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初めて1回戦突破したら準決勝いけた

THE W 2023

準決勝にいけました。

惜しかったな〜!とか、残念やったな〜!とか、いらないです。優しい気持ちきっかけで掛けてくれる言葉なのは痛いほど分かっています。でもいらないです。なぜなら惜しくも残念でもないから。


芸歴0年目、つまりNSC養成所の頃から出場し始め今年で4回目。Wは1人2枠エントリーが可能なため、ピンと即席ユニットの2つで出続けているが、ユニットだけが2回戦にいけるか、両方初戦敗退かという、何とも惨めな戦績が続いていた。
ただ今年は、まあ具体的な理由は諸事情により割愛するが、ピンは1回戦で負けるわけがないぞという、恥知らずな自信があった。案の定通った。意外だったのは、3年間続けたユニットではなく、今年初めて組んだ、力のある後輩とのユニットが落ちたことだ。

1回戦は2分ネタの動画審査、2回戦以降は4分ネタを生で観てもらえる。

これが私には非常にでっかかった。

というのも、私は若気の至り(自覚あり)な、いわゆる少々尖ったネタを好む性格故、ネタ尺は長ければ長いほど有利、と思っているからだ。

2回戦も、落ちるわけないという手応えがあった。案の定通った。意外だったのは、こういうとき大体一緒に通る同期や、私と近いレベルにいる先輩後輩方が軒並み落ちていたことだ。正直、「準決勝に進めた」という事実より、「仲間の中で少し抜けた」ことの方が俄然嬉しかった。

この段階で、私の目標は決勝ではなく、ネタをきちんとやりきり、1人でも多くの人に覚えてもらうことだった。
目標を高めに設定することを推奨される、受験なんかでは叱られる考え方だと思う。
でも未知の領域に飛び込むのだから、浮き足立つことを予防するためにはこの考えが適していたとも思う。


そして、ようやく本題の準決勝。ルミネtheよしもとである。吉本の仕事で東京に行くのはこれが初めて。新幹線も泊まりも初めて。何もかも初めて。進出者38組の中で、私が一番素人感覚だろうと思う。実際そうだし。




11月13日当日、私はガッチガチに緊張していた。「無事にルミネに着けるのか」。


震えながら時間を変更したチケットを握りしめ新幹線に乗り、あまり眠れないまま東京駅に着いた。友人から難しいよとだけ教わっていた地下鉄への乗り換えも、至極スムーズにいった。

新宿は、人が多かった。梅田や難波も人は多いが、何となく歩道の左右で進行方向が定まっている印象がある。新宿は、皆好きな方を向いて好きに歩いていた。信じられないほど広い歩道を、私は進むことが出来なかった。

なんとかホテルに辿り着いた瞬間、私の緊張は一気に解けた。それから食べた軽食のせいでお腹は死ぬほど痛くなったが、そのおかげで、この腹痛はこれからネタをやる緊張によるものではないと信じることが出来た。

2日目に自信のあるコントを温存していた私は初日、自他共に認めるプチ尖り漫談を披露させていただいた。2日間通しで観てもらわないことには、やましたの概要は伝わらない。この時点で他の出場者に引けを取っている自覚もすごくあった。「強ネタ」なるものが2本ない芸人。そもそも、こんな赤ちゃん芸人の分際で強ネタと弱ネタの分類があるのもどうかしている。身の程を弁えろ。ちゃんとやれ。

しかし、規模の差はあれどやはり賞レース準決勝。とても温かい。偏見というか事実なので包み隠さず述べるなら、女芸人のネタを観たくてチケットを買う人間なんて、大概どこか狂っている。これはもう誤魔化しようのない事実だ。だから何をやったってウケる。
私の漫談も笑ってもらえた。心底ほっとした。

2日目も、やはり笑ってもらえた。当たり前だ。



ただ、2日間を通して痛感したこと。
それは、私よりウケる人があんなにいるんだなぁ、ということだ。

地下しか知らない芸人が、テレビで観る対象の先輩方に混ぜていただいたのだ。先輩方のウケ方は、知らないウケ方だった。知らないレベルだった。私は今地下にいるから、地下では褒めてもらえることもある。でもやっぱり当然ながら、地上と地下は違う。私は、とにかくまだまだウケが足りない。淡々とそれを感じた。予習が足りないと言えばそうかもしれないが、習得するには実際に経験値を積むしかないと思う。

ここでお分かりいただきたいのは、私よりウケる人、という表現である。

私よりおもろい人、と思いかけて、思考を止めた。そんなこと思わなくていい。私よりウケているだけだ。私の中で、私よりおもろいかは、私が決めればいい。
世の中には、私の知らない上のレベルには、私よりおもろい人とは言わない、私よりウケる人がごまんといる。あれ以上のウケを取れないと勝てない。これを体感出来たことが何よりの収穫だ。

もう一度言う。心の底から本当に正直に、今回の準決勝の目的は、ネタをきちんとやりきり、1人でも多くの人に覚えてもらうことだった。決勝はおまけ。
あがり症で、大きな舞台ではネタの出来で何かしら悔しい思いをしてきた。今回の目的は、この後悔だけは絶対に無しで帰ること。それだけだった。

そういうわけなので、私は大満足で帰路に着いた。
帰りの新幹線は、新大阪に辿り着けるかという不安こそなかったが、アドレナリンのせいで全然眠れなかった。

この2日に渡る初体験のおかげで、自信を持って言える。というか、事実なので包み隠さず述べるなら、このTHE Wが続く限り、私は数年以内に必ず獲る。


長々とあまりポップではない文章を書き連ねてしまったが、つまり本当に、準決勝敗退は微塵も残念ではないのだ。私に何か声を掛けようとしてくださっている方々、言葉を選ぶか、それが面倒なら何もくれなくていい。

逆に私から伝えたいのは、ありがとうございますという言葉だけです。



ここまで読んでくれた方へノベルティを。

ボケます。

決勝行ったら焼肉な!と言ってくれた先輩方、準決勝でも十分祝ってくれていいんですよ。ハードル高すぎます。

インタビューで、THE Wとは?て聞いてきて、時代的にもうすぐ終わるんじゃないですかって答えたところ、カットするなよ。聞いてきた人も撮ってる人も笑ってたぞ。正直に生きようぞ。

W準決よりM-1準々の方が嬉しいでしょって私が言ったとき、まあそりゃなって答えた方々、それでいいんです。8,000組の頂点と、800組の頂点が同じ賞金?どうかしてるって。


あと、新宿のコーヒー、1,000円したぞ。
あれは何や。




(いや)


(そりゃ)



(悔しいに決まってるやろ)

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