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IKEA広告炎上チェック!ジェンダーを気にしすぎ?不快感のない代案つき

広告の炎上チェック


広告自体の問題度:問題 中
結果:炎上
理由:女性の家庭内役割が表出

構造理解!炎上ポイント解説

1           女性だけが家事をするあるあるへの共感
2   結果的にステレオタイプ表現になってしまった
3   情緒訴求に合わないストーリー
4   製品の魅力を伝えられてない

1           女性だけが家事をするあるあるへの共感

まず、リビングでの妻/母と思われる女性の動きを見てみます。トレイテーブルを運び、家族がトレイ上のコップを持ったことを確認したら、ソファに座ることなく、背後に回ってTV視聴に参戦します。また、家族のTVへの視線を妨げないように動いていることも伺えます。
家庭内で毎日、このように家族の世話を期待されてしまう事にうんざりしていた女性にとっては、この広告に不快感を覚えるのは自然なことです。食事を運んだ後、ソファーにさえ座らないで次は何を持ってくるんだろう、と思ってしまうところまででセットです。

IKEAのデジタル広告 こぼれるシーンから、女性が食事を運ぶシーンまでの流れ

また、家庭内で同様の動きをしてしまっている女性からすると、自分の行動を客観的に見る機会になってしまい、自分への嫌悪感が感じられたかもしれません。

2   結果的にステレオタイプ表現になってしまった

更に、冒頭のコップに入った水がこぼれるシーンでは、こぼしたのが男性であることが窺がえ、女性とは対照的に夫/父と思われる男性はソファーから動くこと無く、くつろいでいます。
女性が家族の世話をする描写と組み合わさっ、男女が対照的に見えてしまった事もステレオタイプ的で不快感の要因になったと思われます。

結果、この広告は、家庭内で男性がくつろぐ&散らかし、女性が準備する&片付ける、というようなジェンダーロールの典型を見せてしまった事になります。
これは、日本の広告表現ガイドラインでも英国の広告表現ガイドラインでも禁止されている表現です。

ジェンダー広告ガイドライン

3   情緒訴求に合わないストーリー

現状、このイケアの広告は、商品の使い方のメリットに焦点を当てた機能訴求ではなく、
「この家が好き」というコピーから分かるように、製品に対する好意を持たせる情緒訴求になっています。この情緒訴求がどういうものかというと、製品きっかけで最終的に喚起できる気持ちです。


飲料なら「飲んだら明るい気持ちになる」、化粧品では「使うと大人な気分になる」、今回のIKEAの「いい毎日」「この家が好き」がこれに当たります。
情緒利点と広告ストーリーは直接的につながっているべきです。なぜならストーリーで消費者からの共感が得られなければ、その先の情緒利点にはつながらないからです。
今回の広告について、この「いい毎日」「この家が好き」という情緒利点に繋げるためには、「このテーブルがあるから時間に余裕が出来た/楽になった」のような流れだと良かったのですが、楽になる、など日常に変化がある事が分かりにくい。ただ女性が食事を運んでいるだけに見える。
これが、製品の情緒訴求を妨げたように思います。

床に置いたコップがこぼれる点については、床に置かなければいいだけですから、最後の情緒利点とは直接的に消費者の頭の中では繋がりにくいと思われます。

4   製品の魅力を伝えられてない
最後に、この製品自体の効率的な訴求になりにくい点が残念です。
クリエイティブとしては、Twitterなどのオンラインで見せることを考えると、冒頭のコップの水がこぼれるシーンは目を引くので、効果として、ネットを見ていた視聴者を立ち止まらせられます。この点では秀逸であると思われます。
しかしながら、広告ストーリーで見せた内容としては、
課題:「床に食べ物を置くと足で蹴ってこぼしちゃうよね」
 
解決:
「だからソファ横にトレイテーブルを置くといいよ、天板の取り外しが可能だよ」
という流れだと思うのですが、課題が共感しにくいです。
なぜなら、ソファがあるリビングで、床に食事を置くスタイルをとる日本人は少ないと考えられるからです。

IKEAの天板が取り外せるトレイテーブル

更に、製品の一番の特徴である「天板が取り外せるメリット」が、シーンの構成上の理由で、分かりやすく伝わってこないのはもったいなかったかもしれません。

不快感ゼロの代案!正しく製品の魅力を伝えるには?

不快感からの炎上予防:

今回、家庭内の女性と男性の役割が対照的になっていたため、それが不快感を引き起こしました。性別での役割分担の表現を消去すると不快感が拭えます。
代案としては、妻がトレイテーブルのトレイを取り外し運ぶ、夫がトレイを洗う、などの夫婦で一緒に家事する描写があるとよいと思います。

ビジネスターゲットが女性であるために、女性が家事をする表現を使いたい場合は、上記1、2で言及した女性の持つケアへの不満を解消する製品として「トレイテーブル」を訴求する事も効果的と考えます。例えば、取り外せるから洗うのが楽とか、楽だから子供との時間が増えるということが分かる描写にする、「この家が好き」というコピーに繋げるなどが挙げられます。その際は、男女の描写を対比にさせないように注意が必要です。

効果的な広告のために:

広告パフォーマンスの観点から、このような機能的な製品を訴求する広告では、製品魅力を分かりやすく伝える事に重点を当てるのも良いかもしれません。こちらの具体的な代案は今回は割愛します

広告の良し悪しはどう評価するのか

広告炎上や批判可能性を抑えること、メッセージを適切に伝えるには、
社会背景や、ターゲットの傾向、感情など様々な要因を理解する必要があります。

広告評価を行った経験を活かし、広告内容のチェックを行っております。
もし自社広告、発信内容に不安がある方はお役に立てますので、ご連絡ください↓


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