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その名は、花 5月8日〜365日の香水

花が咲くことと気持ちの関係
5月に入って、365日の連載はミュゲ(muguet)~スズランやバラ(ROSE)のことが頻繁になった。
季節だからだ。
NOTEを書きながら、森の中で偶然見つけたスズランや、薔薇の木に間違いなく咲くバラの情景が脳内再生されて、気持ちが穏やかに、晴れやかにさえなって、心の棘が抜け落ちる気がした。
花、植物の力はすごい、そう実感した。

植物と人類の不思議な関係
いつから人は咲く花を美しいと思い、花の香りを尊いと思うようになったのだろう。
古代から香料植物は宗教儀式に用いられ神に捧げられた。
ネアンデルタール人は死者の埋葬に花を手向けた。

植物は、見方を変えたら、不気味な形、不可解な色、不可知のにおい、になっていたもしれない。
けれど、間違いなく人類は文明を持ち始めた時にはすでに、花を愛で香りを味わった。希少なものとして、祈り願いをかなえてもらう代償として神に捧げた。
当たり前のようで、不思議なこと。

香料植物と私たちの関係
宇宙人がやってきたとき、私たちと同じように彼らはスズランやバラやサクラを美しいと”感じる”のだろうか?
どういう経緯で、人類は花を美しいと〝感じ”はじめたのだろう。
考えられる一つに、香料植物はすべからく薬用植物であるということ。
傷の治癒、解熱、安眠、何らかの効果をその中に見出し、用いながら、その有用さを認識した後で、形の美しさ、香りの良さを評価するようになったのかもしれない。
(体に)いいものは、(そのものの価値も)良いもの、ということだったのかもしれない。

悪臭と私たちの関係
歴史学者のアラン・コルバンは、19世紀のパリの下水の悪臭は「その場所(環境)が人の健康によくないものだ」とした公衆衛生上の見解の出現によって生じた、というようなことを『においの歴史』の中で書いていたと記憶している。極論すれば、体に悪いと知ったとたんに「悪臭」と感じるようになったと。

在香と私たちの関係
これは私が持つ在香の概念に関連していると考えている。
在香とは、もともとずっとのその環境に当たり前のように自然に存在するにおい、のことを言っている。
(自分の家のにおいはわからないのに他人の家に行くとその家のにおいが気になるのが各々の家の在香ということ)
下水のにおいが「悪臭」と認識されるのは、不衛生であるという認知があって生じたことだと彼は言っていたはず。
このことは、人類が薬用植物を愛で、神に捧げたのとは”根本が同じ”で”対照的”な現象といえるかもしれない。
それ自体が良いか悪いかの前に、良いと思える文脈(薬用効果)、悪いと思える文脈(不衛生)があった、ということ。

fiorilu/ pupa/1996
PUPAはイタリアミラノのコスメブランドなので、この香水名もイタリア語由来、真っ赤なバラのような花を冠したボトルデザインからして”fiore~花”からの造語と思われる。
何にしても、この香水が私たち告げたいのは、”花”の陽気で無邪気なパワーなのだ。
人類が信じてきた花の神々しく、ポジティブで有益な力を思いきり体現した香りのプレゼンテーションだと思う。
90年代的なフルーティフローラルだけれど、トップノートに意外なインパクトがあるのはラストノートに効いてくるアンバーやバニラの影響が大きいため。その分、パワフルさがある。ミドルノートからはドライ感を出しながら程よい甘さに落ち着いていく。
明るい気持ちで、花の恩恵に欲したい。

香り、思い、呼吸

5月8日がお誕生日の方、記念日の方おめでとうございます。

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