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足立区女子と不死鳥の騎士団

第三次"魔法"戦争勃発

マッチングアプリには結構DOTEIが多い。見た目はそれなりにイケてるのに、そうだった人が何人かいた。見た目が良ければ大丈夫だろうと思って関わったのが、ある種の「呪い」の始まりだった。

公共の場やSNSでその名を呼ぶのは憚られるから、私は彼らを「不死鳥の騎士団」と呼ぶことにした。「DOTEI=魔法使い」からのインスピレーションで。実にneatで面白く、自分でもその呼び名を気に入っている。概ね、友人たちからも好評である。

本家の不死鳥の騎士団はダンブルドア率いる魔法省のメンバーだけど、マッチングアプリのそれは、どちらかと言うと敵対側の立ち位置なような気がする。DT of DTになるときっと、本当の名前を呼んではいけないあの人になるのだろう。その予備軍は、デスイーターとでも言おうか。完全にDTではないけど、数年空いてるとかは、もはや片脚突っ込んでる。だから、それはデスイーターに振り分けても良いと思う。

私は友人と外で会った際、不死鳥の騎士団について議論することが多い。(通称バードウォッチング)男として不死鳥であることが悪いのではなく、如何にその中身が不死鳥であるかということ。はっきりと言えば、ちゃんと中身がきもい。不死鳥であるべくして、不死鳥なんだと分かるくらいの中身。その人たちに共通していたのが、何かに付けて卑下すること。

iPhoneの画面を超える程の、巻物級長文LINEを送り付けてくる不死鳥たち。その巻物の中身は、決まって私に対する批判や腹癒せだった。最も強烈な不死鳥だと、1度の食事後に私の良くなかった点を箇条書きで送りつけてきた。きもいって思うよりも先に、食べログかよって思ってしまった。せめて、星3.5以上は付けてほしかったな。あの言いようだと1もあるかないかだった。

彼がそのうような言動をとったキッカケは、彼からの「家に行きたい」と言う申し出を丁重に断ったからだと考えられる。ワンチャンを狙っていたのに、結局は騎士団から退団できず、怒り心頭だったのだろう。まあ、自分もその不死鳥の立場なら、色んな意味でメラメラと闘志を燃やしていたに違いない。

それにしても、めっちゃ不死鳥じゃんって思う中身だったな。ホームボタンなし・フルスクリーンのiPhoneの画面を超える程の巻物級長文LINEだもの。ほぼ呪文だった。きっと、本家の不死鳥の騎士団たちもお手上げの内容だと思う。それをちゃんと読み上げて対抗した私って、凄い。無論、箇条書きで食べログし返したのは言うまでもない。彼よりかは幾分、短めな巻物で。分霊箱をぶっ壊したハリーたちさながらの、最強魔法使いになった気分だった。

件のことから半年経ったある日、ふとマッチングアプリを開くと、大きくイメチェンしたと思われる彼からいいねが来ていた。私は名前とプロフィールの感じですぐに気付いたが、彼は全く気づいていない様子だった。

そして、驚くことに彼は歌舞伎町のホストになっていたのだ。越谷に住んでいると聞いていたから「越谷フェニックス」って呼んでいたのに、いつの間にか歌舞伎町を巣窟としていた。不死鳥だから、ある意味どこででも生きていけるのだろうけど、あの時の彼から女性相手の紳士な接客をしている場面は到底想像できなかった。それと同時に不死鳥の騎士団から退団できたのか、はたまたそのままホストになったのか。越谷フェニックスから歌舞伎フェニックスへ。

そんなこんなで、バードウォッチングって面白い。多種多様な、イズムという蔓が絡み合うジャングルを虎視眈々と飛び交う不死鳥たち。彼らは不死鳥だから、誰かがいなくなってもまた新種の不死鳥が現れる。彼らには独自の分霊箱があり、そこに類稀ないDT魂を祀り上げてるのかもしれない。

厄介な不死鳥は懲り懲りだけど、その分霊箱をぶっ壊して彼らの個性を全てなくしてしまうのは勿体無い気もする。少なからず、面白いところもあるからだ。せめて、彼らが「名前を呼んではいけないあの人」にならないように願わんばかりである。

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