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「不思議の国・香川県」の話(あるいは、うどんにまつわるアレコレの話)

世界は「不思議」に満ちている

ぼくはいま、香川県(高松市)に住んでいる。

出身は北海道で、大学進学を機に上京して20年以上住んでいた。で、40代後半になって香川県に移住した。

移住してまだ3年ほどなので、香川県の文化・風土について知らないことがたくさんある。

香川県が日本一狭い県であることを知ったのは移住してからのことだったし、昔から水不足だったために、その名残で未だにあちこちに「ため池」があることも、移住してから知った。

県外から移住してきた人間にとって、香川は実に不思議な県である。いや、47都道府県それぞれ不思議なのは間違いないけれど。

なので、今回は香川県の不思議さについてアレコレ書いてみる。

うどん屋の多さは異常

ご存知の通り香川県は自称「うどん県」である。とにかくうどん屋が多い。例え話でよく話すのだが、家の近くのコンビニに行くよりも、うどん屋に行く方が断然近い。


上原家本店の「釜揚げ」。私の個人的うどんランキングの「釜揚げ部門」上位ランカーである

我が家から一番近いコンビニまでは徒歩6分ほどかかるが、一番近いうどん屋へは徒歩1分くらいで着く。

そのくらい、うどん屋がそのへんにゴロゴロある。

「讃岐うどん美味しいんでしょ?」と聞かれるが、そりゃもちろん美味しい。そして、本当に色々なうどん屋さんがある。

製麺所が片手間に(というのも何だが)うどんを提供している店もあれば、立派なお屋敷のような店構えの店もある。カウンターしかない店もあれば、小上がりがあったり、めちゃくちゃ広い客席を確保している店もある。安い店もあれば、高い店もある。うどんを自分で温め、出汁を注ぐのもセルフでやる店もある。

この状態で見てもわからないと思うが、自分で温めて出汁を注ぐ系の「中西うどん」のかけうどんと、ごぼう天におでん(食べ過ぎ)

ちなみに、香川県民は冷凍うどんや「はな◯るうどん」は食べないのかと思っていたら、普通に食べる(人が多いらしい)。

神戸と高松を結ぶフェリーの船内でもうどんを提供したり、うちの近くにある神社では、初詣の際にうどんの出店が出るらしい。「うどんは平等」もしくは「うどん is freedom」という精神なのだろうか(多分違う)。

「変わった天ぷら」がある

もはや「香川県の紹介」というより「うどん屋の説明」になってきているけれど、まあ良いか。

香川のうどん屋さんには、少なくともぼくは今までお目にかかったことがないタネの「天ぷら」があること。「ちくわ」や「カニカマ」は他の地域でもよく見かけるが「これは・・・?」と思ったのが次の通り。

・金時豆

甘く煮た金時豆をかき揚げにしてある。なので、当然甘い。サツマイモの天ぷらなんて目じゃないくらい甘い。当たり前だ。甘く煮てある豆を揚げてあるんだから。でも、これが意外とうどんと合ったりもする。

・高野豆腐

当然、あの乾燥したものをそのまんま揚げているわけがなく、お出汁で似た高野豆腐を天ぷらにしてある。何とも不思議な食感と味わい。ある店とない店があるけれど、これも意外と美味しい。

・こんにゃく

おでんのこんにゃくを天ぷらにしてある、と思ってもらうのが一番イメージがしやすいと思う。「なぜ、わざわざ天ぷらにしたのか・・・?」と思わなくもないけれど、当然美味しい。

ケンミン熱愛グルメ(©秘密のケンミンSHOW)的な

うどんだけでどれほど書くつもりなのかと自分でも思うのだが、これだけは書いておく。

香川県民は冬になると「そろそろ『しっぽく』の時期だね」と言い始める。

・・・しっぽく? そう。当初、私もそう思っていた。

しっぽくと言っても、長崎名物の『卓袱料理』とは全く違う。

里芋、人参、大根、お肉(豚が多いが牛も、鶏もある)を煮込んだ温かい出汁で食べる「しっぽくうどん」のことである。

これが「しっぽく」(これは「宮武うどん」の作品)

