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Photo by
kei02
くだらない日常を鞄に詰めて旅立つんだ
窓から見える山並みの向こうに
青々と田んぼが広がっている
あぜ道には
クローバーとシロツメクサが
敷き詰められて
緑の絨毯みたい
小川に
朝日がきらきらと反射する
今年も
両岸のなだらかな土手には
土筆の帽子が風に揺られているだろう
ひよよひよよと
野鳥の声が聞こえる
近所の子どもたちの笑い声
旅立ちのときがきた
景色はいつもと変わらない
ここで
ずっと生きてきた
レンゲ草を集め
花かんむりを作り
土筆取りに夢中になった
藁を集め
木々を拾って
小さな秘密基地を作り
草の座布団でくつろいだ
旅立ちの時間
景色は変わらない
ここでずっと生きてきた
小さな虫を見つけて大騒ぎ
蝶や蜻蛉を追いかけて
転んで泥だらけ
神社の小さな赤い鳥居が
そんな私たちをそっと見ていた
おやつを買うにも
駄菓子屋はちょっと遠くって
汗をかきながら
みんなで自転車をたちこぎした
風が
頬を撫でて
かぶっていた麦わら帽子が
ふわりと飛んだ
なんにもないけど
なんでもあった
ここでずっと生きてきた
別れのときは
いつの間にか目の前で
なんでもないことに
笑いあった時間は
ただ
ただ
くだらなくて
愛おしい
明日
春列車に乗って
新しい世界に旅立ち立つ
ごみごみした町並みの中に
きっと
夢の欠片が
転がっていると信じて
くだらなかった日常が
きっと自分を支えてくれる
笑い合って
つまらないことで喧嘩して
仲直りして
また笑った
そんなくだらなくて
満ち足りた日常は
がらくたで宝物
ここで
ずっと生きてきた
だから
夢をもてた
それに向かって飛び出せた
進む先に
光が降り注ぐと信じていられた
くだらない日常が
支えてくれるときがある
思い出を
鞄にいっぱい詰めて旅立つんだ
私も
君も
進む先に
光がきっと降り注ぐ
そう信じて進むんだ
重い鞄をぎゅっと抱きしめながら
春うらら日常の先の非日常
夢と出逢いと鞄がひとつ
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