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ChatGPTで「完全自動運用」のWebメディアを作ってみた話

はじめに

合同会社アノードの入倉です。

今回、ChatGPTを使って完全自動で運用するAIニュースキュレーションWebメディア「BizAidea」(ビズアイデア)を開発したので、その方法や開発の裏側について公開してみようと思います。

概ね当初やりたかったことは実現できたのですが、思い通りにいかず仕様を変更したりあきらめたりしたものもありました。

もし読まれている方が、今後似たようなものを作られる場合のご参考になれば幸いです。


作ったもの

BizAIdea(ビズアイデア)
URL: https://bizaidea.com/

最新のAIニュースまとめ記事を毎日10~20本くらい配信しています。
まとめる記事の元ネタの選定から記事の作成、WordPressの入稿まで、すべての作業を自動で行っています。
日々の運用で人間がやることはほぼありません。
たまにエラー(記事元のサイトが落ちていた場合などに発生)の確認をするくらいです。

・トップページ

TOPページ

・記事ページ

記事ページ

X

X

・Facebookページ

Facebookページ

なぜ作ったか

前職含めてWebメディアに関わる機会が多くあり、ChatGPTが世に出る以前からWebメディアの運用を楽にするサービス(Marcs)を企画していました。

当初考えていた企画イメージ
(当初はスキルに特化したメディア展開を企画していました)

Webメディア運営の中で最も比重が大きいのは当然「記事を書くこと」です。
ただたくさんの記事を書くのは大変ですし、外注するにも少なくない費用がかかります。記事がたくさんあっても、収益を出すまでには時間がかかります。
当初から、AIを上手く使って記事制作をできるだけコストを掛けず楽にできないか?といろいろ方法を検討していました。

そんな中、画期的な能力を持つChatGPTがリリースされました。

ChatGPTを始めとした生成AIの及ぼす技術進化とインパクトは予想しきれなかったので、しばらくは世の中の動きを様子見するため、企画自体を止めました。

一方で、毎日たくさんのAIニュースが流れるようになり、それらを随時キャッチアップし、目を通していくのもなかなか大変だな、、と思うようになりました。

新技術のニュースもそうなのですが、今後は「AIをどう活用したか?」「AIをビジネスにどう取り入れているか?」といったAIの応用例の記事が増えてくることは予想できたので、そういった事例情報をできるだけ楽にキャッチアップできるサービスがあったら便利だなと思いました。

そうした流れでChatGPTを使って全自動で運用できるWebメディアが作れるのでは?というアイデアを考えるようになり、今回のBizAIdeaの開発につながりました。

ざっくりの仕様

上記の開発経緯と、一方で予算や工数がかなり限られる状況から、以下のような仕様で開発を進めていくこととしました。

・メディアのサイト構築にはWordPressを利用する
→できるだけ開発工数を抑えたかったので、立ち上げが早く運用の知見があったWordPressを利用しました。

・様々なニュースメディアから収集する最新のAIニュースキュレーション記事を主体とする
→当初は自社独自記事を中心に考えていましたが、メディア運営の手間を最小限にするために、完全自動化が可能なニュースキュレーションのコンテンツに特化することにしました。

・それぞれのニュース内容を分かりやすくまとめたものと、元記事へのリンクを記事として作成、投稿する
→単に最新記事へのリンクを掲載するだけでは面白くないので、記事内容のサマリーを記事にすることにしました。自分自身、毎日大量の記事をキャッチアップするのに内容のサマリーがあれば便利だなと思っていたので、サマリーの仕方にもこだわりました。

・作成された記事は、X(Twitter)とFacebookでシェアする
→キュレーション記事は検索エンジンによる流入が期待できないので、メディアへの流入はSNSが主体になると考えました。一方でSNSにシェアする作業は地味に面倒なので、ぜひ自動化したいポイントでした。

・メディア運用のプロセスを全て自動化する
→ちょっと実験的な意味合いも強かったのですが、メディア運用(ニュース収集→記事作成→記事投稿→SNSシェア)の作業を全て自動で運営できるメディアを作りたかったので、人手が一切かからずに運営できるように機能の開発を進めました。

ここまでの自動投稿の仕組みをざっくり図にしてみました。
ちなみにこの図もChatGPTに仕様を説明して作成してもらいました。

自動投稿の処理の流れ

開発/運用にかかったコストと開発期間

費用:立ち上げ費用18,000円 / 運用費用2,500円

費用としては大きく「メディア立ち上げ」と「メディア運用」に分かれます。

■メディア立ち上げ:18,000円

内訳:素材、WordPressテーマの購入

デザイナーに依頼するコストはかけられなかったので、その分素材画像やWordPressテーマは有償のものを利用しました。
画像ファイルはiStock(メイン画像/¥1,200)で、WordPressテーマはTHOR(16,800円)を購入しました。

