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大喜多町役場庁舎/今井兼次・千葉学 建築探訪 その7

2018年1月に見学。千葉県大喜多町役場庁舎は、昭和34年(1959年)に早稲田大学建築学科の今井兼次教授の設計で竣工した。モダニズムの傑作として評価され、またサグラダ・ファミリアで有名なアントニオ・ガウディの影響を受けた壁面等のデザインや地元産の蛇紋岩や大喜多城由来の鶴のデザインなどで、住民たちからも長く愛されてきた。


地元産の蛇紋岩を積んだ壁面


屋上のペントハウスのモザイク壁画


町役場のpdfから

旧庁舎には、上記の大喜多の歴史から引用したデザインが多数配置されている。この事も、住民たちから長年愛されてきた訳で、未だに撤去されずに多目的ホールとして活用されているのだと思う。「近代建築の目撃者/佐々木宏編」で、今井先生は1926年にヨーロッパに外遊した際に、スウェーデン・ストックホルムの市庁舎を設計したエストベリに案内され感激した。
以下引用

今井 それは、言葉にならないほどの感激に襲われました。私は元々のこの市庁舎がスウェーデン建築の珠玉であると考えていますが、あの作品の中に秘められているエストベリ先生の創作態度に大きなものを感じていたのです。諸芸術家を統率し、それらの諸芸術を事故の作品の母体の中に糾合して行くすぐれた力量のほかに、エストベリ先生があの作品をストックホルムの市民のために真心こめて捧げるのだとおっしゃったヒューマンな精神を高く評価するものですから、その崇高な強い精神にどうしても惹かれてしまうのです。それから高名な芸術家ばかりでなく、その中に職人の優秀な者をも参加させたという寛容な態度ね。…。

近代建築の目撃者/佐々木宏編

今井先生は、ストックホルム市庁舎の市民の、市民のために真心を込めて様々な人々のデザイン・痕跡を活かしていくデザインを此処で展開したのだと思う。大喜多城由来のデザインが多く見られるのは、其れ故である。市民に愛されるというのは、そう云うことなのである。

平成23年(2011)老朽化や耐震問題で、建て替え・増築が検討されコンペで千葉学氏が設計し、旧庁舎の後ろに連絡通路で繋がる増築という形で設計し施工された。旧庁舎は、修復後多目的ホールとして活用されている。

旧館エントランス付近のファサード


新館の背面


カーテンウォールは綺麗

見学したのが、正月2日で当然休館で、内部見学も出来ず、外部だけ見てきた。
今井先生の傑作に対し、どう増築するのかという難しいデザインだったと思う。他の市庁舎がスクラップ・アンド・ビルドという雑な建て替えをしているのが多い中で、千葉氏のこのデザインは高く評価出来ると思う。
次回は、予約して内部も見学したい。


以下大喜多町役場庁舎の役場編集のpdfファイル

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