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建築家 今井兼次/近代建築の目撃者 佐々木宏編 建築の書架から その5

先日、大喜多町役場で今井兼次先生に簡単に触れたが、きちんと書いたほうが良いと思い、本棚にあった「近代建築の目撃者/佐々木宏編」から抜粋する。
今井兼次先生は、1919年早稲田大学建築学科を卒業後、教職に身を置く。1926年早大助教授の時に、ヨーロッパに外遊し、その新しい動きを雑誌への寄稿や著書で紹介する。モダニズムとは異なるガウディとシュタイナーへの執着は強烈で、日本にガウディ・ファンを生むように成り1963年「ガウディ友の会創立十周年」式典に招かれる。
日本二十六聖人殉教記念施設やシュタイナーの影響を受けた大隅記念館などの作品がある。1977年に日本建築学会大賞を受賞。

昭和初期(1922年頃)ガウディを日本に初めて紹介したのが、今井先生であり、戦前ヨーロッパでさえ、認知度が低かったガウディを評価し、その意義を日本にも広く紹介した功績は大きい。本格的建築作品は還暦を過ぎてからが多く、長崎の日本二十六聖人殉教記念施設は、ガウディの影響を色濃くデザインされている傑作である。
今でこそ、ガウディの作品をを見に世界中からバルセロナへ行くが、当時はガウディが亡くなった後でサグラダ・ファミリアの建設を中断すべきか否かが議論されていた。地元紙から今井先生がその件で意見を求められ、ガウディの意志を繋いで建設を継続すべきだと強く主張した。今からは想像出来ない状況だったという。
また建築に宗教性を強く反映しているのも、今井先生らしい。奥さんが亡くなった後で洗礼を受けていることもあり、先生の建築は祈りの空間として誠実に作られている。碌山美術館の展示室でさえ、それを感じた。


碌山美術館 本館

以前紹介した 碌山美術館 も今井兼次先生の設計で、やはり建設に当たっては地元住民の手作業、中学生の参加があったと展示にあった。

長崎の日本二十六聖人殉教記念施設も是非見たい建築であり、noteを書くに従い、九州の行くべき場所が増えている。




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