MTT Fundamentals / Tournaments vs. Cash Games
初めての投稿を何にしようか考えたとき、
「自分の身になること x 自分が得意なこと」のかけ合わせの領域で記事を書くのが良いのではないかという思いに至りました。
そこで、今後当面は、GTO WizardのBlogの日本語まとめを作成することで、自分のポーカーのトーナメントナレッジのブラッシュアップをしていこうと思っています。
英語が得意でないけどポーカーのトーナメントでより勝ちたいと思う方にも微力ながらお役立ていただければと考えています。
今回はGTO Wizardsにて紹介されている下記の記事「Poker Strategies: Tournaments vs. Cash Games」につき、日本語まとめをお送りします。
アンティが広いレンジでの参加を正当化
要は、
「アンティがある⇒ポットに入っているデッドマネーが増える⇒参加する際のポッドオッズが良くなる⇒必要勝率が低くなる⇒参加ハンドが増える」
といった数学的要素から、アンティのないゲーム対比で、レンジを広げて戦わなきゃ損、という形になります。
元記事の図を借用すると、
「アンティなし、100BB持ちCash Game」の「BTN 2.5BB Open」が下記のようになるのに対し、
https://blog.gtowizard.com/wp-content/uploads/2023/01/gto-wizard-mtt-heuristics-ranges-1-1200x1010.jpg
「アンティあり、100BB持ちMTT」だと下記のようになります。https://blog.gtowizard.com/wp-content/uploads/2000/01/gto-wizard-mtt-heuristics-ranges-2-1200x1010.jpg
実に、Open率が11%上昇、各ハンドのEVも上昇しており、上記の数学的なロジックが成り立っていることがわかります。
このポットオッズの効果がよりさらに際立って観測できるのが、BBのディフェンスレンジになります。BBは、既に1BBを払っている分、「追加で支払う参加料が少ない分、元々ポットオッズが良い」、「コールした場合、後ろのプレーヤーが残っておらず、フロップを確実に見に行ける」利点があり、元々コールレンジが広いわけですが、アンティによるポットオッズ上昇で、更にディフェンスするインセンティブが高まるわけです。
BTNのOpenに対するディフェンスレンジについて、先ほどと同じように100BB持ちのアンティなしキャッシュとアンティありMTTでの比較した図が下記になります。
アンティなしキャッシュ: https://blog.gtowizard.com/wp-content/uploads/2000/01/gto-wizard-mtt-heuristics-ranges-3-1200x1010.jpg
アンティありMTT: https://blog.gtowizard.com/wp-content/uploads/2000/01/gto-wizard-mtt-heuristics-ranges-4-1200x1010.jpg
なお、アンティなしキャッシュだとFold率が60%程度だったのが、アンティありMTTだと25%になり、Suitedハンドであれば、すべてディフェンスする必要がありますし、T6oみたいなハンドでもコール頻度が発生しています。
元記事では特段触れられてはいませんが、キャッシュではOpenがある際のSBは、「3bet or fold」のような戦略になりますが、MTTではSBにディフェンスレンジがかなりあり、Openに対し、SBとBBがCall、みたいなマルチウェイにも多く遭遇しますね。
ここでのポイントは、あくまで「トーナメント」だからではなく「アンティがあるから」レンジが広がる、参加頻度が高まるということかと私は思います。
たまに、国内のトーナメントでもレベル1ではアンティのないゲームもあったりするかと思いますが、この時にMTTと同じようなレンジでOpenやブラインドのディフェンスをすることはEVを損ねることにつながるかと思います。
私はアンティのないレベル1では、キャッシュゲームのレンジを思い出しながらプレイすることを心がけていますが、かなり多くのプレーヤーがスタックに余裕があることも相まって、本来あるべきレンジよりもルーズにプレイしてるように感じています。
スタックサイズの変化がレンジに影響
キャッシュゲームと異なり、リバイできない、ブラインドが上昇するの2点により、自身も相手プレーヤーも様々なスタックサイズになることがプリフロップのレンジにも影響を与えるという話。