古典落語が好きな方なら『時そば』に出てくる「しっぽく」と言えば、イメージがつくだろうか。落語のアレは多分そばだが、香川では「しっぽく」と言ったらほぼ「うどん」を指す。うどん屋さんの中には「製麺所だけど、うどん屋もやってます」的なお店も多く、そういう店では「しっぽくうどん」も「しっぽくそば」もある。

これも「しっぽく」(さぬき市の「溜」の作品)。いくつか見ていただくことで、何となく雰囲気が伝われば幸いである

別に通年のレギュラーメニューにしても良さそうなものだが、一年中「しっぽくうどん」を出している店を見たことがない。それだけ、香川県民にとって「しっぽく」は冬だけのものというのが当たり前なんだろうな、と思う。


最後にもういっちょ「しっぽく」。こちらのお店はお肉多めが特徴(「手打ちうどん 上田」の作品)

あまり他の地域で「季節限定うどん」というものを聞いたことがなかったので、軽くびっくりしたのを覚えている。

香川(と、その付近)にあるお店

ムーミー、きむら、マルナカ、マルヨシセンター。ここまで聞いて「あー」と思った方は、おそらく香川出身か、香川関係者である可能性が高い(香川照之は関係ない)。

これらは「香川に多いスーパーの名前」である。加えて、関西エリアではよく見かける「ハローズ」や「ラムー」なども見かける。

裏を返せば、これ以外のスーパーを見かける機会は非常に少ない。

ぼくが東京に住んでいた頃は「ライフ」「サミット」「イトーヨーカドー」「OKストア」あたりを良く使っていたけれど、どれも香川では見たことがない。「成城石井」とか「西友」も、香川では見た記憶がない。

スーパーは割と地域ローカルの企業が強かったりするので、これは香川に限ったことではないのかもしれない。だが、初めて香川で生活した時は「聞いたことがないスーパーばっかりだ」と驚いた。

ついでに、ぼくはイオン系のスーパーで売っている、塩だけで味付けしたトルティーヤチップスが好きなのだけれど、それが「マルナカ」で売っていて、そこで「マルナカがイオングループ」ということを知り二重に驚いたのを覚えている。

本文とは全く関係ないけれど、ちなみにコレ。手を出したことがない方も多いかもしれないが、なんかクセになるのでオススメしたい。

https://www.topvalu.net/items/detail/4549741779500/

あと、本屋さんと言えば「宮脇書店」しかない、と言ってもいいくらい、宮脇書店が圧倒的に強い。

ちなみに、宮脇書店の本社には観覧車が付いている。何を言ってるんだコイツは・・・と思った方は、こちらを見てもらえれば意味がわかるはずだ。

本社と本店と観覧車。何が起こったのかはよくわからない

いや、意味は私にもわからないが、何を言ってるのかだけは伝わるはずだ。

とは言え、知らないこともまだまだある

と、ここまで書いてみたものの、私の知っている香川県は主に「高松市」のことだ。例えば西側の観音寺市や善通寺市、三豊市には行ったことはあるものの、そこまでがっちり見聞きしているわけではない。東のさぬき市や東かがわ市も同様である。

何にせよ、その土地土地の文化は訪れただけではわからないこともある。住んでみて初めて「そんなことがあるんだ」とか「そんなものがあるの」「そんな言葉聞いたことがない」ということを知れる。

例えば「タイムランチ」なんて、香川に来るまで聞いたことも見たこともなかった。ちなみに「ランチの時に出すメニュー」のことを「タイムランチ」という。ニュアンスでわかるような、わからんような・・・である。

というわけで、香川に住み続ける間、ぼくはまだしばらくカルチャーショックを受けることになるだろう。それもまた、楽しい。何かあったら、ぜひまた報告したい。

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