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平成・令和のスイーツブームをたどる!ここ30余年のブームをスイーツジャーナリストの平岩理緒さんに解説してもらいました。

ティラミス 1990年 /主な出来事(以下同)東西ドイツ統一

ティラミスは雑誌『Hanako』の特集から火が付きました。1990年当時、イタリア料理が「イタメシ」と呼ばれて流行しており、そこで特集に取り上げられたのが、イタメシのデザートであるティラミスでした。それをきっかけに、ファミリーレストラン「デニーズ」でも提供されるようになると、認知度は一気に高まり一大ブームに。その後のクレームブリュレやタピオカ(第一次)も、同じように『Hanako』掲載が契機となって生まれたブームです。

タピオカ 1992年

東南アジア旅行やアジアンフードがトレンドとなっていた1992年に第一次タピオカブームが起こります。当時のタピオカパールは白くて小粒。ココナツミルクに浸して食べるタピオカココナツミルクが定番でした。

ナタデココ 1993年 /Jリーグ開幕

フィリピン発祥の食品でココナツ果汁を発酵させて固めたもの。1993年に流行し、スーパーマーケットなどにも商品が大量に並びました。

カヌレ 1996年

元々はフランスのボルドー地方の郷土菓子。パリでもほとんど知られていなかったのが、パティシエのピエール・エルメ氏が作り始めた影響により、日本でも少しずつ作られるように。1996年、東京の青山「ドンク」でブレイクし、同時期に白山「パパ・ダニエル」、銀座「ビゴの店 ドゥース・フランス」でも大人気商品となりました。

カヌレ。2010年代、2020年代にもブームが到来。

ベルギーワッフル 1997年

ベルギーワッフルを日本に広めたのは「マネケン」です。洋菓子店チェーン
を展開していたローゼンの創業者がベルギーで出会ってほれ込み、大阪梅田にマネケン1号店を開いたのは1986年。そこから約10年後の96年12月、新宿に東京1号店をオープンさせると、大ブームに。1アイテム特化型専門店の台頭は、このベルギーワッフルからといわれています。

なめらかプリン クイニーアマン 1998年 /長野オリンピック
エッグタルト 生チョコレート シナモンロール 1999年

バウムクーヘン 2001年 /アメリカ同時多発テロ 

日本にドイツ式バウムクーヘンを広めたのは神戸「ユーハイム」。婚礼の引菓子でもおなじみでしたが、「たねや」洋菓子部門「クラブハリエ」が1999年、大阪・梅田阪神に専門店「B-studio」を開くと、従来とは異なる独自のふわふわしっとり感が評判を呼びます。2001年、東京・日本橋三越内に進出し、人気が一気に高まりました。

マンゴープリン 2002年

マカロン 2005~07年 /愛知万博

フランスの「ピエール・エルメ・パリ」が1998年のホテルニューオータニ東京に続き、青山店をオープンしたのは2005年。翌年、伊勢丹新宿にも直営店を置き、マカロンを含むコレクションが話題に。05年に日本オープンした「パティスリー・サダハル・アオキ・パリ」も人気を博し、世界中にマカロンを広めたパリの老舗「ラデュレ」も08年、日本に上陸しました。

ドーナツ 生キャラメル 塩キャラメル(塩スイーツ) 2006年
ロールケーキ ラスク 2007年

ロールケーキ 2007年

2007年、大阪「モンシェール」の「堂島ロール」が東京に進出して大人気に。たっぷりのクリームをひと巻の生地で包み込んだ斬新なロールケーキです。そして、09年に発売されたのが「ローソン」の1人用「プレミアムロールケーキ」で、記録に残る大ヒットとなりました。以降、コンビニ独自のオリジナルスイーツがより広がりを見せていきます。

