『ウィメンズマラソン』

坂井希久子さんの作品。坂井さんの作品を読むのは初めてだ。

女子マラソンでオリンピック出場権を獲得した岸峰子は、妊娠が発覚して代表を辞退して出産をする。峰子はブランクを乗り越えて、オリンピック出場を目指す。


女性であるために妊娠や出産と、スポーツ選手としての全盛期が重なってしまっているというのが難しい問題だと感じた。

勝負の世界に身を置くと、その競技を趣味として楽しめなくなるということに納得した。

全く関係ない人からもバッシングを受けるところが日本の良くないところだと感じた。


印象に残っている文

走るという行為は着地のとき、体重の三倍程度の衝撃が足にかかっているそうだ。つまり体重が軽いほど負担が減るわけである。一流のマラソン選手がみんな痩せているのは、そういう理由だ。

「おそらく人類は、進化を望んでいる。進化なき未来はねぇんだ。挑戦を諦めたときが、人類の終わるときだと俺は思う。陸上競技は人類の偉大な挑戦の一つだ。だからどんなときでも堂々と胸を張って走れ」

そもそもこの国の人たちは世界で活躍する同胞が好きだ。特にスポーツでは、身体的ポテンシャルがさほど高くはない日本人のコンプレックスが爆発する。世界に通用する才能が生まれると熱狂的に応援し、その活躍によって自分たちの地位まで向上したような錯覚に陥る。

「がむしゃらに仕事をすれば、『お前みたいな女が子供を産まないから日本が悪くなる』って非難される。結婚して妊娠すると『時期を考えろ』と怒られて、無事に産んで仕事に戻ろうとしたら責任あるポストにはもう他の人が就いているのよ。私のやってきたことってなんだったんだろうって、思っちゃうじゃない」

下り坂を走るコツは、体を後傾にしないこと。勾配にビビって体を反らすとせっかくの推進力が失われ、踵からの接地がブレーキになってしまう。勾配に対して垂直に立つイメージで、スピードに乗って下ってゆく。

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