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ゲーム広告への批判から探る「ファンを裏切らない」エンタメ広告のあり方

今回はツイッターで批判が集まってしまったゲームの広告をとりあげ、広告の好まれるユーモアについて分析します。「ファンを裏切らない」エンタメ広告のあり方とは何か、参考にしていただけると幸いです。

問題のデジタル広告

問題になったのはゲーム「メメントモリ」の広告。

ゲーム登場キャラクターへの「想像悪口」をネタにした広告

広告に批判が集まった原因

1.ゲームの世界観と合わない
2.自虐にならない
3.ゲームの魅力が伝わらない

1.ゲームの世界観と合わない

今回の広告は、ゲームの世界観とは相反する雰囲気になっています。
このミスマッチが、ファンに不快感を抱かせるきっかけになってしまいました。

そもそも、メメントモリはビジュアルだけでなく、キャラクター1人1人にキャラソンなる歌があるなど、音声や曲にもこだわったゲーム。

HPでも声優、歌を掲載

今回はツイッター上で目立たせることを優先してしまってのか、
「悪口」という強いワードや、
(現実の)金髪の男性が手をたたきながら幼稚なからかいをする表現を使っていました。


儚く美しいメメントモリの世界観への没入を楽しんでいたゲームユーザーにとって、
・ゲームの世界の外部から
・現実味を帯びた男性が
・小学生のような幼稚なやり方で
ゲームキャラを揶揄う広告は、
ゲームに没入していた人を現実に引き戻し、ゲームの雰囲気をぶち壊してしまいます。

このゲームの淡い美しさと広告のトンマナのミスマッチが、
ゲームユーザーの期待を裏切り、不快感を持たせてしまいました。

2.自虐にならない

今回、消費者から見て、広告の「想像悪口」が自虐になっていなかったことが、批判の原因となりました。

ユーモアはよく広告で使われますが、それがファンから許されるのは共感がある時。

今回はゲームのファンでは無さそうな男性が唐突にキャラの特徴を適当に取り上げて揶揄っているように見えてしまいました。そこにはゲームユーザーが思っていた「そうそう、そうなんだよね」「分かる―!」という共感がない。

例えば、「杖思ったより軽い」という”想像悪口”ですが、

キャラクターの持っているアイテムについて

ゲームの中でプレイヤーが、
実際にこの杖を持って重さを確認できるモメントがあるのか、
キャラクターが重そうにこの杖を持っているのか、
この広告からは分かりませんが、ツイッターでの反応を見ていてもファンは共感より不快感を抱いていたようです。

また「自家製チャーシュー味薄い」については

キャラ設定にはない情報を「想像悪口」として言う


ゲームのキャラ紹介から離れ、”想像悪口”と言っているように、想像で言っているだけなので、ゲームファンからの共感はなさそう、と推測できます。


3.ゲームの魅力が伝わらない

メメントモリの良さは水彩画やキャラが作り出す儚さ&世界観だったはず。それを伝えなかったことが、ゲームのファンを敵に回してしまった要因かと思います。
魅力が伝わらないので、広告としても効果を出しにくいです。

もしも、マリオのようなポップなゲームの広告だったなら、この表現でも楽しむ人も多かったかもしれません。

もしも、キャラクター自体が「いじり待ち」であるという共通認識があったのなら、この”想像悪口”も受け入れられたかもしれません。

広告制作背景を考える。作り手の意図は?

なぜ、このような広告になってしまったのでしょうか。
背景を考えると、広告を出したプラットフォームの作りに気を使った点が挙げられます。

Twitterなどでに出稿するデジタル広告では、何よりも、「止まってもらう事」が重要です。
具体的には、Twitterで他のツイートを見ていた消費者を、一目で留まらさせ、継続的に(動画最後まで)広告を見てもらうことが大切です。

そのために動画冒頭で目を引きやすい”想像悪口”という、ユーモアある過激な言葉を使ったのではないでしょうか。Youtubeのサムネのようなフォントの入れ方でもあり、コンテンツの見せ方としては、消費者を立ち止まらせる効果はあったと思われます。

批判しない広告とは?代案を考えました!

今回の広告は、ファンからすると共感できない”ただの悪口”になってしまっていました。
そこで、ゲームや漫画などのエンタメには欠かせない”共感”をテーマに、
メメントモリのファンに喜ばれるような、代案の広告を考えてみました。
(新案ではないため、元の広告の”想像悪口”として手をたたいて揶揄う表現は変えないものとします)

①からかいの内容をファンから募集したものに

ゲームプレイの際に悩んでしまう事や、ゲームキャラクターへの疑問&気になる事など、消費者の声を使うのが有効と思われます。その際、”想像悪口”というネガティブイメージのある言葉は使わない。

理由は、消費者に共感される内容は往々にして
・消費者が思っていた事
・あるあるネタ
を使う構図になってます。

実際に、アニメ 新テニスの王子様の広告は、
Twitterでテニプリファンから集めた各キャラクターへの思いを寄せ集めた広告になっています。

ファンから集めたメッセージを入れたテニスの王子様の広告

100歩譲って”想像悪口”として手をたたいて揶揄う表現でも、
消費者の声を聴くのであれば、それがからかいっぽい内容でも、
ユーモアとして受け入れられる可能性が高いです。

②ゲーム特徴を伝える

今回、からかいの内容が実際のゲーム設定と異なっていました。
「健康志向で薄味が好きそう」「杖思ったより軽い」という”想像”よりは、
ゲームがどう楽しいか、キャラの裏設定などを伝える方が不快感を起こさず、共感を得られる可能性が高いです。

例えば、ブランドの特徴を自虐的に描いた広告はこちら。

製品を飲んだらリラックスしてしまう姿をコミカルに自虐的に描いて消費者の共感を得ています。ブランドの利点をからかいの対象とすることで、ブランドの利点を面白く伝えています。

広告の良し悪しはどう評価するのか

炎上や批判を防ぐこと、伝えたいメッセージを適切に伝えるには、
社会背景や、ターゲットの傾向、感情など様々な要因を理解する必要があります。

外資系企業で多くの広告の評価、消費者インタビューの経験を活かし、
広告内容のチェックを行っております。
もし自社広告、発信内容に不安がある方はお役に立てますので、ご連絡くださいませ。


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