見出し画像

岡真理『ガザとは何か』

自分は大学で政治学、政治哲学を専攻していたので曲がりなりにもイスラエルとパレスチナの問題については理解しているものと思っていました。しかし、本書を読んでそれが大きな誤解であったことを知りましたし、こんなに大きな歴史的不正義を知らなかったことを恥ずかしくすら感じました。
僕のブックレビューは下の方に書くのですが、まず本書を手に取っていただいたり、もしくは本書の土台となっている岡先生の動画をご覧いただきたいと思っている。

特に下記に当てはまる方々はぜひ本書か動画に触れてみてください。
1. イスラエル=ユダヤ人という印象を持っている方々
2. イスラエルは軍事設備投資からテクノロジー発展が著しい国というイメージがあるが、イスラエルの歴史は全然知らないなぁ〜という方々
3. ガザ地区での紛争について、ハマースというイスラム過激派組織がイスラエルに対して攻撃をしたことで始まったということは知っているが、最近なぜイスラエルに対する批判が強まっているのかまでは知らない方々

改めてですが、ぜひ岡真理先生のコンテンツをご覧になってください。

本書を読むまで、ここまでのことがガザで行われ続けてきたということを僕は知りませんでした。読んでいる中で本当に色々なことを考えさせられたのですが、大きく二つのことについて書く。

①国際法 / 国連の無力さ
国連や国際法が実際的なパワーを持たないことは、政治学の分野では以前からよく指摘されることだが、本書を読んで改めて、本当に無力であると感じざるを得ない。国際法を違反しているにもかかわらず何も懲罰を与えられていない。結局は主権国家がどう関与するか?に全て依存してしまっている状況である。もちろん、規範的役割はあるが、武力等の実際的に行使可能なものが無いゆえに、イスラエルによるアラブ人に対するジェノサイドをやめさせる効力を持っていない。
結局は米国を中心とする主権国家がどうボーズするかによってしか変化が起きない国際政治の問題の難しさを久しぶりに目の当たりにした。ここにガザとウクライナの違い(米国が動くインセンティブの有無)を垣間見ることが出来る。

②グローバル正義論の難しさ
そんな米国は親イスラエルの路線を崩すことはありませんが、それは米国内の票数に対して親イスラエル派であることが大きすぎる影響を持っているから。
米国民のために何かを成し遂げるためには親イスラエル派である必要があるが、グローバルな正義を貫く(国際法を遵守してジェノサイドをきちんと糾弾する)ためには米国内でのプレゼンスを落とすリスクを許容しなければならない。
この時、今の国民国家をベースとしたpolitical sphereではやはり国内を向くことが当たり前になってしまう。
世界市民、コスモポリタニズムという言葉を起点としたグローバル正義論は、トマスポッゲ『なぜ遠くの貧しい人への義務があるのか』を中心として、僕も学生時代に憧れる思想対象であったし、今でもキラキラとした魅力的なものであることは間違いないが、それでもやはり現代社会において自国よりも他国を優先するような政治的振る舞いは実現され得ないのだろうと思う。

総じて困難な問題であるし、自分に出来ることがあるのか分からないが、岡先生がおっしゃる通り、一刻も早くジェノサイドを終わらせるべく出来ることを行う必要がある。
最後に丸山眞男の言葉で締めくくりたい。

「政治的世界では俳優ならざる観客はありえない」

『政治の世界』「科学のしての政治学」

※本noteで利用しているAmazonURLはアソシエイトリンクです。
※本noteから発生した、Amazonアソシエイト収益は全額、日本赤十字社のイスラエル・ガザ人道義援金に寄付いたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?