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エメラルド 5月3日~365日の香水

1921年登場の名香たち
1921年といえば、シャネルの五番(cahnel NO,5)が世に出た年。ほかにも4711からトスカ(TOSCA)や、スペインのミルヒヤ(myrurgia)からマハ(maja)など365日シリーズで紹介した香水も同年のデビューだ。
フランソワ・コティはこの時すでに、ラリックをボトル製造のパートナーに迎え香水商として地位も名誉も獲得していた。
自身のファッションのための香水を創りたいと考えていたシャネルと親しかったコティは、マドモアゼルに香水製造についてもアドバイスをしたという。

コティの調香
コティは1934年に世を去るまで調香師として活躍したけれど、むしろ事業家として香水事業の拡大や新聞社の買収など信条と才覚でひとかどの人物になっていた。
調香のワークとしては、そのキャリアはローズ、ジャスミンなどのシングルフローラルタイプからスタートし、1917年のシープル(CHYPRE)を境にファンタジーノートにシフトしていく。
実はエメロード(emeraude)はシープルの次の作品であり、コティの調香した最後の作品となった。

エメラルド
昨日も書いたようにコティは花ではミュゲ(muguet)~スズランを好んだようだけれど、自身の作品ではメインでの取り扱いはなかった。
エメラルドというテーマについて、彼のどのようなひらめきがあったのだろう。
5月の誕生石としてのエメラルドは、クレオパトラがそうであったように古代エジプト女王のアイメイクに用いられたり、あるいはその粉末をお茶に混ぜて飲むということもあったようだ。高貴でありつつどこかに魔力も感じさせるエメラルド。

emeraude/coty /1921
甘い香り、といってもグルマン系の甘さではなく”香水としての甘さ”という言葉がぴったりくる。花々の甘い香り、バニラが用いられているけれど樹脂やアンバーと溶け合い、ドライな匂い立ち。おそらく、ある時期に大幅リニューアルされていると思うけれど、私のコレクションのものは幸い、”香水らしい甘さ”を体現してくれていた時期のもの。
先に書いたようなエメラルドという石の高貴さと魔力を香りにしたら、この”甘さ”に行きついたのかもしれない。
フランソワコティというクリエイターの着眼や斬新さを思う。
アニマルノートが勝ると魔が強くなり、フローラルが勝ると高貴なだけ・・・になってしまったはず。
今はもうない”香水としての甘さ”。それゆえか、今の時代にも新鮮さを感じる。

香り、思い、呼吸
5月3日がお誕生日の方、記念日の方、エメラルドが誕生石のすべての方へ。

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