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奇跡の体験練習会 〜 自ら当事者となった少女たち

12月14日(火)朝から寒く冷たい雨。
横浜では初雪も観測されたこの日は、春から始まる中学生年代の女子クラブ・LINDA SMILES の第一回体験練習会を行う日でもありました。

しかし朝から降り続く雨⋯おい何でだよ!今日降るなんて聞いてなかったぞ!ずっと予報でも晴れマークだったのに。いくら雨男だといっても、よりによってこんな大事な日に雨なんて⋯(しかも極寒)と憂鬱な気分になりかけたけれど、予報では夕方にはやむというのでそれを信じて、車で横浜へ向かう。

世田谷から横浜へ、いつもと同じように環八から第三京浜へ。今日の練習会、どういう流れでやるべきか⋯あぁしたほうがいいか、いや、こうしたほうがいいのか⋯来てくれる選手が喜んで帰ってくれるためにどういう進行をしていこうか、いやそもそもこの雨は本当にやむのか!?そもそも練習会無事にやれんのか⋯!?とモヤモヤしながら、玉川ICから第三京浜に入った途端、、

雨が綺麗に上がり、横浜方面が眩く光っていた。

まるで今日から始まる新たな一歩を神様が祝福してくれているかのように、本当に本当に、綺麗に光っていた。

昔から続いていた「生粋の雨男」という汚名も、ここにきてようやく返上。今日から晴れ男を名乗ることにする。

とは言いつつ夜はかなり寒くなるだろうと恐れをなして、選手達に配るために「貼るカイロ」を途中で購入してから、いざ会場へ。

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今回の参加者は9名。本当は10名の申し込みがあったのだけど、その日に学校で足を痛めてしまった子がいたらしく、急遽不参加。

残念⋯次回またぜひ来てね。

参加者の中には、千葉から来てくれた子も。遠くから、、本当に有り難いです。

まるで知らない子もいれば、知り合いの指導者の方がご自身のチームに所属する女子選手を連れて来てくれたりも。本当に有り難い話。こういう縁を、本当に大事にしていきたいとつくづく思う。

また、僕の前所属チームで今もサッカーをしている子も来てくれた。彼女とは、昔から彼女のご一家まるごとお世話になっている。お姉ちゃんもお兄ちゃんも僕の教え子で、彼女が生まれる前からのお付き合い。

それが今でも、こうして僕の新たなチャレンジにご両親が理解を示してくれて、こうして参加しに来てくれる。本当に感謝しかない。こういう人の縁を、この歳になってしみじみ感じている。

こんな自分なんかにまだこうして繋がってくれている人達のために僕はこれから生きていこうと決めているし、この恩は、いつか見える形で必ず返したい。

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開始前のこと。ある6年生の子が、先に来ていた別のふたりの子達に話しかけていた。「こんにちは〜」「はじめまして」って。

彼女がこうして勇気を出して他の子に声をかけてくれたこの場面をきっかけに、次第に円は大きくなり、次々とコートに到着する新規参加者の子を皆が迎え入れるという、素晴らしい光景がはじまったのです。

こちらがまだ集合の合図をかける前に。
こちらが何か促したわけでもないのに。

その日初めて会う同士の小学生達が、大人に言われるまでもなく自分達で勝手に打ち解けはじめ、勝手に自己紹介をはじめ、そして「ゲームやっちゃおう」となったらしく、自分達で勝手にチーム分けをし、なんととうとう、勝手にゲームがはじまってしまった。

あの彼女が最初に話しかけた瞬間からゲームがはじまるまでの一部始終を僕はずっとそばで見ていたけれど、本当にびっくりした。

「体験練習会」という場で、みんな間違いなく緊張しているはずなのに。男子ならば人見知りモード全開で皆モジモジしちゃうのに。彼女のあの勇気ある行動をきっかけに、大人に何を言われるまでもなく、自分達で「体験練習会」をはじめてしまった少女達。

「こんな体験練習会、見たことない。前代未聞で最高すぎる」

まだ開始前なのに、早くも感慨に浸っていた僕でした。きっとこのクラブはうまくいく。そう確信した瞬間でもありました。

この子達がうちに入ってくれるなんて、まだ決まったわけでもなんでもないのだけれど。

寒い横浜の果て。寂れた埠頭のすぐそばで、奇跡の体験練習会がはじまった。
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軽くスタッフ陣の紹介をしてから、またすかさずゲーム、ゲーム、またゲーム。

「今日はゲームしかしない」と言ったら、手を叩いて喜んでた子もいたし。やっぱりみんなゲームが好きなんだなぁ。

彼女達のゲームを見ていると、ほぼ皆「ボールを呼ばない」ことに気づきました。

決して人見知りで遠慮してるからとかそういうことではきっとなく、ほぼ初めて会う同士なのに、味方同士でお互いのことをちゃんと見ながら、ボールが主役になるのではなく「人と人が繋がる」そんな感覚で、みんなゲームをしてるんです。
だから、人と人が繋がってるから
お互いでお互いを見合いながら、イメージを共有しながらやれてるから、そうなると「ヘイ!」なんてボールを呼ぶ必要がなくなるんですよね。
「だってちゃんと見えてるんだから」という世界線でやれてるから。

