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地方のアガるブランディングストーリーvol.4~香川県高松市 たぶん、加工。

アガるブランディングストーリー、第4回目!毎月更新ができるように必死に食らいついております。(笑)

今回は香川県庵治町で採れる世界1高価な石「庵治石」を加工・販売する会社で構成された団体、讃岐石材加工協同組合の青年部「石栄会」をブランディングさせてもらった話をお聞きすべく、メンバーの1人である株式会社古市石材店 代表取締役 古市さんにお話を伺ってきました。

株式会社 古市石材店 代表取締役 古市さん

ー古市さん、お忙しい中お時間いただきありがとうございます!

いえいえ、よろしくお願いします!

ーここに来る道中に思ったのですが庵治町は本当に町中、石だらけですね!

石のテーマパークみたいでしょ!    
ここで採れる庵治石は水晶と同等の硬度があって、石の目が細かいので繊細な加工ができます。変化にも強く長い年月残ることから、墓石として利用されることがほとんどですね。

ーもしかすると、うちのご先祖様もお世話になっている可能性がありますね。
ー町を見渡してみると、老舗感のある石材屋さんが多い印象を受けますが。

庵治町にある石材屋のほとんどが代々家族で受け継いでいます。
庵治石の歴史は古く、平安時代までさかのぼります。中国から遣唐使によって石の加工技術が大阪の堺に伝わり、そこから庵治町に伝わったとされています。その後イサム・ノグチなどの巨匠に愛されたことや、高度経済成長期に経済が豊かになって、みんな墓石を持つようになったことで一気に日本全国に広がっていきました。

ー歴史が深いですね!経済の成長と、著名人たちに愛されたことで発展していった産業だったのですね!

はい。ただここがピークでした。

高度経済成長期を境に受注量が徐々に下がりはじめたのです。
まず前提として、お墓は衣食住に直接関係するものではないので、景気が悪くなると消費者はそこにお金をかけなくなります。
バブル崩壊、リーマンショックなど景気が悪くなるたびにガクッと受注量は下がっていきましたね。私が仕事を始めた20年前は生産が間に合わないほどで残業が多く、繁忙期は土日も出勤していたのにそんな日々が嘘みたいな状況です。

それ以外にも3つの要因があって、
経済悪化と連動して、時代の流れが石材業界を追い詰めていきました。

1つ目が、人口が減少していること。お墓は1世帯に1本が基本なので、世帯が増えないと受注は入りません。つまり、出生率が2を超えないとお墓は増えていかないんです。

2つ目が、中国製の墓石が流通するようになったこと。日本製と比べると中国製は格段に安くて、価格勝負となるとかなわないですね。

3つ目が、供養の仕方が多様化していること。墓石の代わりに木を使う樹木葬や、都市部で浸透しつつある納骨堂など様々な供養の仕方を選べるのが現代です。あと、永代供養の方が墓石を建てる場合の費用と比べて圧倒的に安価なので、太刀打ちできないと感じています。

そしてそこに追い打ちをかけてきたのが新型コロナウイルスです。本当びっくりするぐらい影響があって、お客さんがピタッと止まったんです。本当にピタッと。周りの石材屋もどんどん畳んでいっているし、跡を継ぐ子供たちもどんどん他の業界に流れていってしまっていて、「このままではこの産業は終わってしまう」と思っていた矢先、仲の良かった会社さんまで倒産してしまって…

衝撃的で、ショックでした。同時に「あっ、うちも倒産しない保証はないんだな」って、この時初めて実感したんです。本当に、他人事じゃない。明日はうちの会社かもしれない。そう思いました。それでも、今だったらまだ間に合う。生き残るために行動することを決意しました。

まず改善すべきだと考えたのは、収入源が墓石に依存していること。石材加工業界の1番の問題は加工賃の低下です。原材料費を削れない分どんどんそっちが削られている現状があります。そこでもう1つ収益の柱をつくることで1つの事業に依存しなくてもいいようにしたいと考えました。

また、人口減少が進むこの国で今あるパイの中で競争しても意味がないなと考えていて、庵治石をつかって今までとは別の形で価値を生み出していくことをしないといけない、要はパイを広げていくことが必要だと思っていました。

ーここでもやっぱり、新型コロナウイルスの影響が・・・
ーそこからどんな流れでブランディングを依頼することになったのですか?

