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1日15分の免疫学

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「Janeway's免疫生物学」の公開型自主勉です。 T細胞に惚れて数十年、細胞擬人化漫画を描き始めて十数年の素人が、どこまで推しを知ることができるのか学べるのか挑戦中。
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記事一覧

1日15分の免疫学(130)免疫応答の操作⑧

1日15分の免疫学(130)免疫応答の操作⑧

入口の防御か全体の防御か

本「理想的なワクチンは、感染源が侵入する場所で防御反応を誘導するもの」
大林「侵入個所を防御出来たら感染しないもんね」
本「なので、病原体の侵入経路である粘膜の免疫を刺激するのが重要な目標となる」
大林「粘膜に直接といえば、経鼻ワクチンかな…」
本「そう。ほとんどのワクチンは注射で、痛みを伴うので接種率が減るし、人件費含む経費もかかる上に、大半の病原体の侵入ルートとは異

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1日15分の免疫学(129)免疫応答の操作⑦

1日15分の免疫学(129)免疫応答の操作⑦

ワクチン開発で大事なこと

本「ワクチン開発の成功に必要なことはまず安全性、 大半の者に防御免疫が誘導されること、長期の免疫力が誘導されること( T 細胞 B 細胞 両方の感作が必要)、 安価であること」
大林「安全性は勿論だけど、安価なのは実際問題として重要だよね」

本「効果的なワクチンプログラムの有利性は集団免疫」
大林「数年前からテレビでも聞くようになったね。体質その他の事情でワクチン接種

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1日15分の免疫学(128)免疫応答の操作⑥

1日15分の免疫学(128)免疫応答の操作⑥

ワクチンと感染症について

大林「ジェンナーとパスツールから始まりましたね」
本「ワクチンの目標は、持続的な予防免疫を誘導すること。一度の感染でしばしば防御免疫が獲得される」
大林「しばしば…留保したな?獲得できない場合もあるからか」
本「感染による防御免疫獲得については、2000年前のペロポネソス戦争の頃に既に認識されていた」
大林「ま、まさかそれは…」
本「戦争中に2回続いてペストの大流行がア

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1日15分の免疫学(128)免疫応答の操作⑥

1日15分の免疫学(128)免疫応答の操作⑥

がんと免疫療法について

本「がん免疫療法には、CAR-T細胞や単クローン抗体のほかに2つの主要なアプローチがある」
大林「ワクチンと…なんだろ」
本「がんワクチンは、腫瘍が本質的に免疫原性が乏しいのでワクチンで高めようというアイデアに基づく」
大林「へぇ〜!つまり腫瘍細胞は攻撃対象になりにくいってことか。まぁ、排除されないからこそ増殖しまくってがんになってしまったから当然か」

本「2つ目はチェ

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1日15分の免疫学(126)免疫応答の操作④

1日15分の免疫学(126)免疫応答の操作④

本「免疫抑制状態で腫瘍が成長する例として、固形臓器の移植後で免疫抑制状態にしている患者で起きる移植後のリンパ球増殖性疾患がある」
大林「感染症とかでもないのにリンパ球が増殖する病態ってことかな」
本「これは、エプスタイン・バール(EB)ウイルス感染によりB細胞が増殖するもので、免疫が正常であればB細胞が腫瘍化される前に感染細胞が排除される」
大林「EBウイルスか!別の章で学習したやつだ!キス病!」

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1日15分の免疫学(125)免疫応答の操作③

1日15分の免疫学(125)免疫応答の操作③

がんと免疫について

本「先進国の三大死因は、がんと感染症と心血管疾患。感染症の治療や 心血管疾患の予防の改善が続いて平均寿命が延びるのに伴い、がんが一番の死因となる可能性が高い」
大林「長生きするほど遺伝子の異常が蓄積されるもんね… 」
本「がん治療の最も大きな課題は転移metastasisの制御」
大林「英単語の発音はメタ……?」
看護ルー「転移:metastasis(メタスターシス)を「メタ

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1日15分の免疫学(124)免疫応答の操作②

1日15分の免疫学(124)免疫応答の操作②

抗体製剤について

本「抗体は、より選択的に働き、直接的な毒性が低い可能性がある」
大林「抗体製剤ですね!」
本「抗体製剤の開発は、19世紀後半にジフテリアや破傷風の治療のため開発されたウマ血清が最初」
大林「馬に感染させて免疫つくらせてその血液から抗体を採取するやつですね。ヒトからも採取してるよね、移植の章で書いてた…」
本「ドナーから集めた多クローン性抗体製剤の経静脈投与intravenous

