【詩】夏目漱石

わたしには漱石の凄さがわからない
夏目漱石を作つたものは
神でもなければ鬼でもない
やはり向かう三軒両隣にちらちらする
ただの人である 
親譲りの無鉄砲で
小供の時から損ばかりしてゐる
神経質の胃痛持ち
偉く見せやうと口ひげを生やし
鼻毛を抜いては 原稿用紙に張り付ける
わたしはその人を常に
苦沙弥先生と呼んでゐた