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視点人物は君だ!<小説の書き方>

登場人物も小説を面白くすることに加担してもらわないといけません。
「視点人物」というと堅苦しいですが、『語り手』ということです。
たとえば、今このnoteを書いている私が、この記事の「視点人物」になります。

私が考えていることを書き、見ているものを書いています。
なので多くの場合は「視点人物」=「主人公」になりますし、「視点人物」が複数いる場合はどの人物も重要人物になります。

その「視点人物」を誰にするのか、というお話です。

今回も「こうするのが正解」ではなく、私が現在プロットを考えているミステリーであれこれ考えたり、試したりしていることを書こうと思います。

視点人物には、一人称か三人称かと言うことも関係してきます。今日は三人称多視点、つまり複数の人物に視点を持たせる書き方の場合でお話しします。

※一人称か三人称かという人称問題について書くと長くなるので、以前、書いた記事のリンクを張っておきます。


誰を視点人物にするかは、大変に重要です。視点人物をつくることは、その人物が小説の中で語るべきものを持っているということだからです。
当然、彼が見たもの、経験したこと、考えや好みなどをしっかり書き込むことになります。

少し具体的に書きます。
今、考えているミステリーのプロットです。
主人公の他に主要な登場人物が四人ほどいます。主人公は当然、視点を持って、事件に巻き込まれていく様子、真相に向かっていく様子を、読者に語りかけていきます。

たとえばですが、この主人公に危害を加える犯人、あるいは主人公を救おうとする探偵役を視点人物にするかどうかが考えどころなのです。

事件が発生から解決まで、ひとつの場所で展開したり、その時間も数時間か一日のことでしたら、すべてを主人公の視点で物語ることもできます(一人称でも三人称でも書けます)

しかし事件が複数の場所で起きたり、解決までの時間も長くなると、そのすべての場所、時間に主人公が立ち会うことは物理的に不可能です。

ミステリーですから、犯人は主人公に隠れて何かを企む場面があるはずです。そこに主人公が一緒にいたら、うまくありません。すると犯人に視点を与えてそのシーンを語ってもらうことになります。

複雑なたくらみ、入り組んだ計画であればあるほど、犯人の思考、行動をしっかり描かないと説明不足になります。

探偵役も主人公や犯人の知らないところで、様々に調べ、推理を繰り広げますから視点を持たせた方が自由にできます。

問題は、これらのことを犯人や探偵役などに語らせるのか、別の視点人物が見てきたように語るのか、そのどちらが小説として効果的かということです。

判断するポイントとしては、その人物を視点人物にしなくても、そのシーンが成立するかどうか。主人公が、その人物の行動を見ていることで足りるのなら、無理に視点人物にしなくても良いと思います。

すると、その人物は脇役(場合によってはモブ)として書くことになります。それだとシーンの重要性も薄くなりそうです。そもそも書かなくても良い程度のシーンなのかもしれません。

○実際にやってみました

視点人物を考えるために今、試していることです。
まず小説の中の書きたいと思っているシーンを箇条書きにして書き出します。それは当然、盛り上がる場面、見せ場です。自分が面白い、書いてみたいと思うシーンです。

この作業の前にはアイディア出しがあります。それをくぐり抜けてきたプロットなので、当然、これらの書きたいシーン候補はいくつもあります。

それを書いてみたときに「このシーンは誰に語らせたら、一番効果的か」を考えてみるのです。

例を挙げます。

①主人公が恋人の死体を発見するシーン
 これはやはり主人公が視点を持って、驚き、絶望、悲しさ、などをぶちまけてほしいところです。

②探偵役が様々な人物に話を聞いて犯人を追い詰めていくシーン
 このシーンが書きたいのなら、探偵役に視点をもたせることになります。謎が明かされていく読ませどころです。サスペンスタッチにもできます。

③犯人が犯行にいたった動機を深く掘り下げるシーン
 そのやむにやまれぬ事情にスポットライトをあてて、ドラマにしたい場合は、犯人本人に語らせるのが一番でしょう。

④犯人が使ったトリックの真相を暴くシーン
 定番なのは「探偵はみなを集めて『さて』と言い」パターンですが、やり方は別にして、探偵役が鮮やかに推理して解決するのが普通です。

このようにシーンを実際に思い浮べてみると、視点人物を誰にするべきかが考えやすくなります。

○こちらは応用編(?)です。

しかし実際にやってみると、ストーリーを込み入ったものにするほど、いろんなパターンがあることがわかりました。

①主人公が恋人の死体を発見するシーン
 実は主人公が恋人を殺していた、というようなどんでん返しにする時は、主人公を視点人物にしない方が自由に書けます。
 視点人物は真実を隠すことはできますが、地の文で嘘を言うことはできない、というのがミステリーのお約束ですから。

②探偵役が様々な人物に話を聞いて犯人を追い詰めていくシーン
 視点を探偵役ではなく、行動をともにするワトソン役に与えるのもありです。2人の関係性、どちらをメインに描きたいかで決まると思います。
私も今回、これで迷っています。

③犯人が犯行にいたった動機を深く掘り下げるシーン
 第三者(犯人の親友、恋人、家族)が犯人の代わりに語るケースもあります。あるいは、手紙での告白にするのも使い方によっては効果的だと思います。

④犯人が使ったトリックの真相を暴くシーン
 犯人の事情がストーリーの大切なテーマだとしたら、いっそ犯人が語り手として真相を告白した方が、ドラマチックかもしれません。その場合は探偵役の尋問に応じて、視点人物の犯人が語る格好の方が、読者は犯人に感情移入できると思います。語り終えた後に自殺をするのもありでしょう。

※あるいは、非常に重要な行動をしているのだけれど、名前や容姿を書かずに、誰かわからない人物として書く方法もあります。この場合は名無しの視点人物、ということになります。

こうやって考えていくと一筋縄ではいかず、難しいです。シーンが増えるほど、視点人物に悩みます。
ただプロットを深く考える材料になるのは確かです。

繰り返しになりますが、誰に視点を持たせるのが一番面白いかを考えることだと思っています。

※なお、群像劇、という手法もあります。それはまた別の所で書こうと思いますが、多くの人物を視点人物にして、それぞれの事情を語らせる書き方です。
もしかしたら、視点人物を増やしているうちに群像劇になったというケースもあるのでは、と思いました。

と言うことで、私も小説が面白くなる視点人物を探してプロット作業を続けてみます。
(そんな段階なので、あまり参考にならなかったですね)

それでも、この段階が過ぎると書きたいシーンがいくつもたまった状態になるでしょう。
私はシーンをまとめた【シーン表】を作ってから本編執筆に進むので、きっとそれには役立って、スムーズな流れになる。そう思って続けるつもりです。


なお、この<小説の書き方>の記事の中で、よく読んでいただいているのは
プロットの作り方、なのですが、そのうちの【シーン表】を使った私のやり方を、小冊子にまとめました。
5/19 文学フリマ東京で販売しますので、来場される予定の方はお買い求めください。
Webカタログとイベントの案内をリンクしておきます。
(小冊子は、まだ印刷中なので表紙はダミーです)


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