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炎上広告から倫理を学ぶ体験型研修のふり返り

広告の効果測定や広告倫理についての文献を読み漁った経験から、広告の研修を行いました。
色々な発見がありましたので、記録として振り返りを書きます。

学生イベントで参加者の属性が事前に分からなかったため、
下記を目的をもって、広告や社会学などに詳しくない人が誰でも気軽に参加できるように設計しました。

概要

日時 :2022年2月 学生イベントにて
ディスカッション参加者 :20代 15人程度広告研修の目的

目的

・商業的な存在である広告を社会的に見る
・人と意見を交わして自分の価値観やバイアスに気づく
・炎上広告の倫理的OKな代案を考える

内容とタイムスケジュール

10:30~ 導入
10:35~ 講師からの説明
①ビジネス視点:
 ・英国WPPグループの広告の評価ポイント
 ・広告クイズ
  目立つ広告で認知を取りやすい/取れない広告
11:00~
②社会視点:
 ・ジェンダー炎上した広告の分析
 ・作り手と受け手の認識
11:10~ 炎上広告についてのグループディスカッション
参加者5人のグループで1つの炎上広告について下記話し合う
 ・炎上理由
 ・広告に問題はあったか?炎上させる側の問題か?
 ・炎上しない代案を考える
11:45~ ディスカッションの内容共有&講師からの回答
回答として炎上広告チェック記事を共有(note https://note.com/advertising

コンテンツ別振り返り

②社会視点についてでは、1つ目の広告として、2015年のルミネの広告を使用しました。

ルミネ広告への意見出し

この広告では男尊女卑、女性に対する男性からの期待、コンプラ違反表現が主な炎上要因であり、広告に倫理問題があったとされる広告です。

ルミネ広告

この広告について、「炎上したのですが何が原因か分かりますか?」と問いかけました。
参加者からの回答としては、
男性の態度が悪いこと、外見で比較する表現への懸念などが挙がりました。「女性の広告であるのに男性が出すぎている、だから炎上した」という意見も出ました。

「炎上の要因」を聞いてしまったため、自分の案コンシャスバイアスに気づき倫理的問題を見つけられるかという点から少しそれてしまった点が反省点です。

私の聞き方に影響され、広告の問題点よりも、消費者に何が嫌われたかという視点で答える参加者が多かったように感じます。例えば、「女性向けの広告であるのに男性が出すぎている」という意見は”女性が好まない要素”をあげていると思われます。広告を通して倫理を学ぶことが目的だったので、次回以降、聞き方には注意を払う必要がある、と学びになりました。

また、やはり、広告表現の背景にある制作者の価値観や、ジェンダーの社会的構造に目を向けられる人は少なく、
女性2人を比べること、それが職場で行われてしまっている点、ハラスメント的な指摘を受けた女性側が「変わろう」と決意する点については、触れられませんでした。

私から提示したルミネの広告の問題点

ピンクの点はジェンダーに関わる点

参加者に、上記を説明すると、「なるほど」「気がつかなかった」などの声がありました。それぞれで気になるところは異なることを伝えた上で、グループディスカッションに入りました。

広告の説明


グループディスカッションでは下記3つの広告を扱いました。

カネボウ広告「生きるために、化粧をする」

男女を含むグループでは、「生きるため」を社会的に捉えた意見と哲学的に捉えた視点で議論が白熱していました。そこから定義を明確に伝える事の必要性、ルミネの広告と比較した点、化粧の意味やルッキズムの資本主義観点にまで言及していました。

炎上広告への参加者の様々な立場からの意見を伺い、私自身も、改めて価値観や感情について学ぶことができました。

この広告の是非や代案について見たい方は下記の記事を見て見てください。

カネボウ広告のディスカッショングループでは、広告が女性向けだったことで、ルミネの広告についての話し合いも行われていました。
広告中に”職場の華”の女性とそうではない女性を比較する表現があったことに関して、男性参加者から「職場の華の女性が”外見採用”であることを事前に消費者に伝えていれば、比較表現自体には問題はなかったのではないか?」という意見が出ました。
ジェンダー問題と捉えられがちな表現を、ルッキズムやそもそもの職種の違いである事に言及する、踏み込んだ洞察が出たことでディスカッションに深みが出ていました。
この男性の意見で出た、比較表現については、こちらでまとめています。


ファブリーズMEN「臭い」

炎上広告は女性軽視の表現が多く、どうしてもフェミニズム側に寄ってしまうのですが、男性軽視と捉えられる広告を扱った事で男性も広告についての意見を怖がらずに言えていたと思います。

日経新聞広告「やばいで乗り切れなくなってきた」

最近話題になった日経新聞の広告について考えるグループでは、広告自体に問題はあるのか、で悩んでいました。男女対比はたまたまのか、炎上後の企業の対応はどうだったか、などが論点となりました。

各炎上広告の代案を考える参加者

代案はコピーを変える、男女の写真を入れ替えるなど、実際に日経新聞が炎上後にしたとされる対策も上がりました。そこから、男女差別的な考えだけでなく、他の差別はなかったか、などじっくり考えていきました。

まとめ

広告を社会的に見て考える事で
広告の倫理問題点だけでなく、自分が気にしてしまう点と他者が気にする点の相違に気づく時間になったと感じています。

今回、学生の参加者が多かったのですが、実際に広告に携わる仕事をする人だったらどんな意見が出ただろう、企業は広報担当にこのような研修をやっているのだろうか、などと考えています。

炎上は消費者に不快さを感じさせてしまうから起こることなので、
あらゆる視点から広告を見て、企業としてのポリシーを持つことが大切なのではないかと思います。






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