyはクリエイターのコンテンツを見る権利を売っている事にして、本来の購入型クラウドファンディングで発生する預り金が(解釈として)発生しないようにしたのではないでしょうか。
(とはいえ、Enty側からコンテンツ対価としての売上金が「預り金」として残ってしまいそうですけど)

ここで疑問になるのは、「最低でも基本的に支援期間分(月数分)の投稿作成が必要」「不足していると振込申請が出来ない」という点です。
そもそも、毎月投稿する作品がファンクラブの特典であると明記されていなければ、(そして出資者もそれで満足していれば)作品数が足りていないクリエイターの振込申請を拒否できる理由がありませんよね?
とりあえず、お金は申請通りに送金して、クリエイターと出資者の当事者同士で揉めさせれば、プラットフォーム的には済むじゃないですか。

仮に毎月投稿しないのが不履行がだったとして、特定期間投稿がなければ警告の上ファンクラブ契約を解除できる規約もあります。

9. ファンクラブ開設者がファンクラブ会員契約に基づく債務を適切に履行しない場合、ファンクラブ会員がファンクラブ会費を支払わない場合、その他当社がファンクラブ会員契約の継続が適当でないと判断した場合には、当社はファンクラブ開設者とファンクラブ会員との間のファンクラブ会員契約を解除することができるものとします。

該当ファンクラブ全員を解除してしまえば、預り金は宙に浮きませんし、なんなら投稿されていない月数は把握できるので、出資者に返金出来るはずです。

まめなクリエイターであればこまめ投稿して振込申請を行うでしょうし、通常であれば、出資者が払った金額の中から手数料を差し引いた額を毎月振り込むだけです。
決済代行サービスを利用して右から左に流すだけなので、そう難しくはないはずです。
しかし、現状は「15日までの申請なら月末、15日以降は翌月末日に振り込む」とあるのに資金が用意できず、支払われていません。
ということは、本来手をつけてはいけないはずの「預り金」が「流用」されたと見て間違い無いのではないでしょうか…。

2020年11月14日22時から行われたEntyの説明に参加した方のツイート。

とはいえ「資金決済法」に違反している場合は「3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金」が課される事になるので、果たして資金調達なんてうまくいくんでしょうか。

こうなった背景はどうやら、「株式会社onetap→株式会社ユービジョン→株式会社Enty」と運営が変わった際に、「株式会社onetap→株式会社ユービジョン」と「株式会社ユービジョン→株式会社Enty」間の2箇所で預り金が引き継げなかったのが原因らしいです。

結局、「株式会社onetap」「株式会社ユービジョン」双方から「預り金」を継承できなかったのは手痛いですね。

 ファンから預かった金額の範囲内であれば、Enty社はクリエイターからの出金依頼に応じて支援金を支払えるはずだが、Enty社にはそもそも19年1月の設立以前の支援金が引き継がれていなかったという。

 杉山社長によると、福田氏からEnty社が事業を買い取った際、「Entyはもともとユービジョンの中でも赤字事業で、立場が低くて強く出られなかった。売買契約が甘く、システムしか承継できなかった」としている。

 その結果、預かっていない支援金をEnty社の社員が立て替えて支払うことになった。引き継がれていない支援金の総額や行き先は不明という。

資金のあてというのは「onetap・ユービジョン時代の預り金」ということでしょうか。
8月に和解済みとはいえ、今現在滞ってる方がいるらしいので説明を受けても安心できるクリエイターは少ないかもしれません。

それにしても、株式会社onetapから預り金も引き継げず、蓋を開ければシステムはバグだらけ、という状態の株式会社ユービジョンに同情しなくもないです。

でも、結局Enty株式会社に対して「預り金」を引き継がなかった時点で、ヤバいと思って会社を分離して事業を切り捨てにかかったとしか見えないんですよね。
(正直、Entyの運営会社、onetap・ユービジョン・Entyが三社三様に「預り金」を流用しちゃったとしか思えません)

さらに、2020年8月にEnty株式会社が株式会社ユービジョンから事業を買い取った時の支払いが滞り、差し押さえられたことでクリエイターに回す資金が減ってしまったという事らしいです。

 ユービジョンが倉橋氏にEntyを売却した際は、事業が安定化するまで支払いを猶予するという取り決めだった。しかし、Enty社は8月に福田氏とその弁護士から訴訟を起こされ、買い取り費用を早急に支払うよう求められたという。