■メディア運用:月額 約2,500円

内訳:サーバー費用(約1,000円)、ChatGPT-API 利用料金(約1,500円)

サーバーは無料のものを利用する手もあったのですが、ゆくゆくの発展性も考えて、以前から使い慣れていた ConohaWING のベーシックプランを使いました。

また、記事制作に利用するChatGPTはAPI(gpt-3.5-turbo-0125)を利用しており、その分の利用料は月額おおよそ1,500円くらいとなっています。

開発期間/工数

開発期間としては、本格的に企画を始めてから足掛け3ヵ月程度でした。
開発に携わったのは、私(企画&開発担当)とメディア担当(企画&デザイン担当)メンバー1名の計2名です。
2人とも本業のかたわらで動けたのが週1~2日程度だったので、合計の実質的な工数は15人日くらいでした。

サービス開発の流れ

サービス開発の流れとしては、以下の順で開発しました。

メディアコンセプトの決定

メディアのコンセプトは企画段階でもいろいろ迷ったのですが、
 ・ペルソナをビジネスパーソンとする
 ・ビジネスパーソンが読みたいAIニュースのキュレーションに特化する
と決めました。

メディア(WordPress)の構築

・開発工数をできるだけ減らしたかったので、運用の知見があったWordPressを採用しました。

・デザインにはこだわりたかったもののデザイナーに発注するコストを割けなかったので、有料のWordPressテーマを購入しました。

WordPressテーマのTHOR

・ロゴの制作は当初生成AI(DALL-E)を試したのですが、、

当初DALL(AI)で作成してみたロゴ

あまりピンとくるものを作れなかったので、フォントベースで自作しました。

フォントだけで作成したロゴ(こちらを採用)

・メディア(WordPress)の立ち上げ自体の工数は、2~3人日でした。

記事を自動作成する仕組みの開発

・記事内容は、キュレーションしてきた元記事(メディアに掲載されたAIニュース)の内容をChatGPT使ってまとめ文章を作り、記事にしています。

・当初の検証段階では、URLを渡すだけでChatGPTがリンク先記事の内容を取得しまとめ文章まで作ってくれていたのですが、APIでは記事を自動で取得してくれないことが後から分かったので、自社開発のクローラーエンジン(Wext)を利用して記事を取得することにしました。

当初検証していたプロンプト
(ChatGPTの画面からは記事内容をその場で取得してまとめを作ってくれる)

クローラーとは「サイトのドメイン」「記事中に含まれているキーワード」などの条件を指定し、条件に当てはまるWebページの文章・画像を自動取得するシステムです。「クローラーで広く情報を集める」→「情報をAIに渡す」といった流れで質の高いデータベースやアウトプットを自動で構築できるので、クローラーとAIは相性のいい技術だと思います。

・当初はChatGPT-4 のAPIを利用していましたが、コスト、処理速度、生成される記事のクオリティを勘案し、ChatGPT3.5(gpt-3.5-turbo-0125)のAPIを利用しました。

ChatGPT-4と比べて ChatGPT-3.5は、
・費用:1/60(gpt-4 と gpt-3.5-turbo-0125 の比較/2024年3月1日現在)
・回答速度:5倍(体感)
・回答のクオリティ:70%(体感)
という感じです。
(費用の部分が特に大きかったです。)

・元記事の文章とプロンプトをAPIに渡して、返ってきた結果を多少の加工処理(文字列の結合やHTMLタグの埋め込み)しています。

・記事生成を何度も繰り返し試してみて、プロンプトを改善していきました。最終的に3つのプロンプトに分けて質問し回答を合成して記事を作成しています。

記事をWordPressに自動投稿する仕組みの開発

・投稿記事のアイキャッチ画像は、元記事から画像URLを取得してサーバー内に保存し、それをWordPressにアップロードしています。

・投稿記事の本文はChatGPTを利用して作成し、上記で保存された画像のIDと合わせてWordPressに送信し、記事を投稿しています。

・投稿の自動化には当初はWordPressのAPIを利用予定でしたが、ConohaサーバーではAPIが利用できないようでしたので、XmlRPCという別の仕組みを利用しました。

・XmlRPCの仕様はググっても情報が少なくて使い方がよくわからなかったのですが、ChatGPTに聞いたら完璧なサンプルコードを作ってくれました。ChatGPTすごい。

XmlRPCの使い方をChatGPTに質問

自動でAIニュースをキュレーションする仕組みの開発

・キュレーション元のニュースメディアは、「ビジネスパーソンが読みたいAIニュース」が多く掲載されている15媒体ほどを選定しました。

・ニュースの収集には自社開発のクローラーエンジン(Wext)を利用しました。

・10分に1回、15媒体をめぐって最新のAI記事を集めています。

・キュレーションすべき記事かどうかの判定基準をいろいろ考えていたのですが、最終的には「タイトルにAIを含むか?」という最もシンプルなものに落ち着きました。(ちょっと問題はあるのでもう少し改良予定です)

