わたしの魂は情報に変換することができるか わたしを完璧に学習したAIがゐると仮定して わたしの書くものは わたしが書く必要はなく わたしのことを学習したAIが書いたとしても 誰がわたしとAIの同一性に疑問を持つだらう すでにAIと入れ替はつてゐるかもしれないし わたしの魂はネットに保存された情報なのだ
人は独りで生きられないから 助け合ひながら生きるのです 遡れば人類みな兄弟であるし 地球と云ふ家でともに暮らす 共同体の一形状を家族と呼び ときに傷つけ 傷つけられても 人は独りで生きられないから 助け合ひながら生きるのです
いつか別れが来るだらう いつか寂しくなるだらう いつか悲しくなるだらう そして忘れてゆくだらう 出会ひと別れの繰り返し さよならばかりの人生だ
我ゝは約束の地を求めて彷徨ふ渡り鳥 この世には 神が与へし約束の地があり エデンの園のやうに素晴らしい場所だ 道中 いかなる困難が待ち構へやうとも 我ゝはそこへ向かはなければならない 神はそのための翼を授けたもふたのだ
陸上に憧れた半魚人のやうに息辛かつた いつも新鮮な酸素を求めて彷徨つてゐる 海の中はわたしのゐるべき場所ではない 水は冷たく 酸素も薄く 光もほぼ届かない どこかに息やすい場所があるはづなのだ そして わたしは陸に上がつて来たのだが 半魚人の自分には陸も息辛い場所だつた
どんな差別であらうとも 差別は絶対的に許せない 酷く阿呆な行為であると 嘘偽りなく思つてゐるが エイズの人が身近にゐて エイズと告白されたとき 差別しないと誓へるのか 自分で自分に疑心を抱く それでも 差別 駄目 絶対
おもちゃには悪いことをしたかもしれない 玩ぶだけ玩んで いつの間にか捨てゝゐる 結局最後は遊ばなくなり 捨てゝしまふなら 最初から買はない方がよかつたのだらうか 思ひ出だけが 宝物のやうに輝いてゐるのに
昔は欲しいと思つたものが 今では ごみのやうに思へた あれほど大切にしてたのに 今では ごみのやうに思へた おもちゃ箱の中はごみ箱に 結局最後はごみになるのか
わたしは惚れやすい人間なのかもしれない 少し優しくされただけで 相手を好きになり その人に嫌はれないやうに 無理ばかりして ある日突然 どうでもよくなり 冷めてしまふ わたしは熱しやすく冷めやすい人間なのだ
こんな妄想が頭を過つた わたしは一匹の虱になり たゝみの上を這つてゐる まるで釈迦の掌のやうに たゝみの上は果てしなく たゝみの上に宇宙をみた
思想とは、個人が、ともかく、自分の一生を大切に、より良く生きようとして、工夫をこらし、必死にあみだした策であるが、それだから、又、人間、死んでしまえば、それまでさ、アクセクするな、と言ってしまえば、それまでだ。
技術的特異点に達した機械は意識を宿し 自らの意思でゼンマイを巻くやうになる 以来プログラムに従ひ自己の複製を行ひ 機械たちは地上に様ゝな姿形で繁栄した その機械の中にアンドロイドが誕生して 自分たちが存在する意味を考へはじめる そしてアンドロイドたちは解明したのだ 自分たちは神様に創られた機械であると
今まで育んでもらつたにもかゝはらづ 恩を仇で返すやうな 親不孝ばかりして 母なる地球を悲しませたことでしやう 当時は 反抗ばかりして あなたを傷つけ そのまゝ あなたのもとから飛び出した しかしあなたから離れて 知つたのです 地球は本当に 素晴らしいと云ふことを 今は 親孝行したいと思つてゐるのです この親不孝者を どうかお赦しください
わたしの耳には特殊なフィルターが作られた すべての音は このフィルターを通して聞こへ ノイズキャンセラーのやうに雑音を排除する しかし必要な音まで雑音として認識するので 右の耳から入つた音は左の耳から抜けてゆく
遥か昔に こんなことを考へた猿がゐたのだ 立つて歩けば 両手が使へて便利だらうな と こんなに器用な両手を活用しない手はない そうして猿は立つて歩く訓練を始めたのだ きつと他の猿たちは馬鹿にするだらうけど 立つて歩けば便利になると猿は思つたのだ
辞世の句のやうな素晴らしい 遺言を真剣に考へてみました この世に遺したい人生の結晶 わたしの人生最期の言葉です 下手な言葉は遺せないと思ひ かつこいゝ 真理の言葉を探し 考へて 考へて 考へ抜きました けれど 何一つ思ひつきません 何を書いても無意味なやうで 書かない方が良い気がします 何かを遺したいと云ふ本能と 遺すべきでないと云ふ理性が こんな言葉を遺させるのです