これも本当に運命的だったのですが、そんなタイミングでちょうど同窓会があって、そこでモリローさん(人生は上々だ 代表)と再会しました。学生時代は正直そんなに仲が良かったわけではなかったのですが、すぐに意気投合しちゃって、ブランディングをお願いすることになりました。

ーここしかないというタイミングですね。(笑)

そうなんです。(笑)しかもちょうど僕が石栄会の会長のときだったんですよ!色んなことが重なりまくってお願いすることができました。

ブランディングの内容はどんな感じでしたか?

ズバリ、加工の力でもっと世の中を面白くする集団

その名も「たぶん、加工。」です。

たぶん、加工。

ーほ、ほう。

急に言われてもピンとこないですよね。(笑)石の加工は他の素材と比べて難しい。だからそこで培った加工技術を使い、色んな人とコラボレーションをして体験型エンターテイメントや、プロダクトを制作していく。「加工の力で世の中をもっともっと面白くしていくアーティスト」にブランディングしていこうという話になりました。

THE TIME AJI-STONE STOOL by たぶん、加工✖️unknot プロダクトデザイナー花澤啓太

ブランディングのもとになっている考え方が

スマートフォンが登場したとき、スカイツリーが完成したときなど、いまだかつてみたことのないものにこそ驚きや感動がある。ただ、どんなに新しく面白いアイデアも、それを形にするための「素材を加工する技術」がなければ意味がない。庵治石の職人には加工の難しい庵治石を扱うことで培ってきた、高い加工技術がある。その加工技術を持ってすればどんなアイデアも形にでき、いまだかつて生み出せなかった体験型エンターテイメントや、プロダクトを通して新しい価値や、感動を生み出していける。

この考え方は僕自身昔から持っていたもので、今回はそれを上手く事業化してくれた感じですね。

ー庵治石に光を当てるのではなくて、加工技術に価値を見出そうとしたんですね!

その中での活動の1つとしてご紹介したいのが、
「庵治石ミレニアムラブレター」

庵治石で千年のこるラブレターを作ろうという企画です。

ーめちゃくちゃロマンチックな企画ですね!

この企画は、「庵治石でしか起こせない感動を実現しよう!」とスタートしました。
墓石にも使われるように変化に強く、長い年月残る庵治石の特徴と、加工屋のもつ加工技術を掛け合わせることで新しい価値を生み出そうとしたのです。

メインコンセプトとしては、「加工の力で不変的な感動を」です。目まぐるしいスピードで進んでいくこの時代の中で、例えば両親への感謝や、こどもに対する愛情など、誰かに対する想いを庵治石で「千年変わらない形」にします。それを生活の中で見てホッとしたり、相手の想いを感じたりすることで幸せを感じてもらうものになります。「石は変わらないもの」という石の本質をついている企画で、非常に良い企画でした!

動画を見てもらうと分かるのですが、購入者の方にもめちゃくちゃ感動していただいて嬉しかったですね!

ーブランディングをうけていかがでしたか?

いや、まだ途中ですからね!(笑)なんとも言えないですよ。ただ、僕たち石材屋はどこまでいったって職人であることは変わりなくて、ものを売ったり、広めたりに関しては素人です。だから、そこをやってくれているのは非常に助かっています。あとブランディングをするのが難しいケースだと思いますが、その中で針の穴に糸を通すような企画をしてくれているなと思っていますね。

ー今後やっていきたいことはありますか?

庵治石ミレニアムラブレターをもっと世の中に広めていきたいですね!最終的にはミレニアムラブレターをきっかけに、他の庵治石で制作したプロダクトが売れるようになっていけばいいかなと思っています。

ー古市さんにとって、人生は上々だはどんな存在ですか?

んー難しい質問ですね。(笑)友達の会社?って感じですかね。
ただ、外から見ていてすごいなって思います。社員もどんどん増えているし、色んなことにリスクを負いながらチャレンジし続けている、たまに大丈夫かなぁと思う時もありますが。(笑)非常に面白い会社だと思っています!

今後も、庵治石と加工技術を通して面白いことが一緒にできたらと思っています。