見出し画像

異次元ランプ 毎週ショートショートnote

異次元ランプ    【410字くらい】

夕刻、日が傾いて夕焼けが教室に入ってくるころ、3年1組の教室は窓際からくっきり赤黒2つの三角形に、教室に対角線が引かれる時がある。
その赤い空気の只中に赤い影が現れ、その境目に一筋の道が現れる。そんな学校の怪談っぽい都市伝説が学校内に流布していた。
 
僕がそれに遭遇した時、その人影は暗い部分からしか見えなかった。その赤い人影から差し伸べられた手を取ると、その道に引き寄せられた。理由なんてわからない。でもそれは異次元に至る道だと思った。自分の姿はどんどん夕焼けと同じ赤い色になっていく。
振り返ると魂を抜かれたような顔をした自分の黒い影が汚れた黒い空気の中からじっとこちらを見ていた。
僕はその時にはもう既に放課後ランプを通過していたのだ。

そっちはよろしく。
僕はこれから異空間で生きていく。もう二度と振り返ることはしない。
 
そんな言葉を最後に、僕はどこかの世界に行ってしまった。残された私の残骸たる私はここがどんなところかよく知っている。
      了


たらはかに さま
よろしくお願いいたします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?