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デジタルで変えたいもの、守りたいもの

こんにちは!アドビ未来デジタルラボです!

学生研究員プロジェクトは、始動から半年ほど経ち、最終発表に向けて佳境へとさしかかってきました。各チームそれぞれ、WEB調査やKOLインタビューを行い、自分たちの仮説の検証と提言への準備に取り掛かっています。

このnote記事は、各チームの研究や提言がどのように進捗しているかをまとめた3本目の記事となります。今回は、デジタルと伝統文化・地方創生チーム「チームアルティ」からのレポートです。

このチームの研究の経過を知りたい方は、こちらから記事をご覧いただけます。


1)デジタル化に潜む「声なき声」

前回のチームアルティの記事では、地方の人手不足をテーマに研究するという方針をお伝えしました。

私たちは、地方の課題を考えていく際に、常に「人手不足」という問題が付きまとっていると感じています。その人手不足という課題を根本から解決するために、各地方が人材を取り合うというのではなく、「デジタルで人手そのものを必要でなくす方法はないだろうか」と考えました。

その上で、人手不足が起きている領域では、デジタルを使うことに不安を覚えていたり、そもそもデジタルを活用できるということ自体を知らなかったり、そういった理由から人手不足を解決するためにデジタルを活用しきれていないのでは、という仮説を立てました。

それでは、なぜデジタル化できていないのか。そこには、実際に働く人たちの考えや気持ちがあるはずです。デジタル化を進めたい行政や企業が見落としてしまうかもしれない、そんな「声なき声」を拾い上げることが、私たちがやりたいことであり、ひいては地方創生や人手不足解消につながるのではないでしょうか。

2)宿泊業を対象に調査を実施

地方での人手不足を考える際に、私たちは宿泊業にテーマを絞りました。

宿泊業は、コロナ禍・インバウンド需要・高齢化による人材不足など、時代の流れに伴って構造変革を迫られている業界であり、デジタル化の話をする上でも親和性が高いと感じます。また、宿泊施設はいわば観光客に対する地方の顔であり、地方の魅力を発信する上での最前線になるため、行政としても力を入れたい分野でしょう。

何より重要なのは、おもてなしの精神や旅館の情緒など、宿泊業にとって不可欠な価値がデジタルでは代替が困難であるという点です。デジタル化の流れの中で、失ってはいけないもの、守っていきたいものを探し求める私たちにとって、宿泊業はテーマとして最適だと感じます。

私たちは、地方の宿泊業の人手不足の現状、デジタル化の現状、その現状についてどう感じているかを調べるために、2種類の調査を行いました。

1つは、地方で宿泊業に携わる人たちへのアンケート調査。
もう1つは、地方で宿泊業を営む経営者の方々へのインタビュー調査です。

詳しい調査結果については、最終報告にてお伝えできればと思います。ここでは、調査の概略をお話しできればと思います。

3)時代の流れの中で、失いたくないもの

アンケート調査では、主に観光業に携わっている人が何に困っているのか、デジタル化についてどんな取り組みをしているかに関する質問に回答いただきました。特に、デジタル化に期待することや、実際に行ったデジタル化の取り組みを聞くことで、デジタル化により何を解決したいか、その理想とのギャップはどこにあるのかを探ろうと考えたのです。回答者の年代、従事する組織の規模、決裁権があるかどうかなど、集まった回答は回答者の属性と照らし合わせて分析したいと思います。

インタビュー調査では、長崎県に伺い、4名の宿泊業の経営者の方々と意見交換をしました。リミテッドサービスホテル、フルサービスホテル、旅館系ホテルといった多種多様な宿泊施設を経営する方々から示唆に満ちたお話を聞き、宿泊業に関する理解が深まったと思います。

特に、宿泊客と直接関わり合うことによって、宿泊客それぞれの要望に気づき、応える。この、人と直接向き合うという部分が、宿泊業に携わる者としての腕の見せ所であり、やりがいであるというお話が印象的でした。私たち宿泊客側としても、ひとりひとりに向き合っておもてなしをしてくれるホテルに泊まりたいと思うし、働く側からしてもその矜持を奪われたくはないでしょう。

どんなホテルに泊まりたいか、どんなホテルで働きたいか。行政でもない企業でもない私たち学生が持つべき視点であり、デジタル化の取り組みを進める中で忘れてはいけない視点であると感じます。

また、デジタル化により浮いた時間で従業員には経験を積んでもらい、接客の腕を磨いてほしいという意見が出ました。デジタル化と向き合う上で、デジタルをあくまでツールとして受け入れる姿勢は大きなヒントとなると思います。この他にも、宿泊業の現状や実際のデジタル化の取り組みについて多くのお話を頂きました。先んじて行ったアンケート調査の結果と照らし合わせ、宿泊業とデジタルの未来について何が見えてくるか、最終報告に向けて掘り下げていきたいと思います。

4)最終報告に向けて〜デジタル化に必要な考え〜

宿泊業のプロとして譲れない矜持、それを尊重することが良い宿泊施設に泊まることにつながるし、職場として宿泊業が魅力的なものにもなります。その譲れない部分を大事にするデジタル化を進めていくべきです。

最終報告では、宿泊業においてデジタル化により失ってはいけないものを提示し、それを守りながら、どうデジタルと向き合えば良いかについて提案をできればと思っています。

その結果、宿泊業が、ひいては地方全体が、時代の変化の中で維持してきた価値や魅力を守り続けるとともに、デジタルにより新たに発展する、そんなワクワクする未来の一助になれればと思っています。


この記事の執筆者

浦田 晃河
東京大学 教養学部教養学科大学 超域文化科学分科 表象文化論コース 映画や演劇、文学や漫画をはじめとした「表象文化」というものを学んでおります。好奇心が旺盛で、ダイビングとかバンジージャンプなど色々なことに挑戦したいと思っています。

▼このチームの過去の研究レポートはこちらから


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