特に、スタックが小さいプレーヤーは、オールインをしやすいことについては念頭に置くべき点。相手のエクイティを否定し、自身のエクイティを実現できる点、オールインは強力な戦術。自分がショートスタックの時は、適切な機会とハンドでオールインをする、また後ろにショートスタックのプレーヤーがいる場合、オールインされることを念頭に戦う、ということが重要と言えます。
8MAXのCOのプリフロップレンジですが、すべてのプレーヤーが9BBのときは、オールイン 31.6% or フォールド68.4%(https://blog.gtowizard.com/wp-content/uploads/2000/01/gto-wizard-mtt-heuristics-ranges-5-1.jpg)なのに対し、BTN-29BB/SB-21BB/BB-32BBの時はオールインの頻度が35.3%まで上昇します(https://blog.gtowizard.com/wp-content/uploads/2000/01/gto-wizard-mtt-heuristics-ranges-6.jpg)
後者の時、例えばBTNがCOの9BBのオールインにコールした後に、SBにコールされれば、PSRが1を下回りますし、SBがポットの半分弱をポットに入れ、ほぼコミットしている形になります。また、(SBフォールドに対し)BBからリレイズオールインが返ってきたときもBTNとしては一部のハンドでフォールドせざるを得ない場面があるでしょう。そういった状況が見える中で、BTNのコールレンジは、29BBの時の方が、9BBしかないときよりも狭くなる形となります。これが、後ろのプレーヤーのスタックが大きい方が、COのプッシュレンジが広がる理由になります。
フォールドはEVプラス
キャッシュゲームではフォールドの期待値はゼロ、MTTはプラスという話。これは、チップを少しでも持っていて生きてさえいれば、インザマネーになって賞金がもらえる確率があることに価値があるということです。自分のチップが増えていなくても、他のプレーヤーが飛べば、入賞ラインに近づき、生き残る価値がさらに上昇します。
したがって、ポットを争うときは、コール、レイズの期待値が「ゼロ以上か」ではなく「フォールド(>0)以上か」を常に考える必要があります。(いわゆるICMの概念)
例えば、20BB持ちのCOのプリフロップレンジはフィールドに50%のプレーヤーが残っている場合、69.3%ですが、25%しか残っていない時は71.4%とオープンレンジがタイトになります。これはまさに生き残る価値の上昇=フォールドの価値の上昇の影響になります。
https://blog.gtowizard.com/wp-content/uploads/2000/01/gto-wizard-mtt-heuristics-ranges-7.jpg
https://blog.gtowizard.com/wp-content/uploads/2000/01/gto-wizard-mtt-heuristics-ranges-8.jpg
フォールドの価値は下記5つの要素により決定されます。
入賞/賞金アップの順位への近さ(近いほど、フォールドの価値上昇)
他のショートスタックの人数の多さ(多いほど、フォールドの価値上昇)
自分のスタックサイズ(多いほど、生き残れる確率が高いため、フォールドの価値は低下)
生き残っているプレーヤー数(多いほど、自分がチップを増やすことが、賞金の期待値を増加することに直結しないため、リスクを冒す価値は低下し、フォールドの価値は上昇。プレーヤーが多いときは他力本願、少ないときは自ら取りに行くことが期待値上昇につながる)
対戦相手のスキル(ICMを理解していないプレーヤーがいて、余計にリスクを取りにくる場合、フォールドの価値が上昇。事故を防ぐ、ということと思料)
MTTの場合、最後の1枚のチップが最も価値があるチップになります。
キャッシュゲームでは、500ドル分チップを購入すれば、それは500ドルの価値になり、チップ量が2倍になれば、金銭的価値も2倍です。
MTTでは、500ドルの参加料を払い、得た500枚のチップは、仮にトーナメントの最中に1,000枚になっても1,000ドルの価値にはなりませんし、逆に250枚になっても、生き残ってさえいれば、入賞、さらには優勝の可能性があるため、250ドル以上の価値があります。
上記から言えるのは、ショートスタックになったら、保守的になるべきということ。チップの多くを失い、残ったチップを粗末にオールインしたりすることは、最後の1枚の価値を理解していない、大きな間違いであるということになります。(国内のサテライトでは、リエントリーできる場合に、こういったプレイをしがちかと)
耐えていれば、①良いハンドが来る、②スタックが減る分、より多くのハンドが利益的になる、ということになります。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?