自分が指導をするチームではいつも次第にボールを呼ばなくなってきて、それを見て自分はいつもチームの成長度合いのバロメーターにもしているのだけれど、しつこいけれどこの日初めて会う同士の小学生達が、体験練習会というイレギュラーな異空間で、最初から繋がっちゃってる。

わかりやすく言えば、ちゃんと、フットボールになっていた。

これは、本当に驚きでした。そんな彼女達のゲームを見て、僕は再び感動。。

その後、クラブのスペシャルアドバイザーに就任してくれた黒崎優香選手をはじめとするスタッフ陣も混ざり、さらにゲームは続きます。さらに白熱、さらに彼女達は繋がっていく。ますます、フットボールになっていく。本当に最高でした。

皆のためにと買って行った貼るカイロは、とうとう最後まで出番がなかった。暑い!と言ってアウターを脱ぎ、半袖短パン姿になった子もいたくらい。それくらい暑かった。いや、間違いなく熱かった。

参加してくれたみんな、本当にありがとうございました。

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前回のnoteで、映画「リンダリンダリンダ」のことを書きました。

文化祭のステージを控えているのにボーカルが抜けてしまったガールズバンドに、ひょんなことから韓国からの留学生「ソンちゃん」が加入する物語。

最初はお客さん状態だった彼女。しかし⋯
文化祭当日、ある理由でバンド全員がステージの時間に遅れてしまい、さらにメンバーの一人が「ベース忘れた!」と。
「人に借りるからいいよ」という彼女に対し、大雨の中、ソンちゃんが真っ先にベースを取りに行くため走り出す、とても印象的なシーンがあります。

僕のnoteを読んだ関西の指導者仲間の方が、実は感想のメッセージをくれたんです。その方も、公開当時からこの映画のファンだったそうで。そのメッセージの中で、こんなことが書かれていました。

私は、ソンちゃんが雨の中、ベースを取りに帰るシーンが大好きです。
後から入ったメンバーが、当事者意識をもって走り出したシーンは「これだよねぇ」と思ってしまいます。

当事者意識。
あぁ、確かにそうだ。誘われて訳もわからずとりあえず入ったソンちゃんだったけど、いつのまにか自分もこのバンドの「当事者」になっていて、仲間のピンチに真っ先に走り出す。

このシーンを見て「当事者意識を持った瞬間」と読み取るこの方の感性が本当に素敵だし、言われるまでそこに気づけなかった自分の鈍感さに少し落ち込みました(笑)

当事者意識。なんて素敵な言葉だろう。

ソンちゃんの立場とは違うけれど、この日、寒い寒い横浜のある場所に集まってくれた彼女達は、来た瞬間から(ひょっとしたら来る前から)すでに当事者意識を持ってくれていたのかもしれません。

だからあの彼女は勇気を出して他の子に話しかけたのだろうし、それに応えて打ち解け、コミュニケーションを取り、自分達で勝手に「体験練習会」という名のゲームをはじめてしまった彼女達は、間違いなく全員、この当事者意識を持ってくれていたのだろうと思うのです。自分が楽しみ、自分が輝く場所として。

それが本当に形となって、来年の春にはまた同じチームメートとして再会できたら、この上ない最高のストーリーになるのだけれど。。

みんな、この日は本当にありがとう。長いコーチ人生を思い出してもなかなかないくらいの大きな感激を、僕は味わいました。
よかったら、仲間になってください。

この日来てくれた4名のスタッフ陣も、来られなかった他のスタッフ陣も。最高な仲間に出会えて今はとてもエキサイティング。

新しい最高な仲間達と出会って、一緒にクラブをはじめることができる。不思議な縁を感じるし、今、とても幸せを感じてる。自分が幸せな気分になるだけでなく、せっかく集まってくれたこの仲間達のことも、僕は幸せにしたい。

嘘偽りなく、今はそう思っているところです。

帰り、、黒崎優香そして「みんなのマネージャー」に就任する某M子のふたりを乗せた車の中。

この日初めて顔を合わせた同士なのに、同じ20代女子同士で話が弾みまくってた。そんな女子トークになかなか入れず、オタオタしながら運転する私⋯

これはこれでまた、幸せな時間だったのです(笑)

実はM子さんのことは彼女が高一の時から知ってて、月日がたって彼女が素敵な大人の女性になった今、こうして再会して今度は一緒に仕事ができるなんて。

これにもまた縁を感じるし、運も感じるし、本当に幸せなことだよなぁ。と、運転しながらひとりしみじみ。コーチ冥利に尽きますね。フットボールが繋いでくれた縁。大事にしたい。

とにかく!
はじまりました。LINDAの名を体現するような、美しく楽しく魅力的なチームを必ずつくります。


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