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1日15分の免疫学(123)免疫応答の操作①

1日15分の免疫学(123)免疫応答の操作①

第16章 免疫応答の操作序章

大林「第16章はどんな内容?」
本「望ましくない免疫応答の抑制や防御免疫を高めたりする方法について」
大林「後者であればワクチンや血清から始まり…」
本「そうだね、病原体に対する免疫法や抗血清の開発は19世紀後半にかなり進んだ。免疫抑制については薬剤が導入されるようになった」
大林「色々と進化してるよね」

本「薬剤による操作は特異性が低く、効果も限定的だけど常套手

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1日15分の免疫学(122)自己免疫と移植15

1日15分の免疫学(122)自己免疫と移植15

胎盤と免疫抑制について(前回からの続き)

本「胎盤は、栄養素の枯渇により母親のT細胞を抑制しているのかもしれない」
大林「胎盤って栄養たっぷりなイメージあるけど?」
本「母親と胎児の境界の細胞ではインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼという酵素が高発現していて、これは必須アミノ酸のトリプトファンを枯渇させ、トリプトファン欠乏のT細胞は反応性が低くなる」
大林「ほぉ」
本「妊娠マウスでこの酵素を

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1日15分の免疫学(補習)制御性T細胞について③

1日15分の免疫学(補習)制御性T細胞について③

制御性T細胞の機能について

本p215「ヒトの腸管は人体最大の免疫器官。500〜1000種頼、100兆個以上腸内細菌が棲みついている」
大林「腸は免疫の要ってことだね!」

本p217「マウスにほぼ無害な寄生虫を感染させると、免疫に問題なくとも何匹かは宿主に害を与えないレベルで留まる」
大林「へぇ、Tregが攻撃を必要最小限に抑えるってこと?害がないレベルまで敵の勢力をそいだら殲滅戦まではしない

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1日15分の免疫学(補習)制御性T細胞について②

1日15分の免疫学(補習)制御性T細胞について②

制御性T細胞によるT細胞抑制について

本p115「ナイーブT細胞の活性化にはTCRへの抗原刺激(シグナル1)とT細胞表面のCD28への副刺激(シグナル2)も必須」
大林「シグナル1と2が揃わないと活性化できないんだよね」

本「CD28は、抗原提示細胞に発現するCD80,CD86と結合するとIL-2を産生し、IL-2の作用で細胞は増殖する」
大林「T細胞表面のCD28と抗原提示細胞表面のCD80

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1日15分の免疫学(補習)制御性T細胞について①

1日15分の免疫学(補習)制御性T細胞について①

我が推し「制御性T細胞」についての坂口先生の御本を、出版に気づくのが遅れて読んでいなかったので急いで読みました。2020年10月に出ていたなんて……Janeway's免疫生物学を読み始める前に読んでおきたかった。
「ここをもっと詳しく優しく教えてくれ~!」と思ってたところがたくさん解決したのでこちらに「補習」としてまとめます。
※本文中で「p数字」で表記しているのは、参照したページの番号です。

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1日15分の免疫学(121)自己免疫と移植14

1日15分の免疫学(121)自己免疫と移植14

移植とTreg細胞

本「Treg細胞は移植片拒絶のアロ反応性免疫応答でも重要な免疫調節的役割を担っていると考えられている」
大林「流石は免疫界の守護神!そこにしびれるあこがれるぅ!」

◆復習メモ
T細胞:自己非自己を認識できる免疫細胞。胸腺Thymusで成熟するためT細胞と呼ばれる。MHC分子と抗原ペプチドの複合体を認識する。
細胞表面分子CD4を発現するT細胞は、CD4T細胞とも呼ばれ(ヘル

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1日15分の免疫学(120)自己免疫と移植13

1日15分の免疫学(120)自己免疫と移植13

造血幹細胞移植について

本「造血幹細胞移植は、ある種の白血病やリンパ腫などの造血細胞由来のがんの有効な治療として用いられている」
大林「骨髄とか…胎児臍帯血とか、あと、最近では末梢血からでもできるようになったんだよね」
※末梢血:血管の中を流れる血液。骨髄の中の血液に対して使われる医学用語。

本「いくつかの原発性免疫不全症や地中海性貧血(サラセミア)などの遺伝性の血液細胞異常を遺伝的欠損のある

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