 訴訟を受けて、Enty社は保有する法人口座への入金を3カ月分差し押さえられた。これによってEnty社はファンからの支援金を一時的に預かれない状態になった。

 その後、Enty社は資金を集めて福田氏に買い取り費用の支払いをおおむね終えたが、支援金の一部を支払いに充ててしまったという。

仕方がない…のかも知れませんが、やっぱり預り金が流用されたんですね。

説明会に参加された方の情報だと、今後12月から通常通り支払える見通しらしいです。

未払い分の支払いについては
契約書を締結すると共に社長名義で連帯保証人を付けることが告知されました。

未払いの支払い契約書の連帯保証人になる、ということは会社の資産がなくなっても社長の個人資産から徴収が出来る、という大変重いものになっています。

また12月からは通常通りの支払いに戻るとのことで、姿勢としては継続をしていくことを表明されていました。

未払いについては契約書を締結し、連帯保証人をつけるようです。
これについては、一旦納得された方もいるのでは。

ただ、「支払えない分は分割払いで最長3年かけて支払う」みたいな話もあるようで、本当にEntyが3年持つのか、連帯保証人がついてるとはいえ、本当に回収出来るのか、と疑問に思う方も多いかも知れません。

今回未払いのないクリエイターに限っていえば、今のところ(貯めていなければ)こまめに振込申請すれば大丈夫というものの、正直メルカリの事例を見るにシステム面での対策がない限り、これからも厳しいのではないでしょうか。

国内類似サービス

国内有名どころパトロンサービスは3つ
☑︎ ファンティア
☑︎ シエン
☑︎ ファンボックス

Entyだめじゃん()ってところはここまでにして、国内の類似サービスを見てみましょう。

ファンティア[Fantia]は、イラストレーター・漫画家・コスプレイヤー・ゲーム製作者・VTuberなど、各方面で活躍するクリエイターが、創作活動に必要な資金を獲得できるサービスです

ややコスプレイヤーさんが多めな印象です。

Ci-enはクリエイターに対して、金銭的な支援を送ることができる「クリエイター支援プラットフォーム」です。

Ci-enに登録しているクリエイターは、いくつかの「プラン」を設定しています。
プランには有料プランと無料プラン(フォロー)があり、それらのプランに登録することで、支援を行います。

支援に対するお礼として、プランに応じた限定特典を受け取ることができます。

DLsiteに登録されてるクリエイターさんが多い印象です。

pixivFANBOXは、クリエイターの創作活動を応援するためのファンコミュニティです。ファンがクリエイターを定期的に支援することにより、クリエイターがのびのびと創作活動を続け、新しいコンテンツ創出に挑戦できる場を提供します。 支援金のうち、決済代行会社に支払う決済手数料とFANBOXの運営や機能開発に使用するサービス利用料を除いた、90%がそのままクリエイターの元に届きます。 またクリエイターは、創作活動の内容や成果について、ブログ、イラスト、マンガ、写真、音声、動画など、さまざまな方法で支援者限定の投稿を行えます。

pixivやboothを利用されてるクリエイターさんが多い印象です。

主要なパトロン系サービスはこんな感じ。
noteも、ややパトロン系の側面がありますよね。

それぞれ還元率や手数料が違うので、日頃どんなプラットフォームで作品を売り出しているかも考慮して選ぶ必要性があります。
「パトロンサービス 比較」などで検索するとわかりやすい表で比較できます。

まとめ

☑︎ 誠実なパトロンサービスを選択しないと、ファンもクリエイターも損をする
☑︎ 課金に対して明確な見返りを供給しないと、クリエイターの信用がなくなる
☑︎ サービスを信用し過ぎず、「預り金」を長期間滞留させない

Enty、n度目の未払い騒動でしたが、ファンの方からすれば、自分の支払ったお金がちゃんとクリエイターに届くのか不安になってしまうと支援することは出来ません。
そしてクリエイターも折角のお金を受け取ることができませんから、ファンとクリエイターの双方が損をしてしまいます。

また、ファンとて無条件にクリエイターを応援する(金銭を払う)ことは出来ませんから、定期的お金が入ってくるからといって、サボってしまえば信用を落とすことになります。

受注した仕事でしっかりと生計が建てられるプロならともかく、本業の傍でプロを目指している副業クリエイターさんが放置をしてしまうと、悪評の実績だけが悪目立ちします。
飽き性で続かない、自分で立てた目標・締切を守れない場合はパトロンサービスを利用しないのも手です。

パトロンサービスに登録したから支援を受けられるのではなく、日頃に成果を見て、これからの成果に期待しているからこそ、ファンはクリエイターに課金しているのだ、という事を忘れないようにしていきたいですね。


参考記事

https://newstopics.jp/url/2245840


二重課金報告


振り込み金額が合わない報告



🌷使っていただいたお金は、本や、資材購入に当てられます🌹