ロールケーキ

生カステラ 2009年
パンケーキ 2010年
フレンチトースト カヌレ(~19年) 2012年
グルメポップコーン タピオカ 2013年
進化系かき氷 焼き立てチーズタルト 2014年
ビーントゥバーチョコレート レモンケーキ クロナッツ®(ハイブリッドスイーツ) 2015年

レモンケーキ 2015年

昭和40~50年代にブームとなったレモンケーキが、2015年に再びブレイクしました。とはいえ、かわいいフォルムこそ昔のままですが、中身は進化。レモン果汁や皮を用いて、よりレモンに近い味わいになっていたり、糖衣をまとっていたりと、おしゃれに。

チョコミント(~17年) 生クリームスイーツ 2016年

タピオカ 2018年

1992年の第一次ブームでは食べるものだったタピオカが、2013年の第二次、18年の第三次ブームではドリンクに入れて飲むものへと変化しました。タピオカ自体も黒くて大きな粒に。第三次をけん引したのは台湾人気とSNSでした。専門店もあちこちにできました。

バスクチーズケーキ 2018年

スペイン・バスク地方の美食の街サンセバスチャンにある「ラ・ヴィーニャ」という老舗バルが発祥といわれています。そこで直接製法を学んだ
パティシエが関わり、2018年7月、東京・白金高輪にオープンした専門店「ガスタ」が評判に。以降、バスクチーズケーキを扱う店が急速に増え、翌年にはコンビニにも次々と登場しました。

バタースイーツ マリトッツォ 琥珀糖 カヌレ 2020年

社会的出来事とスイーツの関係

社会的出来事とスイーツは密接に結びついています。例えば2008年9月に起
きたリーマンショックはスイーツ業界にも多大な影響を及ぼしました。不況による買い控えを恐れた店やメーカーが価格を抑えはじめ、「堂島ロール」のヒットを機に販売されていたさまざまなロールケーキも、デコラティブだったものが飾りを捨ててよりシンプルに、より安く変化。ロールケーキはそうしたリニューアルを実行しやすい商品で、しかも消費者にとっては1個ずつのケーキを買うのに比べ、その場の人数に合わせて切り分けられるため無駄がなく合理的です。手頃な価格で買える、見劣りしない手土産として選ぶ人が多くいました。

ブームをけん引する売り場の変化

華やかなスイーツが並ぶ百貨店地下1階の食品売り場、いわゆる「デパ地下」が脚光を浴びるようになったのは1990年代。2000年代以降は大型ショッピングモールや駅ビル、駅構内の「駅ナカ」に人気店が出店するようになります。ベルギーワッフル以降に増えたのが1アイテム特化型専門店。その専門店発の流行を、やや間を置いてファミレスやコンビニが追いかける形でしたが、バスクチーズケーキ辺りで時差がほとんどなくなり、今ではむしろコンビニでのヒットを専門店が追う逆転現象も起こっています。

次のブームはどのスイーツ?

カンノーリやバクラヴァなどがこれからのブーム候補といわれていますが、どうなのでしょう。カンノーリはイタリア・シチリア島のお菓子で、揚げた筒状の生地にリコッタチーズで作ったクリームを詰めたもの。映画『ゴッ
ドファーザー』にも登場します。一方、バクラヴァは中近東生まれ。パリパリの薄い生地を何層にも重ね、間にナッツのペーストを挟んで、上からシロップをかけた、とても甘いお菓子です。大ヒット要因の一つである、既存
の菓子店で作りやすいという点をどちらもクリアしていないのが気になるところです。

話:平岩理緒さん(ひらいわ・りお)さん
スイーツジャーナリスト®。スイーツ情報サイト「幸せのケーキ共和国」主宰。史学専攻後、マーケティング業界を経て製菓学校で学ぶ。ウェブ『おとりよせネット』、雑誌『製菓製パン』、海外誌『Pâtissier』他で連載。メーカーや自治体のコンサルティング、コンテスト審査員、イベント企画や司会・解説、カルチャーや製菓スクール講師なども務める。
https://shiawasenocake.net/

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