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夜舞桜  pre春弦サビ小説

スズムラさん、まくらさんに敬意をこめて

春弦サビ小説

『胸いっぱいのアイと情熱をアナタへ』スピンオフ The LAST
の更なるスピンオフ



Another Last of 『胸いっぱいのアイと情熱をアナタへ』
     【700字くらい】

「悟、行ったらダメ!」
ルナは中空に叫んでいた。
この瓦礫のどこかにいる悟が軍隊に戦闘を仕掛けようとしているヴィジョンが見えたからだった。
「死ぬよ」と力なく項垂れた。
 
目が覚めると、目の前に悟が立っていた。
「起きたか、ルナ。俺たちは囲まれてる。もう闘う以外にここから逃れる術はないんだ」
悟は紫に輝くオーラを全身から血飛沫のように放っていた。
今の悟なら・・・
そんな思いが過ぎる。

今の私たちには武器など意味を持たなかった。
悟は一歩一歩進んでいく。その姿は魔人にも神にも見えた。
 
構え!撃て!そんな怒号が聞こえたかと思うと、激しい銃声が耳を裂いた。
全身から涙が吹き出した。
 
悟は立っていた。
その右の腕を天に突き立て、それを一人の兵士に向けた。
兵士は中空に浮き上がり、真ん中から裂け、そして散り散りに砕けた。
 
地は銃を捨てて逃げ出す者。助けてくれ!と叫ぶ者。目を開いたまま気を失った者たちで満ちていた。
 
ここは戦場。
修羅の治める地。
 
悟はさらに前へ進む。
そしてさらに2、3人を消し去った。
 
ルナにはわかっていた。
このままじゃもたない。
お願いだから、もうやめて。
 
やがて鳴った数発の銃声に悟は地に伏した。
 
「悟ー!」
 
「ああ、ルナ。君を守れなかった。すまない」
ルナから溢れる涙が悟に雨のように降りかかった。
「ルナ。愛してる」
「そんな、そんなこと、ここで言わないで」
「ああ。生き延びてくれ」
「死んだらダメ」
季節を忘れたような桜吹雪が舞っている。
「桜。死ぬにはいい季節だって聞いている」
「今、あなたの心臓に触れたい」
 
溢れる桜の花びらが全てを覆い隠していた。
 
やがてルナは立ち上がった。
「ギヤー」
真っ白なオーラを纏ったもう一人の修羅を、もう誰も止めることはできなかった。
     了

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