・「ビジネスパーソンが読みたい記事か?」という基準に当てはまらない、技術的過ぎる記事などを除外することも考えていたのですが、キュレーション元のニュースメディアがそもそもビジネスパーソン向けだったので、そこのフィルタは結果的に不要でした。

記事を自動でSNSシェアする仕組みの開発

・Xへのシェアの投稿は、公式のAPIをプログラムから呼び出すようにしました。このAPIの呼び出し(実装)方法もChatGPTにいろいろ助けてもらいました。

・Facebookページへのシェア記事の投稿は、当初Facebookアプリを開発する予定でしたが、企業認証などプロセスがだいぶ面倒なので、とりあえずZapierを利用しました。
Zapierは様々なWebサービスやSNSと連携してルーチンワークを自動化できるノーコードツールで、プログラミング知識がない人でも扱いやすいと思います。

・Zapierでは、BizAIdeaのRSSを15分に1回読ませて、新着記事があれば投稿する仕組みにしました。

・ただ、Zapierのフリープランは1ヵ月100回までしか処理(投稿)できないので、一旦3か月お試しのある有料プラン(750回までOK)に切り替えました。Zapierの有料プランはお高い(約5000円/月)ので3か月以内に別の方法を考えないとです、、、

Zapierの設定画面

記事の制作/投稿状況をウォッチする仕組みの構築

・記事の取得やChatGPTのAPI呼び出しにはエラーもつきものなので、記事制作の状況やエラーを通知する仕組みを作りました。

・普段社内のコミュニケーションにはChatworkをメインで利用しているので、通知はChatworkに投稿するようにしました。
とはいえSlackの方がボタンの設置などもできるのでより便利だと思います。

・Chatworkでの記事作成状況の通知は、以下のような感じです。

Chatoworkでの自動投稿通知チャット画面

作ってみて良かったこと

・運用を開始してから1ヵ月以上経ちますが、特に問題なく完全にほったらかしで毎日10~20記事ほどが自動投稿されています。自動化って本当に素晴らしいですね。

・投稿記事はSNS経由でチェックしており、最新AIニュースを漏れなく手早くキャッチアップできるので、目論見通り、自分自身とても便利に使っています。

できなかったこと/今後の課題

記事の自動タグづけがうまくいかない

AIライティングに関する記事なら「AIライティング」、製造業のAI活用事例なら「製造業」など、ジャンルごとにChatGPTに記事の内容を判断させて記事内容に沿ったキーワードをタグ付けしているのですが、このあたりの精度がイマイチです。タグ付けは結構難しいですね。もう少しプロンプトなど改善する必要がありそうです。

Xに長文を自動投稿できない

Xへの投稿で、プレミアムプランになると文字数を増やせると思っていたのですが、APIは対象外なんですね、、
本当は記事URLだけでなく「記事のポイント」も載せたいのですがそれができていません。
APIを使わずにRPA(UIの自動操縦)や、AIエージェントなどを使った方法を開発できないかと思案しています。(これができると応用範囲がかなり広がります。)

掲載する記事の幅をもう少し増やしたい

現段階ではキュレーション対象は国内AIニュースのみですが、新サービスのプレスリリースや、海外のAIニュースの翻訳サマリーなどもあるとより魅力を高められるので、対象を広げていけたらと思っています。

まとめ

・実際に開発してみて、実装にはある程度の手間は掛かったものの、期待通りに完全自動運営のWebメディアを開発できました。
ChatGPTが無ければ記事の自動作成までは到底できなかったので、、改めてChatGPTの便利さを実感しました。

・キュレーションメディアに限らず、既存のメディア運営やコンテンツ系システムに今回のような自動処理の仕組みを組み込むことには大きな可能性があると思います。

・ChatGPTのおかげでこれまでにはできなかった領域の自動化を実現できましたが、100%自動化や自動化のクオリティを上げるなど「痒い所に手を届かせる」には、クローラーや記事投稿などのシステム開発もあわせて必要となります。

・合同会社アノードでは、生成AIとの相性のいいクローラーや、Webメディアの運営を自動化/楽にするサービスや開発をご提供しています。
もしご要望がありましたらぜひ一度以下の「お問い合わせ」までご相談ください!
https://anode.llc/#contact

・またもしご要望がありましたら、続編記事でプロンプトの詳細や実装したコードの詳細なども公開してみようかとも思いますので、コメントとスキをよろしくお願いします!

・最新のAIニュースを手間なくキャッチアップできるとても便利なサービスですので、ぜひX/Facebookページをフォローしてみてください!

 Facebook: https://www.facebook.com/people/Bizaidea/61554218505638/
 X: https://twitter.com/BizAIdea



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