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英国の炎上から学ぶ、事なかれ主義に代わる対応

広告炎上に見る事なかれ主義

「誰かにとってはそんなに気にならないような苦情」を受けて広告主が対応を急ぐ、というような対応が広告の炎上では度々見られます。

その背後には事なかれ主義や「お客様は神様」とするサービス精神が。
このような荒波立てぬ顧客に優しい企業態度は、
大変美しい日本の誇る精神ではあります。
しかし、日本でよく見る広告の炎上においては、
この精神に基づくと、
「ご不快な思いをさせて申し訳ありません」と
消費者の受け取り方に責任を置く「ご不快構文」を発表し広告取り下げの対応になってしまい、
何が悪かったのか、炎上原因が何なのか、顧みる事がありません。


結果、その場しのぎの対応になってしまっている気がします。
これは広告主の企業にも不利益で、
せっかく予算をかけて広告を作っては取り消しの繰り返し。

では、とりあえず消す&謝る対応の他に何ができるのでしょうか。
良い例がイギリスであったので、比較したいと思います。


日本の苦情を受けた広告と対応

広告内容


日本で数か月前、苦情を受けたのは、
キリンビール「淡麗グリーンラベル」の新テレビCM
GREEN JUKEBOX居(いる)篇

この広告には、鳥が籠から飛び立つシーンがあり、
愛鳥家から下記の苦情があがりました。

鳥のシーン


寄せられた苦情としては
・撮影に使われた鳥がかわいそう
・視聴者がまねてペットの鳥を放す可能性がある
・広告は無責任なシーンを含むべきでない

実際の苦情はツイッターでも話題になっていました。

対応

苦情に対して広告主は、鳥のシーンを切り取る編集を行い、広告を再放映したとのことです。

キリンビールは「本CM内の鳥かごから2羽のインコが飛び立つシーンについて、お客様から不適切である、というご意見が寄せられたため、該当箇所を修正いたしました。ご心配をおかけしたお客様には、深くお詫びいたします」とコメント

鳥が安全な状態で撮影されたのか、広告の影響に関する責任については触れないままの対応となりました。

イギリスの苦情を受けた広告と対応

さて、英国で同様に動物愛護の観点から苦情を受けた広告とその対応を紹介します。

広告内容


苦情を受けたのは
2017 年にのPhotobox Ltd の テレビ広告。
子供が犬の上に乗るシーンが含まれていました。

子供が犬の上に座るシーン

苦情

このシーンにイギリスの動物虐待防止協会と消費者から
212 件の苦情が集まりました。寄せられた苦情としては
・犬がかわいそう
・子供がシーンをまねする可能性がある
・広告は無責任なシーンを含むべきでない

対応:問題ないので取消さない
広告主は、下記を表明しました。

・動物愛護のルールに沿って撮影されたこと
 少年と犬は双方の安全を確保するために完全に別々に撮影され、少年が実際に犬の上に座る場面は一切なかったことを証明(獣医の監修)しました。

・広告掲載先の説明
子供向けの番組にはこの広告を表示しないようになっていることを説明しました。

また、第三者である広告審査機関が、
視聴者が広告のマネをして犬に乗ることはないだろう、と判断し、
広告の取り下げ命令を出しませんでした。

結果、広告費用を無駄にせず、消費者にも納得してもらえるような企業コミュニケーションになったようです。

英国で適切な対応ができる理由

広告規制機関の役割が広い


広告監査機関があり、市民からの苦情を受け付け、
内容、表現、広告の影響、掲載先の媒体の適正など、広告とその影響の良し悪しを審査します。
悪いと判断されれば、広告主に広告撤去を命じます。

日本でも、JARO(広告審査機関)が存在し、苦情の受付を行いますが、
審査対象は価格の表示や薬の効果の表示など誇大広告が中心で、
動物愛護やジェンダー表現、子供への影響など文化表象や倫理は対象となっていません。

広告規制ルールが明確

また、広告ルールが明確なので撤去指示を出しやすい事も要因になっています。例えば、
動物を広告に使う時のガイドライン
女性と男性の表現についてのガイドライン,
広告の子供への影響についてのガイドライン
ギャンブル・宝くじについての広告ガイドライン

あらかじめルールを明確にしておけば、そもそも広告が倫理に反するかどうかわかりやすいという事ですね。
ルールやガイドラインは学術的な文献を根拠に作られています。

もっと詳細知りたい方はこちら


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